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14/12/29

不登校クラスメイトとのちょっとしたお話②

Image by Olia Gozha

 いつものように、だらだらとくだらない話をしながら学校へと向かう道は、彼女の家に寄ってからひとりで登校する時よりも私としては楽しかった。しかし、学校が見えてくるにつれて、彼女の足取りは露骨なまでに遅くなっていく。それはわかる。わかるけれど、私だって遅刻する訳にはいかないのだ。何とか話を途切れさせないようにしながら、門まで歩いていく。だが、門が見える位置の曲がり角で彼女は完全に足を止めてしまった。ああ、もう無理なんだ、と。彼女は何も言わなかったが、私は何となくそう思った。


 やがて、チャイムが鳴って、門付近に立っていた教師が門を閉じ始めた。たぶん、私達の姿は見えていたのだろうが、特に声は掛けられないままだ。この時は、「お前が何とかしろよ」と多少大人に対して、頼りなさを覚えたのだが、だからといって直接文句を言う事はできなかった。鉄製の門が閉じられる大きな音がして、教師たちが話しながら桜の並木道を通って校舎へと向かっていく姿を、私たち二人は何を言うでもなく眺めているだけだ。そのときは、とても漠然と「あー、遅刻しちゃったー」と考えてしまって、多少は焦りを覚えていた。しかしながら、だからといって、その気持ちで彼女を急かす事もできずに「どうする?」とだけ問いかけた。彼女は、多少戸惑った様子で私を見たあと、数分ほど無言でじっと門を見つめていたが、やがて小さく首を振ってしまう。そうかーそうかーと適当に頷きを返していた時、私はとても残念な気持ちでいっぱいだった。

 そのあと、遅刻なら何分遅れてもどうせ遅刻は遅刻だと開き直って、彼女を一旦家に送り届けてから学校へと向かった。その日、学校でどう過ごしたのかはあまり覚えていないが、担任教師から遅刻について咎められた事をとても理不尽に感じたことは、これでもかと鮮明に覚えている。その担任教師は、部活の顧問でもあったのだが、結局は中学三年間ずっと好きにはなれなかった。「お前も何かしてやれよ!」「どうして、そんなに責めるんだよ」「私だって毎日頑張ってるんだけどなー」という不満でいっぱいだったのだが、遅刻と不登校児のサポートは別だと言われてしまえば、確かにそうでもある。

 そして、家に帰ったあと、母親からも叱られる羽目になった。「不登校の子を助けよう」などと、熱心でこそなかったものの、自分が何かする事によって不登校の彼女が学校へ行く気になればいいなという漠然とした思いはあった為、母親から受けた説教も、その時はやはり多少理不尽に感じてしまった。予断だが、私の母親も中学教師である。教師とは、かくも理不尽なものかと思った中学一年生の一学期だった。ただ、数日おいて、ふと母親の言葉の意味を考えたとき、教師でもある母親の"母親"としての発言があったのだと気がついたのである。

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