top of page

14/12/9

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑥

Image by Olia Gozha

さゆりはズボンと上着を脱いで洗濯機に突っ込むとベランダに向かった。

たとえお父さんの服と一緒に下着を洗われてもさゆりは気にしなかった。

周囲の友達はそういうのを気にする年頃であるのに対し、「家族だし、お父さんの血が体に流れている身だし、別にいいじゃん。」がさゆりの意見だった。

ベランダでタオルを取ろうとした時、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。

その音はこちらへ近づいてくる。

「お姉ちゃーん、飲み物あったっけ?」

疲れたような眠いような声で彼女は尋ねてくる。

「んーあるんじゃない。朝、お母さんが麦茶作ってたし。」

「そっか。あっ ただいま。」

そういうとまたバタバタと音を立て台所へと消えていった。

「そうだ、下着も用意しないと。」

さゆりはタオルを手に取り、廊下を出ると少し、大きめの声で彼女に話しかける。

「あのさ、詩織、麦茶飲んで二階に行くなら、私の部屋からいつもの着替え持ってきてくれない。シャワー浴びるのよ」


「いいよ。後で持っていく。」

一拍遅れて返事が返ってきた。

おそらく麦茶を飲んでいたのだろう。

了解の返事を聞くとさゆりは浴室に走った。


「あー暑い暑い。」

裸になり、すぐさまシャワーの蛇口をひねる。

全身を冷たい水が駆け抜けていく。


先ほどまで身にまとっていた汗という名の水分とは天と地の差だ。

これが同じ水分とは思えない。


ガチャ。

浴室のドアが開く音が聞こえる。


「ここに置いておくね」

詩織の声が聞こえた。



【⑦に続く】







←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page