top of page

14/12/18

貯金残高192円『さぁ、結婚してみよう!』其の三

Image by Olia Gozha


たーさんは、猛烈な《三社祭》信者です。

知ってますか?三社祭。

浅草で5月に開催される有名なお祭りです。

年が明けた頃に「今年も、あの季節がやってくるな…」と 高倉健さんばりの哀愁漂う発言してしまうくらいの祭バカ。


なので、大多数の女性にとっては 人生で一番の晴れ舞台であろう結婚式の場所は たーさんの鶴の一声で決まりました。

「よし!結婚式は所縁の深い 浅草神社でやろう♩」




えーと。

3番目じゃないですよね。

…所縁 深いかなぁ…?

私は特に何の思い入れも無いんですけど。

浅草…浅草…うーん。(。-_-。)




まぁ、ここでツッコミいれても、面倒なので たーさんが乗り気になっているのであえて触れませんでしたけども。


挙式が神社と言うことは、たーさんの紋付袴の夢も叶えられるし。

それはそれでいいか。

よし!じゃあ披露宴は…

「近けりゃどこでもいいよね♪」


・・・御意。


私達の結婚式は予算だとか、食事の内容だとか、施設の中身だとか、プランだとか、そんなものを一切 調べる事なく たーさんの《三社祭》への愛だけで、ものの数分で決定しました。


結婚式ってゼクシィとか眺めながら、あれやこれやと楽しみながらも悩むものかと思っていましたが、まるで 

「明日、どこで呑む?」

「浅草でいいんじゃん?」

ぐらいのノリです。


まぁ、結果として、結婚式を挙げた事によって所縁が出来たから 良しとしましょう。

そう、しときましょう。はい。


何も考えていないのか、それとも決断力があると言えば良いのか… この人の底知れないパワーに圧倒されまくりです。


さて、ここからが本番だ!

プランナーについてくれた人は、かなり賢そうな、いわゆるデキる人でした。

(メガネをかけていたので、ここからは『メガネさん』と呼びます。)

私達のような、ノリと勢いだけできている冷やかしのような奴らにもスーパースマイル営業。


そのいろんな修羅場をくぐってきたであろうメガネさんもタジタジになるような発言を今後も私達は繰り返す訳ですが…


たーさん「出席者?俺だけでも100超えると思うんだけど」

メガネさん「あのー、なるべく御新郎 御新郎の来賓の数は同じくらいにされたほうが・・・」

たーさん「じゃあ、俺 減らせないから、ハナちゃん増やしてよ☆」

メガネさん「あの〜・・・ご予定の人数で会場が変わりますので・・・。ちなみに、ご希望のお日取りは?」

たーさん「1月です。」

メガネさん「…‼︎3カ月後ですか!では、今後は毎週打ち合わせになるかと思いますが 宜しいでしょうか?」

たーさん「宜しくなくても、しないとダメなんですもんね?」

メガネさん「(あたり前だろ、ボケッ!)あと3カ月しか無いんです!バタバタになるかと思いますが、頑張りましょう‼︎」


ってか、そもそも 私達 貯金無いんですけど?


この頃、全くもって結婚式の予備知識のなかった私達は 本気で何もわかっておりませんでした。


そして、この後 私の記憶では、たーさんは打ち合わせに来なかった。


とは言え、私も仕事もあったし、そうマメなほうじゃないので、毎週は行かなかったけれど。


そもそも私達が結婚式を挙げると決めた理由はただひとつ。

夫婦2人揃って究極の面倒くさがりなので、式をあげずに親戚一同に挨拶回りをするor1度の結婚式で皆にお披露目どちらにするのか?

を天秤にかけた訳です。

そこで じゃあ1回の方が効率良いじゃん!って結論に至ったのです。

バカの短絡的思考ほど怖いものは世の中にはありません。


これを言うと驚かれるが式当日 私は衣装はお色直しを2回したが、衣装合わせで何度も来店するのが面倒過ぎて1日で全て決めた。

正確に言えば、数十分と言ったらいいでしょうか。

白無垢に関しては着るのさえも面倒で、「あのー、白ければ良いです」「あ、これでいいです」と一番近くにあった白無垢を指して美粧の人を驚愕させた。



披露宴に至っては、席次表やらタイムスケジュールやら、選曲、ネームプレートやら、引出物やら、とりあえず決めなきゃならない事が多い。

多すぎる!

席次表ひとつとっても、肩書きやら、席の割り振りにはかなり時間をかけたつもりだ。

企業に属している方の肩書きは楽でいいなと、本気で思った。

正直、なんて書けばいいのかわからない方もたくさんいた。



お互い仕事が忙しかった事もあり、

式場の打ち合わせが進まない事も多かった。

と、いうよりもやはりギリギリのところまでは動きたくなかった。

夏休み終了前日まで空白だらけの宿題と同じだ。


式も迫ったある日、

メガネさんがついにキレた。

普通の流れでは、この日は花やテーブルのコーディネートを。

その次の週は写真を、といったように段取りを踏むのだと思うが、あまりの来店しなさにメガネさんも業を煮やしたのだろう。


メガネさん「お願いですから 来週だけは絶対に来てください‼︎その日に全ての打ち合わせを終わらせます!その日だけはどうか‼︎」

あまりの勢いに、NOとは言えなかった。


打ち合わせ当日。

ニッコニコの笑顔で待ち構えていたメガネさんの目は笑っていなかった。

「お待ちしておりました♥今日はみっちり5時間のお時間をいただき 今後全ての打ち合わせを本日行います」

人間、追いつめられると 本領発揮するもんですね。

メガネさん、怖いです♥


まず花屋。

花担当「ご要望はありますか?」

たーさん「正月みたいなめでたい感じの内装が良いです」

花担当「1月下旬なので、少し時期外れかと…バレンタインデー前倒し的な感じではいかがでしょうか?」

たーさん「いえ、正月です!」

花担当「・・・。」

たーさん「白、赤、金‼︎みたいなコテコテにめでたい感じでやってください。あ、オレンジもいいですよ♪」

花担当「…かしこまりました。」


今まで何もやってこなかった奴ほどこだわりポイントが多い。

その他 音楽やら、衣装やら、司会者やら、式のすべての段取り決めて 5時間を超えたところで、最後に写真だ。


写真担当「アルバム等はいかがなさいますか?当店ではこのようなプランを…」

たーさん「いりません。来賓者 ほとんどがカメラマンなので、みんなから後々データもらうので大丈夫です。ビデオも外注でこちらでいれます。」

写真担当「・・・・・。」


1分で終了。

あの後、写真室のあの方々はきっと腹わた煮えくり返っていたと思う。

ごめんなさい。

まぁ、ともあれ 式までの段取りは何とか終了。




そして、結婚式前日。

やはり 実感もなく 私は両親への手紙を書いていた。

でも、ここだけは実は唯一やりたかった事でもあった。

心を込めて 一生懸命下手な文章を書いた。

その頃 隣ではゴロゴロとコタツに転がるたーさんがいた。


たーさん「はなちゃん、何書いてんの?」

「両親への手紙だよ。」

たーさん「ふーん。偉いねぇ。」

「挨拶文、考えてあるの?」

たーさん「明日、考えるよ♪」



明日 本番ですけど?

と、言ったところでこの人には通じないのでスルー。

そして、このたーさん式中にツイッターで「結婚式なう。最後の挨拶どうしよー」と投稿。

最後までマイペースな人だった。



そして、本番に向かうわけだが、結果として 私達の場合 は

1番お金が動く映像や写真にお金をかけずに済んだ事、

過度なオプションをつけなかったこと、

来賓者が多かったこと、

また、たーさんの仕事関係の方々が思った以上に包んでくれたことも重なって 結局 かなりの黒字で式を終える事が出来た。


結婚式の支払いは、私達のように元手があまりない夫婦にも式が可能なように式 翌日に現金払いもしくはクレジットカード払いというのもある。

場所によっては1週間待ってくれたり、共済プランなどの破格の式場泣かせのプランもある。

つまり、人数を増やす、来賓の方の割合を少し考えるだけで結婚式は誰でも可能だといえる。

もちろん、クレジットカードなら、いきなり数百万単位で決済するので、ポイントも貯るし マイルを貯めて新婚旅行とまではいかないが、小旅行などにあてても良いかもしれない。

私達は後者を狙って、翌日にクレジットカードで支払いを済ませた。

まさかのたーさんの確認ミスで夢のポイントをめでたく失効させるわけだが これらを聞いて 結婚式を身近なものと感じてもらえたら嬉しい。



あれほど億劫だった挙式披露宴だったが、浅草の街中を人力車で走るところから始まった1日はまるで夢のような時間だった。


雷門の前で観光客の方々におめでとう〜‼︎とたくさんのお祝いの言葉と拍手をもらい1日だけのスターになった気分だった。

こんなグダグダな私達だったが、式を挙げると決めた事は、やはり間違ってなかったと思った。


あんなに楽しかった日は、今までなかったかもしれないと思うほど。

大好きな人達が 私たちのために集まってくれる。

心から祝福してくれる。

なんてステキな事なんだろう。

女性がこの日のために、最高の自分になりたいと思う気持ちが少しわかった。

その分 あのメガネさんには申し訳ない気持ちでいっぱいだけれど(笑)


たーさんはというと、友人達に日本酒、ワイン、焼酎のスペシャルちゃんぽんボトルを高砂の席に置かれ、挨拶に来てくれる人みんながそれでお酌をしてくれた結果、どうやら式の途中から記憶がないらしい。


危ぶんでいた式の締めの挨拶では、新婦の両親への手紙の印象が薄れるほどの大号泣だった。

母親が早くに亡くなった彼にとって義父はとても大きな存在だったのだと思う。

たーさんが、式をあげたかった理由のひとつは、やはりそんな義父に自分の晴れ姿を見せたかったんだと思う。

その思いが胸にこみ上げてきたのか、言葉は涙となって溢れ落ちた。

あの時の親戚一同、友人一同からの「頑張れ!」コールは今でも頭から離れない。

あそこまで新郎が泣き崩れて、みんなにエールをもらう式なんてなかなか無いと思う(笑)


そして、たーさん記憶の無いまま3次会まで突っ走った訳だが、

たーさんはあろう事か、その3次会で私の友人を本気で口説き、結婚式当日のその夜に新婦の私にグーパンチをもらい前歯を消失させた。


部屋に険悪なムードのまま戻り、私はそのままシャワーを浴びにバスルームへ。

遠くの方で、ドアの閉まる音が聞こえた。

シャワーから出ると、手付かずのルームキーと何故かタキシードのズボンとパンツだけが残されていた。

新婚初夜はと、スイートルームの部屋を取っていたのだが、実はスイートまではルームキーをエレベーター内の鍵穴に差し込まないとその階に止まらない仕組になっている。


その事を忘れたのか、その数十分後に下半身をバスタオルで巻かれた情けない新郎が部屋へ戻ってきた。


後から聞いた話では、下半身のみ裸のたーさんがフロント周りでウロウロしていたところをボーイさんが慌てて保護してくれたとの事。

何度か部屋へ戻ろうと彷徨っていたらしいが、そもそもエレベーターが止まらないので お手上げになったたーさんは新婚初夜にフルチンでフロントへ助けを求めたらしい。



さすがとしか言いようがない。

ここまで話題の尽きない男を見た事が無い。

ここまで来ると怒りを超えて、この人の生態にさらに興味が湧いてきた。


不思議だが、この7年間 こんなたーさん相手なので、いろんな荒波はあった。

(これもたーさん曰く、私が怒っているだけで そんな事は無かったというけれど)

が、しかし。

離婚をしたいと思った事は1度ない。

うーん。たぶん無かったと思う。


ケンカをしても、


「もう!なんなの?大体・・」

たーさん「ねぇ?はなちゃん。聞くからまずビール取って?」


あのォ〜…言葉のキャッチボールってしってます?((((;゚Д゚)))))))


だけど、それが意外と居心地が良かったのも事実。


下手に売言葉に買言葉みたいなケンカはそのおかげで無かったし、何より基本的にポジティブでクヨクヨ悩んだりもしない人なので、ケンカをしても驚くほどアッサリと終わった。


その分、私もたーさんという 超マイペースな人種への飽く無き探究心が尽きなかった。


少女漫画のような、キラキラした世界にはきっと永遠に辿り着く事は出来ない2人だと思うが、時にコメディ・時にアクション映画のように、

この人とこれからも仲良く暮らしていきたいと思います。


ご声援ありがとうございました^_^



つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page