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14/12/10

フィリピン人の彼女と会って5日で婚約して結婚しなかった話 - (7)憎めない野郎ども

Image by Olia Gozha

「はい、着いたよ!ここがうち!」

コンクリートの壁に、

なくても問題なさそうな入り口のドア。

Webカメラの向こう側は

こんな風になってたんだね。

映画の中に入り込んだみたいで

ちょっと不思議な感じがした。

「早く入って!」

促されて家の中に入ると、

すぐに12畳ほどのリビングなっていた。

彼女は扇風機のスイッチを入れて

自分に向けてくれた。

「そこに座っててね。今、晩御飯の支度をするから。」

開けっ放しの入り口から

入れ替わり立ち代わり覗き込む人。

そんなに見つめられても

なんの変哲もないただのオジサンだってば。

一人でリビングの椅子に腰かけてから

かれこれ、30分も過ぎたころには

物珍しさで覗きに来る人もまばらになり

いつもより少し豪勢な晩御飯をごちそうになろうと

している人が残った感じになった。

ちなみに、ここまでまだ彼女の家族は

誰一人紹介されていない...

「いいよ!こっちに来て!」

部屋の間仕切りを兼ねた食器棚の横を抜け

彼女の声がする部屋の奥へと入ると

リビングと同じぐらいの広さのキッチンになっていた。

6人掛けのテーブルにお皿を並べている人が数人いる。

「えっと、それがお父さんで、こっちがお母さんそのチビ二人が一番下の妹と弟だよ。」

「あと二人真ん中の弟と妹がいるけど今日はまだ帰ってきてないみたい。」

えっ、このタイミングで紹介すんのかい!

「コーラでいいかい?」

「あ、お父さんよろしくお願いします。」

「まっ、ゆっくりしていきなさい。」

お父さんは、ジャンクロードバンダムを

きゅーっと小さくした感じでシャイな雰囲気だ。

お母さんは、南国のおっかさんといった感じで

体形も南国w

チビたちはご飯とおかずを口いっぱいに詰め込んで

元気いっぱいだ。

自分のことは、彼女が全部紹介してくれた...

お互いに片言の英語で時々会話をしては

Oh yes!とか言ってたけど、どこまで話が通じたかは

疑問だった。

ご飯を食べ終わると、お母さんとチビ達は

リビングへテレビを見に行ったようだ。

「空いたお皿、片づけるね。」

彼女が片づけをはじめると

お父さんが席を立ち洗い物を始めた。

なんとなく彼女の家の力関係が分かった気がする。

お皿を洗うジャンクロードバンダム

なんだか、かわいらしい。

と、突然、視界の外から人影が現れた。

やたらでかい奴だよ~、しかも顔が超怖ぇ~

K1のリングに上がればサモアの黒ヒョウと呼ばれていそうだ。

うわぁ、また一人来たよ~

今度は小柄だけど、むちゃくちゃ引き締まった身体だ...

こいつも何かやってそうだよ。

うげっ、もう一人現れたぞ~

こいつも腕が半端ね~太さだよ...

兄弟はあと2人って言ってたし、ヤバい、

俺、このままどこかに連れていかれちゃうのかな?

でも、ここまで来ちゃってるし、もう腹をくくるしかない。

結局、彼女が3人にご飯をよそってから

自分の隣の椅子に腰かけた。

「あの~、この方たちは?」

「あぁ~、私のいとこたちだよ紹介するね!」

彼女が野郎どもの名前と仕事を教えてくれたが

すぐには覚えられそうにないので、あだ名を付けた。


最初の奴は、サモアだ。

この地域で自警団のリーダーをしているらしい。

それでも、日本でいう公務員みたいな立場だって。

二番目の奴は、エディにしよう。

お調子者で、ビバリーヒルズコップの

エディマーフィーみたいな奴だ。

引き締まった体は、漁師をしているからだった。

三番目の奴は、キンジョー。

濃い顔が、沖縄の友達に似ているからだ。

(金城ゴメンw)

太い二の腕は、病院のコックをしていて

毎日大きなフライパンを煽っているからだった。

サモア「こいつか?お前の友達の日本人て?」

きっとそんな話をしてるんだろう...

ヤバい、そうこうしているうちに、

こいつら飯を食い終わりそうだぜ。

「ねぇ、ビールでも買いに行こうか?」

「あ~、お酒飲む?いいよ。」

とりあえず、外の空気を吸って

彼女に状況を確認したいと思った。

「○×□・・・・・」

「ねぇ、いとこ達も一緒に行くってさ!」

「あ~、そ、そぅ?・・・」

家の近くのコンビニのような店まで歩きながら

彼女と話をした。

「みんなとどんな話をしていたの?」

「もちろん、あなたのことだよ。」

「みんなはなんだって?」

「優しそうな人だねってさ。」

ホッとして腰が抜けそうだった...


店に着くと、入り口には自動小銃を構えた

ガードマンが2人立っていた。

この辺りはあまり治安がいいとは言えないみたいだ。

それで一緒に行くって言ったのか...

店に入ると品ぞろえは豊富で

ビールにワイン、それにつまみと氷を買って家に戻った。

「お母さんがチビ達を寝かせるから、外で飲んでもいい?」

そういうと、家の前にあったバケツをひっくり返して

どこからか持ってきた板をのせてテーブルを作り飲み始めた。

話をすれば、野郎どもは気のいい兄ちゃんたちで

日本の生活はどうだ?とか、仕事はどうだ?とか

自分の答えに一喜一憂しながら盛り上がっていた。

「ん?サモア、さっきから手に氷を当ててるけどどうしたの?」

「あ~これか?昨日、近所で揉め事があってよ、2、3人ぶん殴ったからちょっと腫れててな」

ひょぇぇぇぇぇ!


買ってきた酒もなくなり、

気づけば夜中の3時を過ぎようとしていた。

「さぁ~、夜も遅いし、そろそろホテルに戻るよ!」

エディ「なんだもう帰るのか?今日はこれからどうするんだ?」

「まだ、何も決めてないよ。」

エディ「よし夕方また来いよ!俺がお前のためにでかい魚を取ってきてやるぜ!」

キンジョー「それなら、俺が料理を作ってやるよ!」

サモア「なんだよお前らだけ!俺はお前のプライベートボディガードになってやるぞ。行きたい店があればどこでも連れて行ってやる!」

そして、今夜も酒盛りが確定した。。。






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