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15/2/13

やくざを泣かせた5歳の息子の話

Image by Olia Gozha


こころ を すまして みてごらん

はな は はな として うつくしく

あなた は あなた として うつくしい

ただ それだけのこと が いとおしい


あれは暑い夏の日のお昼過ぎ・・・

いつものように、2歳の娘を連れて息子の幼稚園へお迎えに行った帰り道。


「アイスクリーム、食べようか?」


暑かったので、三人で駅前のベンチに腰掛けて、アイスクリームを食べることにした。

そんな日常の一場面。

もし、あのやくざが駅の階段を降りて来なければ、ただの忘れ去られた日になっただろう。


その男は、顔に大きな刀傷があり、みるからにやくざだとわかるチンピラ風。

昼間から酒の臭いをプンプンさせていた。

ぐでんぐでんに酔っぱらっていたその男は、私の息子のすぐ横に座った。


男はふっと顔をあげると、座った目で私の息子をじーっと見つめた。


私はドキドキしてきた。


まさかこんな幼い子どもには手を出したりはしないだろうけど、

でも、こんな泥酔状態じゃ、普通の精神状態じゃないだろうし。


どうしよう!


私は心の中でつぶやいた。


なにもなかったように、アイスクリームを食べ続けてはいたが

もう味などわからなかった。


男は5歳の息子の肩に手を置いた。


やばい・・・

どうしよう・・・


へたに席をたったら、何をするかわからないし。


しかし・・・男は凶暴ではなさそうだ。

5歳の息子を相手にくだを巻き始めた。


やくざ「おめえはいいよなあ、まだ子どもだからよ。わかんねえだろうけどよ。おれの女がいなくなっちまってよお。」


そうりゃあ、わからないにきまってる!

そんなことで子どもをうらやましがるな!


と突っ込みたかったが・・・

どうも男は女にふられたらしかった。


よっぽど惚れていたのだろうか。

それからも、ぐちぐちと女のことを話し続けた。


息子は何を言われているのか、チンプンカンプン。

ただ黙って横でアイスクリームを食べ続けている。


すると、何を想ったのか、やおら男は懐から財布を取り出して千円札を出した。


やくざ「「おめえは、いい子だなあ。  ほれ、小遣いやるよ」」


そういうと、男は息子に千円札を息子に渡したのだ。


話を聴いてくれたカウンセリング料とでもいうのか??

まあ、酔っぱらっている勢いだろうけど・・・


私はヒヤヒヤだった。


息子に返すように言おうか、迷った。

私が、結構です、などと言ったら逆上するかもしれない。


ぴったりつくように、男は息子の横に座っている。


へたなことは言えない。

どうしよう・・・


そう想った時だった。


息子はそのお金を男から受け取ると、そのベンチのすぐ後ろにあった花屋へ走っていった。

至近距離であったし、男は大声で話していたから、

当然、花屋の店員も様子を伺っていたのだろう。


息子「お花ください」

息子がそういって千円を出すと、花屋の店員は、さっと無言で明るい黄色の花束を渡した。

その花束を受け取ると、息子はまた走って男のところへ行った。


息子「はい。おじちゃん、お花。」


その男は一瞬、びっくりしたように息子を見つめた。

なにが起きたのか、分からない様子だった。


男は、しばらく呆然と差し出された花束を見つめていたが、

無言でその花束を受け取ると、コンクリートの地面に崩れ落ちて泣き出した。


男は花束を抱いたまま、号泣していた。


そこで私は子どもたち二人をかかえるようにして、そっとそこから去った。


その男の泣き声を背中で聴きながら・・・。


その時、私は思った。


大人の私は、その男を酔っ払いのやくざとしか見ていなかった。

でも、幼い子供の目には、その男は、ただの心を痛めている可哀想な人として映っていただけ。


心をすませ

心の目で世界を観ると

表面にある怖れを超え

その奥にある本質がみえてくる。


5歳の子供に教えてもらったことでした。


三つ子の魂百まで・・・


息子は今でも、困っている人がいると、手を差し伸べる人間に育ちました。

それは、私の育て方ではなくて、きっと授かりものなのでしょう。


こころをすます

素晴らしい教えを、ありがとう♡


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