日本に帰る飛行機は明日の早朝。
実質的に、今日が最後の1日。
ゆうべの事は、とりあえず様子を見よう...
来年結婚すると言っちゃったとしても
まだ、来年の話だ。
どうなるかなんて、解らない。
それに、もしかしたら、
本当に結婚するかも知れない。
「今日は、なにするか?」
「チョットお土産買いたいな」
ホテルの横に道を挟んで
小さなお土産屋さんが
軒を連ねた場所がある。
いつも日本円をペソに
両替えしていた所だ。
ダバオの街自体は大きいが
田舎町でノンビリしている。
彼女の家から遠くない場所に
アポ山と言う自然豊かな
アクティビティもあるらしいが、
そんなに観光地というわけでもない。
ん~、お土産、お土産...
アジアンテイストな小物や
キーホルダーは売ってるけど
フィリピン行ってきました的なものは、
これといって無いなぁ。
「ダバオで、有名なものなにかある?」
「ドリアン」
「あの、ホテルに持ち込んだらダメと言われてる臭いやつ?」
「でも、美味しいよ」
そう言われて、食べ物のお土産
コーナーを見れば、あるわあるわ
ドリアンキャンディー、
ドリアンチョコレート、
ドリアンタルトにドリアンクッキー
なんかパッケージもフィリピンぽくて
いーじゃんこれ。
とりあえず試食用に少し買ってみて
美味しかったら、これにしよう!と
キャンディとチョコを買ってホテルに戻る。
どれどれ…ドリアンチョコ
ほ~、なんとも表現のしがたいマズさだ...
ウケ狙いで、変なお土産買ってくる
会社の同僚も居るけど
これは、間違いなく罰ゲーム級だ。
食べた後にドリアンの匂いがずーっと残る...
...お土産は、また考えよう。
そういえば、2人だけで、
ゆっくりする時間は、ほとんど無かった。
「今日まで一緒に居てどうだった?」
「チャットで話してた通りの人でよかった」
「いとこ達も、日本人なのに威張ってないしずっと一緒にご飯食べてくれて嬉しかっただって」
あいつ等、そんなこと言ってたのか...
「昨日は、来年結婚するって話してたけど、本当にいいの?」
「もちろんだよ」
「2人一緒に居たのはまだ5日だよ?心配はないの?」
「なんで?2人一緒に居たのは1年半でしょ」
確かに、彼女の言う通りかも知れない。
「あなた、私と結婚したくないの?」
「そんなことはないよただ、明日になればまた、2人は離れてしまうでしょう?」
「さみしくなるな~今度、いつ会えるのかな?」
「でも、これあるから大丈夫」
そう言って、彼女は
首から下げた指輪にキスをした。
「そっか」
そこまで、想っててくれるなら
本気で考えよう。そう思った。
彼女の家で晩御飯を食べるのも、
今日が最後か...
いつものように、マーケットで
晩御飯のおかずを買って
彼女の家に帰ると、すでに奴らが居た。
「今日はいつもより、早いね」
エディ「お前と最後の夜だからな」
サモア「それに、今日は2人の婚約祝いだろ?」
「えっ!?」
キンジョー「お母さんが、みんなに話してたぜ!」
1年間の猶予が無くなっていた(汗
サモア「今日はいい物持ってきたぞ」
そう言って見せてくれたのは
ドリアンだった...
「あれ?あんまり臭くないね?」
サモア「皮を割ってすぐの新鮮なやつなら臭くないんだよ」
サモア「これ食ったら今晩寝られないぐらい元気になっちゃうぞ」
「あははは」
これなら、いけるかも?
人生初のフレッシュなドリアンは...
やっぱり、ダメだった。(^-^;
匂いも、味も行けなくはないんだけど
食べた後に、ぶるぶるっって
体が震える様な感覚になるのよ。
もうひとつ食ってないもの
食わせてやるよ!
そう言って、エディが豆腐売りみたいな
自転車のおじちゃんを呼び止めた。
それは、バロット。
聞いたことはあったけど、
こっちは、注文の仕方からしてダメだった...
「何日目にする?」って、育ち具合で
頼むんだもんなぁ~。
フィリピンとダバオの2大名物は、
好きになれなかった...
「もうビールないよ買うするか?」
「じゃ、あと1ケースだけ」
「みんな、買い物いくよ!」
前に行った、近所のスーパーへ
みんなで歩いて買い出しに行く。
「ヤバいおしっこ漏れそう!」
キンジョー「なら、そこでしちゃえよ!」
通りの横を流れる、小さな川に目線をやる。
「え?いいの?」
キンジョー「おれも漏れそう!」
エディ「なんだ、おまえも?」
サモア「おれも、おれも!」
結局、男4人肩を並べて立ちション...
大人になってから、並んで立ちションなんて
したことなかったなぁ~
何気なく見上げた空は、
手が届きそうな星空。
おれ、明日帰っちゃうんだ...
「明日の朝早いからそろそろホテルに戻るよ」
エディ「そうか、さみしくなるな」
「みんなも身体は無理すんなよ」
彼女の家族、野郎ども全員とハグして
別れのあいさつをした。
5日前、
日本人の客として迎え入れてくれたみんな。
今は、ファミリーとして送り出してくれる。
また来るよ...
ホテルの入り口には、
いつものドアマンが立っていた。
ドアマン「今日も彼女と一緒かい?幸せだねぇ~」
「のー!」
ドアマン「ん?」
「まい、ふぃあんせ!」
ドアマン「お~、べりー、ないす!」
「なんて言ったの?」
「おしえない!」
「けち!」