Un grand nombre d’enfants
(子だくさん)
さぁ、地図もない、辞書もない、ガイドもない、お金もない、でも夢と目標だけはある僕。
ちょっとカッコよく言ってみましたが、なんのこたぁない
「途方に暮れる無鉄砲なバカ」
です。地下鉄を追い出され、「う~ん・・・行くべきか戻るべきか。」
時間は午前10時、ホテル戻っても誰もいない、それにジャンヌ・ダルクのゆかりの地(と思われる場所)にも行きたい。
「え~と、地下鉄の駅5つ分だろ?金山→(当時の僕が一番よく利用してたのは名城線金山駅)東別院→上前津→矢場町→栄・・・金山から栄間か。バイト帰りに歩いたこともあるし、距離的には問題ないだろ。行くか。」
僕は歩いて目的地へ向かうことにしました。
と、歩くにもどっち方向か全くわからない。
日本では誰でもいいから通行人捕まえて道聞くんだけど、昨日の騒動(象牙色のフランス旅行 第3話参照)でちょっと弱気な僕。それに一人という心細さ(←自分で一人で動くと決めたクセに)から考えることはどんどんネガティブな方向へ(笑)
「男にしても女にしても若い連中に道聞くと、どっか連れていかれるかもしれんなぁ・・・、
となると老人か・・・でもジイサンも侮れないかなぁ・・・。
よっしゃバアサンならどっか連れてかれたとしてもケンカ勝てる!!
(←とても空手15年やってた人間の考えることじゃない)」

と、いうことで適当に大通りで人が多そうな方向(テキトーに歩いてるだけ)向かって歩き出します。途中、大きな公園とかあって何気なしに写真撮影。
まだ気持に余裕があります。
こんな写真撮ってどうすんだ、とも思ったんですけど何か写真とらなきゃ、という変な義務感から撮ってしまいました。
トコトコ歩いて、「何かさっきここ通ったぞ?(たぶんデジャヴだよね)」というのを何回か繰り返し、大通りへ。実はそこへ至る前にも何人かの人とはすれ違ったんですけど怖くて声かけれなかったんですよね。
で、大通りに出て、意を決して道歩いてるおばあさんに声をかけます。
「すいませ~ん」(←頑なに日本語です)
「???」
もちろん通じないので、仕方なく数少なく知っている英単語の中から絞り出し「Excuse me?」と声をかけなおしました(英語は高校3年間“2”で追試も受けてるし、大学受験も4段階マークシート方式200点満点中46点で落ちてます)。
おばあさん相変わらず「???」です。あ、そうかフランスはフランス語がメインで英語は「外国語」になるのか。今更そんなことに気づく僕。
でも声かけちゃったし、そんなことおかまいなしにジェスチャーで押し通す。
地下鉄路線図を出して、行きたい駅の場所を指でさして(どのみち英語伝わらないんだから日本語で話しても一緒だよな)「ここ行きたいんすけど~」と聞いてみる。
おばあさん、なにやら説明してくれてるんだけどごめん、意味がわからん。
熱心に説明してくれてるんだけどさっぱり意味がわからない。だんだん面倒くさくなってきた(昔からそうなんですよ。道聞いて、目的地までの道順が覚えきれなくなると、「あ、いいや」って感じで投げちゃう)。
我ながら失礼極まりない(反省しております)。
一通り説明してもらって、とりあえず最初に指さされた方へ歩く。交差点に出た。もうわからない。
記憶を辿り、交差点渡らずに右へ折れてみる・・・。
トコトコ歩いて、「何かさっきここ通ったぞ?(たぶんデジャヴだよね)」というのを何回か繰り返し、大通りへ(文章も多分デジャヴです)。
これを3回ぐらい繰り返して、「もう一回同じ場所に出たら、また人に聞こう」と思ってたら今度は違う道に出た。意識してさっきと同じ道を通ったつもりだったんだけどなぁ・・・なぜ?
ま、いいや。やっと迷路から脱出できたんだから(←迷路でも何でもなく勝手に迷ってたのは僕)などと思いつつ、「今頃みんな楽しく回ってんだろな~、いいなぁ。」などとつぶやきながら歩き続ける。
「でも、今回こんな経験して、一人で回ってるのは俺だけだろうな。寧ろ、俺は貴重な体験してるんだよ、これは。」
などと負け惜しみに近い(ムリヤリ)前向きなことも考えたり(←ただ単にグループ分けからあぶれただけだろうが)して、そろそろまた人に道を聞こうかなと思った。
丁度、前から犬の散歩中らしい60代後半ぐらいの「貴婦人(これがパリジェンヌってやつね)」が歩いてきた。すっごい上品そうで、人良さそう。
「この人、昔はすっごいキレイだったんだろなぁ~(←メチャメチャ失礼なヤツ)」などと思いながら「Excuse,me?」と声をかけてみる(今度はいきなり英語)。すると返事が返ってきた。
「おっ英語わかるの?」と嬉しくなり(コミュニケーションの真髄ですよね、これって。通じるというのは嬉しいし大事なこと)、続いて、「Can You Speak English?」と聞いてみる。
おばあさん指で小さく隙間を作り「Little」とジェスチャー。やった英語わかるらしい!!さっきと同じように路線図出して説明してみる。
同じように指で方向を指し示してくれてるんだけど、やっぱり覚えられない。僕自身は意識してなかったけど相当困った雰囲気出してたんでしょうね。
おばあさん、いきなりスタスタ歩き出したと思ったら後ろにいる僕に振り返りステキな笑顔を見せて待ってくれてる。
「お、?付いてこいってこと?」
おばあさん、犬の散歩ついでに
困ってた象牙色の珍獣も散歩に連れてく
ことになりました。
片言の英語で会話しながら10分ぐらいかなぁ一緒に歩いてました。
どうやら東京には行ったことがあるらしくて「you’re TOKYO?」と聞かれたので「No,NAGOYA」と答えると「I don’t Know」と答えられました。
そうだよね、名古屋なんて知らないよね・・・orz
交差点にぶつかり、どうやらここでお別れのようです。僕はこのまま横断歩道を渡ってまっすぐ行けばいいらしく、おばあさんは右へ曲がるみたい。
そして別れ際、「このまままっすぐだけど、いい?まっすぐ行き過ぎてもダメよ。ちょっと危ない地域になっちゃうから気をつけてね」(と、多分言ってた気がする)と僕に言い残し別れました。
そして横断歩道が赤信号だったので僕は信号が変わるのをまってました。
その横断歩道には小さな子供が二人信号待ちしてました。
小学生低学年ぐらいかな。二人とも女の子です。
何故か手に「窓拭き掃除グッズ(バケツとあのT字のゴムついたヤツ)」を持ってたのが印象的でした。
人を横目で見ながらヒソヒソ話していたりされると意外と言われてる本人は気づくじゃないですか。
子供たちが僕の方を見て、何かヒソヒソ話してます。
「こいつ何者?」とか言ってんだろうなぁ、とか考えてたら信号が変わりました。とにかく目的地行きたいのと、その子供たちから離れたくてスタスタ渡ります。
すると後ろからさっきの子供二人が奇声あげながら僕めがけて走ってくるんすよ。
雰囲気的には「遊んで遊んで」モード。
子供って「変わったもの」好きじゃないですか。好奇心旺盛だし。僕の風貌はそんな彼女たちの好奇心をくすぐったらしく、服引っ張って「ねぇ~遊んでよ~」攻撃です。
僕はどうしていいかわからず、とりあえず子供たちを振り払い、ダッシュで逃げました。
う~んオトナゲナイ。
「お兄ちゃん行くとこあって急いでるから、また今度ね(今度っていつだ?)」
と一応は断りはいれましたけど。
子供たちから逃げたはいいが、ますます道がわからない。
ふと気づくとどうやらそこは閑静な住宅街。小学校があったのを覚えてます。そういや今日は平日。さっきの子たち学校は?何で掃除道具?
もう完全に道に迷いました(というか地下鉄降りた時点で迷子だったけど)。
それでもブラブラ歩きながらふと腕時計で時間を見ると既に13時過ぎ。もう3時間も歩き続けてます(若い!!←いや、そうでなくて)。
ヨーロッパって古い街並みが残ってる場所だと中世の頃の石畳がそのままなんですよね。しかもデコボコでまともに歩くのが大変。で、僕はブーツだったんですよ。しかもヒールのあるかかとが木製のブーツ。だからもう足が痛くて痛くて。
歩き疲れちゃって立ち止まりました。そして我に返りました。
自分が迷子でホテルの電話番号もわからない、パスポートもホテルに置いたまま、自分がどこにいるのか場所も方向も方角もすべてわからない、というこの状況の危険さに、今頃気づきました。
もう一気にネガティブ感情がMAX
今はまだ明るいからいいけど暗くなったら・・・とか考えると「今から目的地向かってすぐ着いたとしても、すぐ帰らないといけない。それにタクシーは怖くて乗れないし(ぼったくられたり、どっか連れてかれそうだから←すごい偏見)」などと考えてたら答えが出ました
「そうだ、帰ろう」と。
足も限界、これ以上歩いても辿りつける気がしない。「帰宅モード」に切り替え、頭の中をジャンヌ・ダルクから「一番近い地下鉄の駅へ変更」しました。
さぁ、今度は地下鉄探して歩き回ります。
グルグル・・・トコトコ・・・足痛いのと悔しいのと不安との闘いです。
こういう時って日本大使館とか電話してみるといいのかなぁ、とか俺一人フランス置き去りになるのかなぁ(←そんなことあるわけがないんだけど)とか色々頭に浮かんでくるけど、全部マイナス思考ばかり。
それから2時間ぐらい歩きました。計5時間も歩いてます。昼飯も食ってないので腹減りすぎて目眩までしてきます。疲労も限界、俺、一体どうなるんだろう・・・と思ってたら、路傍に看板が。
なんと、この地域の地図看板!! これはラッキー!! 早速地図と今、自分がいる場所を確認し、地図と地形を確認します。そして、地図看板内に「地下鉄」マークを発見!!
「やった、帰れる!!」
僕は嬉しくてたまらなくて、今度は道に迷わないようにしっかり地図を頭に叩き込んで(大通りまで直進して左折するだけだったんだけどね)、地下鉄目指し、最後の力を振り絞ります。
5時間よく歩いたなぁ~人間の歩く速度が時速4kmていうから、俺20kmも歩いたのか・・・などとさっきまで全然余裕なかったくせに、こんなどーでもいい計算などをしつつ、そして駅発見!!
神は俺を見捨てなかった!!
おお、神様ありがとう!!
地下鉄の駅だ!!
ありがとう、本当にありがとう。
もう泣きそうでした。さっそく駅名確認して、路線図と路線の色を確認、ホテルに一番近い駅までの切符を買って、改札口を通ります。
帰れる、帰れる、帰れる、帰れる・・・頭の中いっぱいです。限界だったんでしょうね、ホント。
改札口を抜け、ホームまでの階段を下ります。すると・・・
あーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
と、ホームいっぱいに響き渡る声で僕を指さす子供がいます(あーなのかわかんないけどどう聞こえた。)。
そう、さっきの女の子たち。
しかも今度は2人じゃなくて20人ぐらいいる。
フリーズしました、僕。
頭の中、真っ白です。その子は後ろにいる仲間に声かけて何やら説明してます。
「ホラ、さっき言ってた珍獣だよ。ね、ウソじゃなかったでしょ。みんなで遊んでもらおうよ」(←多分こんな感じでしゃべってる)
その子が先頭になり、僕めがけて階段を駆け上がってきます。
それに釣られて、他の子供たちも奇声を上げながらいっせいに僕めがけて駆け上がってきます。
想像してみてください、20人ぐらいの子供が一斉に僕めがけて階段駆け上がってくる「地獄絵図」。
ホラーですよ。ホラー。
しかもブーツで5時間歩いてメシ食わず、もうフラフラ。やっとの思いで、地下鉄見つけて、今までの緊張感や集中力が切れて、解放感いっぱいのタイミングで、このハプニング。
駆け上がってくるのを見て、我に返り、逃げます。
逃げつつも、子供が何か見つけた時は万国共通のリアクションなんだなーと思いつつも、僕も階段を上がる。しかし、もう足はグダグダ。逃げ切れない、観念した僕は逆に、その「群れ」に向かっていきました。もう余裕なんて全くありません。
子供たちに囲まれて(昨日といい今日といいよく囲まれるなぁ)服を引っ張る子、足にしがみつく子、振り払い、力ずくで引き剥がし、電車に乗り込みます(そういやこのときにはテロの警戒解除されてたんすよね)。
そして電車に乗り込むと子供たちは諦めたようで、電車の中までは追ってきませんでした。
「勝った・・・」
まるで戦場から生還した兵士のようです。
車両の中から子供たちに「バイバイ」と手を振り、車両は動き始めました。
ホテルについたのは16時過ぎ。
部屋に戻るとメイドさんたちがベッドメイキングをやってくれてました。
もう寝たかったので僕はチップを渡し、「もういいですよ、ありがとう」と伝え(やっぱり日本語)、部屋から出てもらいました。
「ありがとうございました」と一礼し、扉を閉めて
「ふぅ~っ、よく帰ってこれたな、俺」
とつぶやき、そのままベッドへ倒れこみました。いやぁ~冒険した。