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15/1/9

失恋

Image by Olia Gozha

【5】失恋

希望する大学には受かった。次は、まりちゃんとの「復縁」だ。

高2の夏から交際をはじめたが、高3になった春、オレから「これから受験勉強だ。試験が終わるまで会わないようにしよう」と宣言。互いに誓い合った。高2は同じクラスだったが、高3でオレは5組、彼女は8組と別々なクラスに。

ところがオレは1ヶ月も我慢できず、わざと8組の前を何度も通り過ぎたり、彼女が勉強してる図書館で待ち伏せた。偶然を装って。ヤリたいわけではない。デートは交際していた8ヶ月で20回ぐらいしたが、手をつないだのが数回で、ハグもキスもしていない。もちろん、肉体関係もない。しようと思ったこともない。肉体関係=結婚。結婚前に肉体関係を持つのは不良。汚らわしい。という価値観。

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しかし、彼女を見たい。会いたい。会いたくてたまらない。という衝動を抑えきれず、時間があると、彼女の行動ルートを行ったり来たり、待ち伏せたり。クラスの前はもちろん、家にも行った。が、中には入らず、外の道路から窓越しに食卓を覗き見し、顔が見えたら安心して帰る。という行為をほぼ毎週行なった。

ずっと後、ストーカーという言葉と意味を知ったが、まさにオレはスーパーストーカーだった。彼女に会うため、姿を見るためなら、どこへでも行き、何時間でも待った。おかげで忍耐力がつき、刑事や探偵やってもイケると思う。

で、高校卒業前、意を決して電話をし、「会いたい。またつきあって欲しい」などとメモを読みながら、しどろもどろに話したが、はっきりと断られた。フラれた。

実はこの数カ月前から、彼女と同じクラスの木村という、陸上部のスターとつきあっていたのだ。しかも、木村は筑波大学に合格していた。風の噂でスポーツ入学と聞き、偏差値の実力では負けてないと思ったが、大学の格では負けた。顔もカラダも運動も。見た目から爽やかで、たぶん、性格もイイ。勝ち目はない。完敗だ。

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この後、武者小路実篤の「友情」を読んだ。

主人公の野島は、作家で成功を目指す青年。ほのかに恋心を抱く杉子がいた。親友の大宮は、野島と同じ作家仲間。実力と将来性で野島を凌駕していた。が、大宮は友として、野島と杉子がうまくいくように気を使う。ところが、杉子は大宮に恋してしまい、大宮も杉子と結ばれる。野島は絶望し、嘆き悲しみ、大宮からもらったベートーベンのデスマスクを叩き割り、大宮に手紙を書いた。

「友よ。君は僕にとどめを刺した。完膚なきまでに叩きのめされた。傷ついた。しかし、その傷は僕に火を着けた。僕は傷ついた獅子になって吠える。友よ、仕事の上で決闘しよう。いつか、どこかで再会し、握手する日も来るかもしれない。だが、それまでは別々な道を歩もう。君よ。僕のことは心配しないでくれ。傷ついても僕は僕だ。いつかはさらに力強く立ち上がるだろう。これが神から与えられた盃ならば、僕はそれを飲みほさねばならない」

野島は一気に書き上げると、初めて泣いた。泣いて、次の言葉を日記に書いた。

「自分は寂しさをやっと耐えてきた。今後なお、耐え続けなければならないのか。まったく一人で。神よ、助け給え」

この野島はオレだ。オレも決闘しよう。木村には負けない。が、今はあらゆる面で負けている。だらしない男だ。が、マリちゃんに認められたい。見返したい。木村から奪い返したい。

それと中学3年の時、下級生で中2の吉田からイジメを受けた。胸ぐらをつかまれ、ほっぺたを数回叩かれた程度だったが、物凄い屈辱を味わった。復讐したい。エコエコアザラク。ウラミハラサデオクベキカ。

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この2つの恨みをはらすため、オレは京都に行ってスグ、少林寺拳法の道場に入った。そして黒帯の初段を取ったら、まりちゃんに会いに行くのだ。と決めた。

あと、日記をつけることも決めた。高校まで一番の苦手が作文。大学の試験は論文中心と聞き、恐ろしくなった。どうするか?しばし考え、日記で練習しようと。同時に乱読。とにかく文章を読む。毎日書く。そしたら作文も書けるんでは。

あと一つ、京都に行ったら、家を離れたら、スグにやりたいことがあった。男の決意。人に言えない悩み。コンプレックス。これは「相当な痛み」を伴ったが、のちにこの経験が仕事に活き、売上(粗利)で数億円に化けた。

痛い目に遭うことは素晴らしい。

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