15/2/17
第12話 マチュピチュの予言【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

始まりの一日。
”
何の為に生まれて 何をして生きるのか
答えられないなんて そんなのは嫌だ!
”
ノートの表紙に書き込んだ、やっと見つけた旅の「目的」。
インティとライミもこちらを見ていた。
ー地球上のすべての人にはその人を待っている宝物があるんだ。
アルケミストの大好きな一節とどこか似ている気がする。
そして目が覚めると、旅がガラリと変わってしまった。
一人でマチュピチュに行かないで
まほ「今日マチュピチュのチケットを買いに行って来ます!」
珍しく朝早く目が覚めた。
お昼になる前にはもう外に出る用意もできていた。
宿のオーナーに元気よく宣言する。
マチュピチュはチケットを買わないと入れない。
しかも、ここクスコからはマチュピチュ行きの電車のチケットも必要だ。
スペイン語が出来ない私は、
ずっとその手続きをするのが怖くて行けずじまいだった。
だけどそんなの言っている場合じゃない。
旅は自分で動かないと始まらないんだ。
インターネットで、チケットが買える場所と必要なスペイン語だけをメモして、
いつものノートをカバンに入れた。
オーナー「本当に一人で大丈夫??これ、クスコの地図だよ。必要なところは◯しておいたから。あと、パスポート持った?お金も結構かかるよ!気をつけてね。」
心配そうに、宿のオーナーは地図を渡してくれる。
マチュピチュのチケットと、電車のチケットの買える場所に◯がしてあった。
「うん!ありがとう!大丈夫!行ってきます!」
そしてクスコのセントロに向けて宿を出ようとした。
※セントロ=街の中心地
と、そのときだった。
カバンに入れていた携帯が震えた。
宿のWI−FIが急に入ったみたいだ。
携帯の通話のアプリが光っている。
着信は日本にいる双子のなっちゃんからだった。
まほ「もう、せっかく行こうと思ったのに。」
一瞬無視して行こうか迷ったけれど、
なんとなく、電話をとることにした。
日本からの電話を取れるなんて滅多にない。
いつもこちらからかけるか、
履歴を残してかけ直してくれるのを待つのが普通だった。
玄関の長椅子に腰掛ける。
まほ「もしもし、なっちゃん?」
なほ「あ!まぁちゃん!よかった〜。どう?もう悩んでない?」
まほ「うん!もう大丈夫!色々ありがとう。」
そういえば、なっちゃんとはスタバで泣き言の電話をして以来だった。
まほ「どうしたの?何かあった?」
なほ「あのね、いい忘れてたんだけどどうしても気になって。少し前に不思議な夢を見たんだよ。」
まほ「え‥?夢?」
そのとき、鮮明にクスコへ行くバスの中で見た夢を思い出した。
そういえば、私も不思議な夢を見ていたんだ。
そう考えると同時に、もう口から出ていた。
まほ「もしかして…許してください、許してください…?」
なほ「え!!!!そう!!その詩だよ!クルクルのブラウン色した男の子!」
なほ「え??何で知ってるの??それ何かの詩なの??」
なっちゃんはビックリしていた。私も頭がついていかない。
まほ「ちょ、ちょっと待って。詩をメモしたから!」
そして慌てて携帯のメモを開いて、その時の夢で教えてもらった詩を読んだ。
なほ「そう!そうだよ、その詩だよ!丘なんだよね。広い丘でその詩を教えてもらうの。」
なっちゃんは、私が言う前にどんどん私の見た夢を言ってしまう。
細部まで一緒だった。
まほ「じゃあ、同じ夢を見たってこと??」
よく聞くと、その夢を見た日にちも時間も一緒だったのだ。
まるで小さいころみたいだ。
小さい頃はよく同じ夢を見たり、じゃんけんをずっとアイコに出来たり
そんなの当たり前だった。
ペルーと日本の電話越しに不思議な懐かしい空気が流れた。
なほ「不思議だね〜。こんなこと最近はなかったのにね。」
まほ「本当だね。まだ信じられないな。すごく印象的な夢だったよね。でもなんかね、その夢を見た後、クスコから旅が変わる気がしたんだよ。」
クスコ行きのバスから見た砂漠に落ちる夕日や星を思い出した。
まるで絵本の中みたいだった。
そして夢の中で教えてもらった不思議な詩。
小さいころに戻ったみたいだ。
なほ「まぁちゃん今日は何するの?」
なっちゃんが質問する。
まほ「あのね!ついにマチュピチュのチケットを買いに行くんだよ!!」
私は得意気に答えた。
この前までなっちゃんに泣きべそしか言ってなかった。
だから、悩みから抜けて少し旅らしくなったのを自慢したかったのだ。
すると、なっちゃんからは予想外の言葉が返ってきた。
それが私の旅をガラリと変えてしまうことになる。
なほ「待って!マチュピチュに一人で行かないで!」
まほ「え‥!?!?」
一瞬意味が分からなかった。
ーマチュピチュには一人で行かないで?
なほ「マチュピチュに一人で行かないで。絶対タイミングが来るから、それに乗って。」
なほ「マチュピチュからが、まぁちゃんの転機になるよ!」
ドクン!
胸の奥が鳴った。
頭は混乱しているのに、身体は鳥肌が立っていた。
そういえば友達がふざけて言っていたな。
鳥肌は嘘つかない。
こんな時に思い出した。
まほ「え!?え??でも‥。」
なほ「何かそんな気がするの。とにかく、一人で行かないでね!絶対すぐタイミングが来るから。」
−−ブツッ−−
なっちゃんはそう言い残して、
混乱する私を置いてあっさり電話を切ってしまった。
残された私は、電話を持って思考停止している。
一人で行かないで?タイミングが来るから?
なっちゃんの言葉を繰り返す。
頭では”そんな馬鹿な”と思っているけれど、
不思議な夢の流れも助けて、
どこかで”そうかもしれない”と納得している自分もいた。
それは頭と心がチグハグな混乱した妙な感覚だった。
カバンには、マチュピチュのチケットを買う準備がバッチリされてある。
あのノートも入っている。
ー旅は動かないと始まらないんだ。
混乱したまま、宿のドアを開けた。
とにかく、動いてみよう。
そしてなっちゃんの不思議な予言から、新しい旅の一日が扉を開けた。
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