top of page

14/12/17

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑰

Image by Olia Gozha

実際に存在する地名なのか怪しくなる時もあるが、母は滅多に嘘をつかない人なので信じることにしている。


「アンドラ・ラベラ。」

と母が言った時、父が車のエンジンを止めた。


麓に着いたらしい。


「さて、さゆり、準備しようか。」

そう言うと父は車のトランクを開け、自転車と工具が入ったケースを取り出した。

私はアーレンキーでサドルの高さを調節し、モンキーレンチで各部のネジを締め直す。


「大丈夫そう。」


「そうか。これからお父さんたちが前を走るから、その後をついてきなさい。」

「うん。」


父は車に戻るとエンジンを噴かし、走り出した。

私もギアを変え、ペダルをこぐ。


峠までは緩やかな上り坂。

左右にカーブを描きつつ、登ってゆく。

すっかり緑に包まれた山を走るのは気持ちよかった。

葉の間から注ぐ木漏れ日や小鳥のさえずりが肌に、耳に心地いい。

呼吸をする度、空気に不純物が含まれていないことを知る。



【⑱に続く】






←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page