top of page

14/11/25

おばあちゃんからお姫さま

Image by Olia Gozha

9歳のときに、初めてあった人にからだの奥まで触れられてすごくこわくて痛かった。


ナイフを顔に突きつけられたこと、気づかないうちに相手の人の服とわたしの髪がクリップでとめられていたこと、口に服を入れると痛くなくなるとうそをつかれて助けを呼ぶ声を出せなくなったこと。

女の子なら誰一人としてあってほしくない経験だ。


わたしの夢は、おやつをつくるお母さんとお姫さまだったけど、このときから、女らしくしないで早くおばあちゃんになって死ぬことが加わった。


毎日毎日そのたった一日のことを思い出してこわいし痛かった。

そして相手の人の人生を思った。小さな女の子に手を出すなんて愛されて育たなかったのかも。


あるとき、いつかは相手の人を許してあげたいなぁと思っていることに気づいた。

少しこころが軽くなった。

そして、もういいよ、と許せる日が来た。


それなのに、こわいし痛いのはどうしてだろう?と思いながらすごした。


42歳のときに、キッチンにいると、左となりに子どものころのわたしが立った。

おかしなこと言ってるって思うでしょ?

でもね、このとき本当にいたの。

そして、わたしは子どものころからわたしに「後でね。」って言ってきたことを思い出した。満足したり楽しむのは後でねって。

ずっと待っててくれたんだ。

「まだ?」ってきかれたような気がした。


そして今年44歳になった。

誕生日には、アクセサリーをつけたりスカートはいたり女らしいファッションをしようと小さな決意をしたのに、髪を短く切ったりGパンはいてばかりで女らしさをかくすようなことばかりしてる。

どうしちゃったんだろうと思った。


それは、女らしくしないで早くおばあちゃんになって死ぬ夢を叶えようとしてるんだと思い当たった。

どうして相手の人を許したのにまだこわいし痛いんだろう?

そんな疑問もあった。


女らしさを楽しんでる女性と知り合って会いに行った。

そしたら帰りにこころのふたがぱかっと開いて涙があふれてきた。

電車の中なのに。

もう少し待ってねと願うけど涙は止まらない。

駅を出て車に乗って思いきり泣いた。


そうしたら、こどものころのわたしが出てきた。

キッチンで会った子。

ぎゅーっとだきしめて、どうしてほしいの?ってきいたら

「こわくて痛い思いをした悲しい日の前も後も同じわたしなの。かわらずよりそってほしい。」

「もし また 同じことがあってもずっと一緒にいてほしい。」

そう言ったの。


こどものころのわたしが言ったのと同じことを口にしたら、こわさと痛みがなくなったの。


どうしてあのときあの場所に行ったの?って責めながらずっと待たせてきちゃった。

わたしを傷つけた相手を許すより、わたしを許すことにずっと長い時間が必要だった。


この日を境にだんだん記憶が薄らいで、相手の人の顔を忘れ、声がぼんやりし、季節がいつだったかおぼろげになってきた。


20歳のときと、25歳のときと、28歳のときと3回死に向かったけど、結局生きてた。

今は生きなきゃと思う。


もう、女らしさをなくして早くおばあちゃんになって死ぬ夢は叶えなくてよくなった。


おやつをつくるお母さんになる夢は、9歳のときからお菓子づくりを続けて、3人のこどものお母さんになって叶えられた。


これからは、お姫さまになる夢にまっすぐに向かっていける。

明日、愛の魔法レッスンを受けるよ。

愛にあふれるお姫さまになって愛を伝えていくよ。

すべては自分からはじめることができるよって。






←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page