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人生の醍醐味 309 キング牧師 10

Image by Olia Gozha

キング牧師  (10)


「その時以来、僕はボイコット(排斥、この場合は抗議のためのバス不乗り運動) と言う言葉は極力使わないようにした。」  


「妻のコレッタと僕は、今回のバス不乗り運動の成功の可能性についても話し合った。 60%の協力を勝ち取ることができれば、この抗議は成功したといえると考えた。」


「月曜日の朝、コレッタと僕はいつもより早く起きてしまった。  朝5時半には身支度も整え終わっていた。」


「抗議の日が来たのだ。  我々はこの運動の最初の行動から目撃したかったのだ。」


「幸運な事に、バス停留所は我が家の目の前にあった。  家の窓から、バス停留所の動きが見えたのだ。」 


「我々は家の中で、永遠に感じた30分の時間をやきもきしながら待っていた。」 


「台所で僕がコヒーを丁度飲んでいた時、 コレッタが「マーティン、マーティン」と、大声で呼んだ。 「マーティン、早く来て。」 」


「コーヒーカップを置いて、急いで居間に行った。 居間の窓に近づくと、コレッタはゆっくり動いているバスの方を指差した。」 


「あなた、バスは空っぽよ、」と妻は言った。僕は自分の目で見た事実をほとんど信じられなかった。」  


「モントゴメリー地区では、我が家の前を通るバス路線が、他のどの路線より、普段黒人客を大勢乗せていたのだ。」


「この始発のバスは、家事手伝いの仕事をしている乗客を沢山乗せていたのだ。」


「15分後、2番目のバスが来たが、そのバスも空っぽで、3番目に来たバスも、2人の白人乗客だけで黒人客は全然乗っていなかった。」


「僕は自分の車に乗り、1時間ほどその地域の主なバス停を見て回り、走っているバスの乗客を調べた。」


「一番朝のラッシュアワーの時でさえ、一台のバスに黒人は最高でも8人しか乗っていなかった。」


「不乗り運動への協力を 60%達成したいと望んでいたが、 蓋を開けてみると、僕たちはほとんど100%に近い協力を勝ち取ったのだ。」


「奇跡が起こったのだ。 今まで眠っているかのように活動の少なかった黒人の地域社会が完全に目覚めたのだ。」


「一日中バス不乗り運動は継続した。  午後のピーク時でさえ、バスの黒人乗客はほとんどいなかった。」 


「アラバマ州立大学の大学生は、口笛を吹きながら元気よく歩いていた。」


「仕事を持つ人々は仲間と相乗りをしたり、自分の足でさっさと歩いていた。」


「中には、ラバに乗って仕事に通う人もいた。 また、その日のモントゴメリー地区では、何台かの馬車が通勤客を乗せて通り過ぎた。」


「ラッシュアワーの時間帯は、家事手伝いさん達や他の労働者達が忍耐強く、歩道に溢れて歩いていた。」


「人によっては、12マイル(約19キロメートル)も歩かなければならない人もいた。  彼らは何故そのような長距離を歩かなければならないかを熟知していた。」


「知っていると言う事実は、一人一人が胸を張って歩いている姿から分かった。」


「僕は観察を続けるにつれ、本人が苦しみながら、しかも自己を犠牲にしながら、一人一人が強い決心のもと、自分達の自由と尊厳のため、行動している姿ほど荘厳で美しいものはないと確信した。」


「朝の9時半頃、地区の道路監視から身を引いて、混雑している裁判所へ駆けつけた。  ちょうど、パーク夫人の裁判が開始されたところであった。」


「裁判の結果、パーク夫人の判決は有罪で、罰金を合計で14ドル支払う事に決まった。 パーク夫人はすぐさま控訴した。」


「この訴訟は、初めてこの地域の白人黒人分離法に関する訴訟であった。」







長年の不条理に対して、一致団結して抗議したのは素晴らしい。


20世紀中頃過ぎの出来事で、私が日本で中学生の頃の昔の出来事であったといえるが、社会の矛盾を変えてゆく手法として、市民全員が一致団結して事に当たることの重要さを示唆していると思った。


人種差別は米国でも、世界でもあの時から65年以上の時が流れたが、まだまだ解決から程遠い。  

人種差別以外にも、多種多様な差別が人間社会に厳然と存在している。 誰にとっても大切な自由と尊厳は戦い勝ち取ってゆかなければならないのだろう。




参考文献  自伝 マルティン ルター キング., Jr. 

編集者 クレイボーン カーソン

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