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14/12/12

12泊って行くよ【息子たちに 広升勲(デジタル版)】

Image by Olia Gozha

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この話は、わたくしの父が1980年に自費出版で、自分と兄の二人に書いた本です。

五反田で起業し、36で書いた本を読んで育った、息子が奇しくも36歳に、

五反田にオフィスを構えるfreeeの本を書かせていただくという、偶然に五反田つながり 笑

そして、息子にもまた子供ができて、色々なものを伝えていければいいなと思っています。 息子 健生

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泊って行くよ



毎日、どんなに夜おそくても母さんは電話をよこした。

父さんも、一日一回母さんと話をしなければ落ちつかなかった。

中田のオバアチャンは、二人の電話をききながら、

「顔みたばかりで気がすむならば、酒のみや樽見て酔うものか」と面白いうたをつぶやいて父さんをからかった。

その日も夜十一時噴母さんから電話があった。話している内に急に逢いたくなった。「逢おうよ」と言った。

父さんは戸越(品川区)からオートバイで新宿まで、母さんは三鷹から新宿まで、夜の十二時新宿で二人は逢った。そこで一時間半ぐらい喫茶店でしゃべった。

電車がなくなることは承知の上でだ。

「もう電車がないから三鷹まで送って行くよ。寒いけど乗りなよ」

母さんはスラックスだったがオートバイにまたがって乗った。

青梅街道を走りながら、父さんは大声で言った。

「ガソリンがないから、帰ることができそうにないや……」

「…………」

「きみのところに泊ってもいいかい?」

母ちゃんは、口では“いい”とはいわなかったが、父さんに抱きついて乗っているその感じで“泊ってもいい”と思っているなと解釈した。

深夜二時、母ちゃんのアパートに着いた。

母ちゃんと都おばちゃんが生活している部屋である。六畳と四畳の台所のあるその部屋はキチンと整理されていた。

部屋の隅に“赤旗”新聞が十数部つみ重ねであった。本棚には、左翼思想の本が沢山並んでいた。都おばちゃんは、学芸大学の入学試験が終り、柏崎に帰っていた。


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