「あ〜戻ってきた」
4ヶ月ぶりのアメリカ。
って言っても、16時間で着いちゃった。
24時間あれば、世界中どこでも行けそうだね。
便利な時代だ。
アメリカに戻った俺は、日本語を教えるというバイトをやり始めた。
バイトをしながら、空いた時間で情報を求め、インターネットで色んなことを調べていた。
終わったら授業へ。
それから身体を鍛え、バスケをするという毎日。
何一つとして、不自由のない日々。
更に香港人の彼女もできた。
幸先良し。笑
そんなある日。
母からSkypeがかかってきた。
母「手術を受ける。」
「えっ!?」
何も聞いてなかったからビックリ。
手術?
母「卵巣がんらしくて、子宮も摘出しなあかんねん。」
母「良磨が生まれ育ったところやし、来週には手術で急やねんけど、手術の時だけ帰ってきてほしい。」
急展開すぎる。
来週って。
1週間後やん。
「わかった、帰るわ!」
学校に1週間の休みをとる旨を伝え、いざ日本へ戻る。
が、しかし急すぎたこともあって、大阪直通がない。
一旦東京で、そこから夜行バスで大阪に。
大阪に戻って、病院へ。
変わらない顔がそこにはあった。
母「ありがとう。」
「うん、大丈夫?」
元気そう。
少しホッとした。
たわいもない話ばかり。
笑顔がこぼれる。
主治医「お腹の横から小さな穴を左右からあけて、そこから摘出するので、ダメージは大方少なくて済みます。」
身近な人が手術を受けるのは初めての俺にとって、それは不安を和らいでくれる言葉だった。
手術の内容も一通り聞き終わり、
「がんばって。」
母「うん。」
手術室へと母は運ばれていった。
そして、手術が始まった。
。。。
30分程経ったくらいの頃だろうか。
看護婦さんに別室に呼ばれた。
そこには主治医の人も立っていた。
そこには摘出されたと思われるものが2つ置かれていた。
「これは。。?」
主治医「2つとも卵巣です」
「え?!」
片っ方は2cmあるかないかに対して、もう一方は10倍くらいの大きさがある。
とても同じものには見えない。
そして、主治医の口から思ってもみない言葉が飛んできた。
主治医「思ってた病気と違うかもしれません。」
「え?」
主治医「やむなく、手術内容を変更させていただきました。」
それからその手術内容を聞かされた。
お腹の横から少し左右に小さな穴をあけると言ってたところから、大幅な変更。
お腹を切って摘出したと後から聞かされたのだ。
「どういうことですか?」
少し説明があったが、よく分からない。
そして。。手術が終わった。
看護婦さん「長男の方いらっしゃいますか?」
「あ、はい。僕です。」
主治医のところに呼ばれる。
主治医「長男の方ですか?」
「そうです。」
手術で何が起こったかの全体像を聞かされた。
そして、
これから主治医が言った言葉を、
そして光景を、
俺は今でも鮮明に覚えている。
主治医「長男の方なので、先にお伝えしておきます。今検査中なので、まだ分かりませんが、症状を見るところ、虫垂癌の可能性があります。」
「チュウスイガン?」
主治医「はい、これは非常に珍しい癌で、100万人に1人の癌と言われていて。。日本でも症例がかなり少ないです。当病院では、この病気の治療の仕方を知っているものはいません。」
サラッと言われて、思わず言葉を失う。
思考がついていかない。
「。。え? つまり、どういうことですか? チュウスイガンって何ですか?」
主治医「虫垂癌とは。。。」
虫垂癌の説明をされる。
しかし、
聞いている途中で衝撃的な事実に氣付いた。
主治医の目がよくチラチラ、パソコンの方を見ているのだ。
「何を見ているんだろう?」
「。。。。。。ん?Wikipedia?」
目が点になった。
この人。。虫垂癌のこと全然知らないんだ。
主治医「検査が分かるまで、2週間はかかるので、まだ分かりませんが、その可能性は非常に高いです。そして、ステージ的にもかなり進行が進んでいる可能性も高いです。2週間後はどちらにいらっしゃいますか?」
「アメリカです。」
2013年2月末のことだった。


