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人生の醍醐味 304 キング牧師 5

Image by Olia Gozha

キング牧師 (5)


「静かな瞑想の時間をもつため、日曜日の朝は早く起きたのだ。」


「美しい朝だった。 僕の部屋の窓から、朝日が地平線から登り、世界全体を総天然色に染めてゆくのを見ることができた。」


「でも、朝の11時は見る間にきて、教会の説教壇に立った。」


「その日は、大勢の教会員が出席していた。 僕の説教は、完璧な人生とは、三面から成り立っていると言う事だった。 教会員の反応はとても良好であった。」


「それから一ヶ月程して、アラバマ州から速達郵便を受け取った。  アラバマ州のデクスターバプティスト教会が、キング牧師を全員一致で招聘することを可決したという内容であった。」


「このようなお招きを大変光栄に思ったが、即答は避けた。  現実には数種類の選択肢から、どれを最終的に選択するかと言う難問に直面した。」


「特に、僕は二つの可能性を強く考慮し悩んだ。 一方では牧師になりたいと言う、強い気持ちも持っていた。  もう一方では、教育に関わる仕事に就きたいと言う気持ちも強かった。」


「どちらの方向へ進もうかと日夜悩み抜いた。 そして、万が一教会の仕事を選ぶとすれば、人種差別等で悲劇的で悲惨な出来事が多かった南部の教会を選ぶべきか、北部の教会からの招待に応じるべきかを考え抜いた。」


「長い間続いていた、人種差別的社会から逃れ出る機会の到来を受け入れようかとも考えた。 結論が出ないまま、ボストンの自宅に帰った。」


「妻のコッレタの意見も聞いた。  しかも我々の子供達の教育に関しても考慮した。  妻の音楽教育を含め、多面的面から数日かけて話し合いを続けた。」


「最終的には、 確かに我々の人生を犠牲にする部分も多々あるが、 人種差別の問題解決策に、少しでも我々が役立つ道は、南部の教会で牧師になる事だと悟った。」


「自分達の仲間である、アフリカ系アメリカ人の地位向上のため、少なくとも数年は南部で活動することが、道徳的にも正しいと言う結論に達した。」  


「何と言っても、南部こそが我らの故郷だ。 問題は山積みしている南部ではあるが、 我々は積極的にできる範囲で最善を尽くして、その問題解決のために働きたいと考えたのだ。」


「子供時代から経験していた南部社会の問題を、ただ見守っている聴衆にはなりたくなかった。」


「現実に、人種の差別は、南部でより深刻であるので、運良く南部以外の地域で教育を受けられた幸運な我々のような者こそ、受けた教育の成果と、鳥瞰図的広い見方を用いるためにも、南部に帰るべきだと思った。」


「その上、確かに北部では、多種多様な文化的催し物を楽しむ事ができたが、黒人差別(Jim Crow)が存在する現実があるにも関わらず、 南部に新しい旋風が吹き始めている事実も感じ、自分達もその新しい流れに何らか貢献が出来れば嬉しいと考えたのだ。」


「このように悩み抜いた末、 教育に携わるより、教会の説教壇で教化する道を選択した。」


「デクスターバプティスト教会で、数年、牧師の任務につく事を承諾した。」 


「と言う訳で、 僕はモントゴメリーに戻った。博士号取得のために必要な論文作成のため、四ヶ月間の時間的猶予を条件として出した。」

  

「1954年9月1日までは、正規の牧師ではなく、パートタイムの牧師職を希望したが、少なくとも毎月一回は日曜日の説教をする約束をした。」


「それから、四ヶ月間、月一の割合で航空機を利用して、北部のボストンから南部のモントゴメリーまで出向いた。」




職業選択は誰でも悩むが、キング牧師も色々の角度から自分の職業選択に関して考慮し、妻であるコレッタにも相談、子供の将来の事も考えた上、正しいと思う選択をした。


なかなか人は、自分個人のことばかりではなく 自分と同じ皮膚の色をした悲運な人々の事をも考えて、自分の個人的職業選択をする人は残念ながら、少ないのが現実だと思う。 


それに対して、キング牧師は自分の職業をそのような角度からも考慮して選択した。 キング牧師は指導者の貫禄が生まれる土壌をすでに保持していたのだ。



参考文献 自伝 (Martin Luther King, Jr.)

マーティン ルター キング, Jr.

編集者、クレイボーン カーソン(Clayborne Carson)




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