楽しい時間はあっという間に過ぎた...
「明日、何時に起きるの?」
「6時半だよ」
「起きるの大丈夫?」
「寝坊したお前が言うな!」
「えへへ」
「ずっと起きてるから大丈夫」
「寝ないの?」
「寝てていいよ」
帰りもマニラまで
彼女に送ってもらう予定で
彼女の飛行機のチケットも
日本で手配していた。
シャワーを浴びてバスルームから出ると
すでに彼女は寝息を立てている。
ベッドの真ん中にうつ伏せで大の字になり
掛け布団の下からつま先だけ顔をだしてる。
かわいいけど、色気もへったくれもない...
明日の今頃は自分の部屋に居るのかと思うと、
一気に現実に引き戻される感じだった。
窓の外が白み始めたころ
彼女をたたき起こして
バスルームに放り込み
荷造りをはじめる。
「あっ!お土産買ってないや・・・」
「もう行くの?」
「そろそろ出るぞ!」
「え~!まだ何も準備してない」
「も~、ぎりぎりまで何もしない性格を直しなさい!」
「まってよ~」
「は~や~く~~~」
なんとかホテルをチェックアウトして
ホテル送迎用の車に乗り込み
ダバオの空港に向かう。
朝が早いこともあって
乗っているのは2人だけだった。
「ほんとに帰っちゃうんだね」
「うん」
お互いの手を握って、そこから先は
車を降りるまで無言だった。
日本と違い、フィリピンの空港は
飛行機のチケットをもっていなければ、
建物の中にすら入れない。
「なに?」
こんなやつでも、帰りは頼りになる存在だ。
「だから、なに?」
「なんでもないw」
ダバオ空港の中の売店で
買いそびれたお土産を探す...
ドリアンキャンディー、
ドリアンチョコレート、
ドリアンタルトにドリアンクッキー
「だよねぇェェェ~~~」
10時ごろには、ニノイアキノ空港に着き
あとは、日本行きの飛行機の時間を
待つだけだ。
第2ターミナルの横にあるJolliybeeで
朝ごはんを食べて、出発ロビーの外にある
待合い用のベンチの一番端に腰掛けた。
マニラの空は青くて、
時々、心地良い風が流れる。
「ダバオ行きの飛行機は夕方だよね?」
「マニラの友達に会ってそれから帰るね」
「乗り遅れるなよ!」
「も~、心配するなよ」
「じゃ、行くわ」
出発ロビーの中から、ガラス越しに
こっちを見る彼女に手を振る。
彼女はくるっと私に背を向けて、
手を振りながら、人ごみの中に消えていった...
自分はバッグから上着を取り出し、
2月の成田を後にした。
6日ぶりの自分の部屋。
6畳間のちゃぶ台の上のパソコンは
確かに世界に繋がっていた。