親戚の中で一番エライおっさん...
見た目が少し、中尾彬に似ている。
この時点で、威圧感たっぷりだ。
彼女のお父さんとお母さんは、
「わざわざ、よく来てくれました」
といった様子で、何度も頭を下げている。
ヤバい、これは下手をすると
自分の言動ひとつで
彼女の両親に対してまでも
被害が及びかねない雰囲気だ。
隣に彼女を座らせて、通訳と
サポート役をお願いした。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
いやいや、目の前にタガログ語を話す
中尾彬がいたら、日本人なら誰でも
ビビるって・・・
この手のおっさんは、
自分が気に入った人間には甘く、
気に入らない奴にはとことん厳しくあたる
きっとそんなタイプだ。と、勝手に想像...
(中尾彬さんのことではないです、はい)
そもそも、このおっさんが
何で一番エライんだ?
彼女のお父さんよりどう見ても年下だ。
エライおっさん「日本人?」
彼女を通訳にして恐る恐る話をする。
「そうです」
エライおっさん「彼女とは、どこで知り合ったんだ?」
今までの経緯を
かいつまんで話した。
エライおっさん「ふ~ん、そうか」
エライおっさん「ところでお前日本の水道は飲めるんだろ?」
エライおっさん「ダバオの水道飲んだことあるか?」
エライおっさん「飲めるんだぜ知ってたか?」
なんだ、唐突に
このわけのわからん話題は!?
実はこのおっさん、ダバオの水道局で
ナンバー2ぐらいの立場にいる人らしい。
エライ理由が分かったね。
社会的な地位と経済的な面で圧倒的優位な
立場にいる人なんだろうね。
「そういえばビールにさんざん氷入れてたけどおなか何ともないです」
エライおっさん「ダバオの水道の水は山の湧き水をパイプで引いてくるんだぜ」
エライおっさん「だから水道の水はとても綺麗なんだ」
エライおっさん「パイプをつなげるのにジャングルに入るんだぞ」
エライおっさん「この間は、こんなにでかい毒蛇出てきてよ」
エライおっさん「で、お前彼女とこれからどうするつもりだ?」
そこで話を戻すのかい!
「彼女の気持ちはうれしいです」
「お付き合いするのなら真剣に考えます」
エライおっさん「それは、結婚も考えるってことか?」
「そうですね」
若いころは別として
今までも、彼女と付き合うときは
常に結婚するつもりで付き合ってきた。
最後までたどり着いたことは
一度もなかったけど...
エライおっさん「次、いつ来るんだ?」
「来年ですね」
エライおっさん「そうか」
エライおっさん「眠くなったからもう帰るわ」
「おっ、お疲れ様です」
1時間ぐらい話をして
なんの結論も言わずに帰っちゃった。
果たして自分は、好かれたのか
それとも?
「どうだったの?」
「なにも言わずに帰ったってことはOKってことだよ」
「そぉ?」
「よかったわたしもうれしい」
あら、お母さん泣いちゃった...
エライおっさんが帰って、
お母さんもホッとしたのかな?
ん?おれとハグするの?どうして?
「ねぇ、俺の返事さっきのおっさんになんて伝えたの?」
「来年結婚しますって」
「そういう意味でしょ?」
ここにきて、言葉の壁が...
あら~!?
そういや、二人してお揃いの指輪
首にぶら下げてたっけね...
きらきら光ってるよ...
うはははは、あはははぁ
はぁ~
それからホテルに戻って、
洗面台で顔を洗った。
時には、流れに任せてみるのも
ありなのかな?
「結婚は勢いでするもの・・・」か
「そういや、今日のホテルの水道は、いつもより勢いある気がするよ・・・」
「おっ、うまいこと言うね!」
って、独りノリツッコミしてる場合かっ!