ブリッグスさんという 警察官の物語です。
彼が 橋中央部のパイプに座って 自殺を企てているという 連絡を受けたのです 要請に応じ 私が現場に駆けつけた時 ジェイソンは別の警察官に 話しかけていました 弱冠32歳の彼は 飛行機で遠く ニュー・ジャージーからやってきたのです 実を言うと 彼は自殺を図ろうとして 既に2回ここを訪れていました
1時間ほど会話した後 彼は パンドラの箱の 話を知っているかと 我々に尋ねました
ギリシャ神話によると ゼウスはパンドラという名の女性を創り 彼女を一つの箱とともに 地球に送り込みます そして “決して その箱を開けてはならない"" と命令します しかしある日 パンドラは好奇心に負けて その箱を開けてしまいます 箱からは 厄災や悲哀など ありとあらゆる悪が飛び出しますが 希望だけが唯一の救いとして残されました
ジェイソンは 続けてこう問いました “パンドラの箱を開けて 希望すら 残されていなかったらどうなるだろう?""
彼は 何度かためらいつつも 身体を右側に傾けて 飛び降りました この心優しく知的な ニュー・ジャージーの若者が 今まさに自らを殺めてしまったのです
もしあなたの家族や友人 最愛の人が 自殺を考えていたらどうしますか?
私の経験によると 声をかけるだけでなく 耳を傾けることが重要です
理解しようと 耳を傾けるのです 言い返したり 非難してはいけません また“あなたの気持ちがわかる"" と言ってもいけません
恐らくあなたはその人の気持ちを 理解していないからです
単にそこにいるというだけで あなたの存在自体が 彼らの人生に必要な 転機になりえるのかもしれません もし誰かが自殺を企てていると思ったなら 恐れずに向き合って 尋ねかけるべきです
自殺志願者と見られる人物がいるとの 無線連絡を私は受けました 私はバイクで現場に趣き この男性 ケヴィン・ベルシアが 歩道に立っているのを見つけました
タワーの周りに設置してある 細いパイプ上に立ちました それから一時間半の間 ケヴィンが 鬱と絶望について語るのを 私は聞き続けました
その日 ケヴィンは ふたたび柵を乗り越え 新しく人生を やり直すという決断を自分自身で下しました
そして 戻ってきた彼を 私はこう祝福しました
これは新しい人生の門出なのだと けれど 私はこうも尋ねました
人生を希望と共にやり直したいと 考え直すきっかけは何だったのかと
彼が何と答えたか皆さんはわかりますか?
自分の言うことに あなたが耳を傾けてくれたからだと
私にとって 自殺は単に職業上 関わっているだけではありません 個人的な問題でもあります
私の祖父は 服毒自殺で亡くなりました そうすることで 祖父は自らの苦しみに 終止符を打ちましたが
一方で 私は祖父について知ることが できなくなりました これこそが 自殺の結末なのです
自殺者や自殺志願者の多くは 他人を傷つけようと 考えているわけではありません 単に自らの苦しみを終えたいだけなのです
これまで私は 橋周辺で数百人の 自殺志願者に対処してきましたが
直接携わった事件のうち 自殺の引き止めに 失敗したのは たった2人だけです
しかし 2人というのは多すぎます
一人はジェイソンです もう一人の男性と私は 1時間ほど話し続けました
彼は3回にわたって 私に握手を求めてきました
最後の握手の際に 彼は 私を見つめながらこう言いました
悪いんだが 俺はもう行かなければならない と
そして 彼は飛び降りました 本当に 本当に 悲惨な出来事です
PS
日本では 1999年以降
毎年 3万人以上の人が
自殺をしています。
これは 先進国の中では トップクラスに悪い数字です。
今日も ニュースを見ていたら
高校生が学校で自殺をしたというニュースがやっていました。
なぜ こんな悲劇が続いてしまうのでしょうか
僕は 何人も 自殺者をなくす活動をしている人を知っています
行き場を失った人たちに場所を提供しているお寺の住職の人や
悩み相談をボランティアでやっている人
署名活動をしている人などなど
これら 個人の活動だけでは やはり限界が あります。
国が動かないと 根本的には解決しないのでないでしょうか。
3万人も亡くなっているのに これを異常なことだと
だれも 思わないのでしょうか
しかし この数字も ウソだと言われており
実際は その倍以上の人が自殺をしています。
たしかに 最近は減少傾向にあるようですが
それでも高すぎる 数字です。
特に 若い人が多い
この前の選挙だって それを訴えている人はいませんでした。
一人や二人ぐらい 自殺のことを訴える人がいても いいと思います