
モデル: micha
えだまめ「「インターネットにいるカメラマンって、女の子を廃墟とか路地裏とか、暗いところで撮っているのが多いよね」」
友人「「みんなセーラー服を着て、悲しそうな顔で、露出をしたりしている」」
インターネットの闇
そんな話をしたのは、今年の4月頃だったと思う。
私はインターネット、特にツイッター、さらに言うとサブカルが大好きで、いつもパソコンにかじりついていた。
その中でも特に「被写体」という活動をしている、いわば個人モデルのような子達が大好きで、その子達の写真を見るためだけのアカウントを作って、カメラマンに撮られる姿や、自撮りなど、色々な表情を見ることが私の大部分を占める趣味だった。

(ツイッターにかじりつく私の写真)
そんな頃、同じくインターネットで自撮りを載せている友人と、ある会話になった。
友人「「モデル募集をして応募してきた女の子に、撮影をいいことにいやらしいことをしようとする人がいるらしい」」
友人「「それで被害を受けて傷ついて、活動を辞めてしまった子もいる」」
友人「「私にもおそらくそういう目的としか思えない撮影依頼がきたことがある」」
私はひたすらショックだった。
私の大好きだったあの子もあの子も、もしかしたらそんなカメラマンのせいでインターネットに居られなくなってしまったのか?
可愛くてキラキラしているあの子たちは、そうやって危険と隣合わせでモデル活動をしているのか?
だったら、そんな彼女たちを守るカメラマンに私はなろう。
決意をした瞬間だった。
幸い趣味程度とは言え、16歳からカメラを続けていた私の経験年数だけは中々のものだったし、何度か友達にモデルを頼んでポートレートを撮ったこともあった。
そのレベルで広いインターネットの世界で通用するかどうか、そんなことも考えることもなく、勢いだけで、今まで個人モデルの子達をフォローしていたTwitterアカウントを写真撮影用に編集した。
作品を載せるためのHPに載せるための最初のモデルは、その話をした友達に頼んだ。
そうして、私の、カメラマンとしてのたった一人の戦いが始まった。

4月も終わる頃、「Girl makes Girl」という写真のテーマを、私はTwitterに作った。
その時の私のフォロワーはたった二人。
相手はフォロワー4桁超えのカメラマン達。
「ここで何かを起こさなきゃ、モデル活動をする女の子達を守れない」
その強い気持ちだけで、ミラーレスの一眼レフと買い足した高価なレンズだけを持って、私はインターネットに「カメラマン」として誕生した。
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Girl makes Girl
「女の子のかわいいって、なんだろう?」
そのアンテナを誰よりも張り巡らせているのは、他でもない、女の子達自身です。
誰もが一度は憧れた、自分だけの「大好きなもの」が詰まった世界
企画「Girl makes Girl」は、そんな夢を少しでも形にしたくて計画しました。
撮られる女の子のための、安心の約束
・撮ったお写真は、撮影後一緒に確認して頂き、載せていいもの、そうでないものは削除します。
・HPやTwitterでの公開以外の用途で使用する際は、モデルさん一人一人に必ず御連絡差し上げます。
・肌の露出をするようなお写真は一切撮りません。
・撮影現場は、女性しかいません。
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トライ&エラーの繰り返し
5月の中旬、最初にモデルをしてくれた友達のおかげで、公募していたモデルの募集もぽつぽつ来始めていた。
みんな採用しよう。まずは沢山の人にこの企画を知ってもらいたい。
当時デザイン会社で働いていた私の土日は、撮影の予定で埋まっていった。
胸がいっぱいになるほどうれしかった。

けれど、私のフォロワーは一向に増えなかった。
二桁のまま大して変動することもなく、まさに「自己満足」の塊に見えた。
考え込んだ私は、無謀な行動に出ることにした。
えだまめ「「撮らせてもらえるかわからないけど、オファーだけでもしてみよう!」」
ダメ元で、複数のファンだった個人モデルの子達に、企画のコンセプトと、写真を撮らせてほしいという内容のリプライを送った。
殆どの女の子は当たり前だけど相手にはしてもらえなかった。けれど、二人だけ、興味を持ってくれた女の子がいた。
「あの二人を撮れるなんて!!」
図々しくTwitterでの宣伝も頼みこみ、私はアイドルにプライベートで会いにいくような気持ちで、電車に乗った。誇らしいようで、不安で、そしてプレッシャーで手汗まみれの手を必死に拭きながらシャッターを切った。
休憩の時間には、今のインターネットにいるカメラマンの写真の、「折角可愛い女の子をあえて汚いところで撮ることに共感できなかったこと」や、「私は絶対モデルさんの思う『可愛い』を形にするような写真を撮りたい」という気持ちを精一杯伝えた。
撮影をした写真を取り込み、色合いを調整し、その日の内にモデルさん達にデータを渡した。
どんな反応が返ってくるか、不安でしょうがなかった。
Twitterに投稿する指は震えていたと思う。
「すごく可愛くとってもらえました!カメラマンさんはえだまめさんです!」
「これがお気に入りの一枚!カメラマンはえだまめさんです」
彼女たちのたった一言が、私の人生を変えた。
見たことないくらい沢山のお気に入りの数。どうかしてしまったんじゃなかいかというペースで増えるフォロワー。
その二人とは現在友人としてプライベートでも仲良くさせてもらっているけれど、今でも感謝の気持ちしかない。あの時二人が私を「認めてくれた」おかげで、私はここまでこれたんだよ。

モデル:メカタンキルキルユー
そこからはアイディア出しとの戦いだった。
次の撮影するモデルさんは妖精をテーマにして、井の頭公園で撮ろう。
その次のモデルさんは制服で、学生風にして、都会で撮ろう。
小道具は全部自分一人で用意した。
その頃には、2D×3Dという企画で、お皿をもっている風なポーズをしたモデルさんの写真に後からイラストでケーキを持たせたり、小道具として持ってもらった水鉄砲から水を飛ばすイラストを足したりしていた。
とにかく、全部一人でやった。
その頃から、撮影に協力をしてくれる人が出てくるようになった。
衣装のレンタルをしてくれる人、モデルつながりで次のモデルを紹介してくれる人、宣伝をたくさんしてくれる人
私一人の戦いに賛同者が出てきてくれたのだ。このままいけるところまで行ってみたい。
大規模撮影という、夢
私は、大規模撮影と表して、11人のモデルを集めて、今の私ではとうてい借りられそうにもない値段のスタジオを借りて、女の子同士のパーティーをテーマとした「Girls Party」を8月に企画した。
もちろんお金もない。大してモデルさんの知り合いも居ない。スタジオ代割り勘でモデルもいない中、私はどうするつもりなんだろう。不安だった。
すると、今まで撮影をさせてもらっていたモデルさんから他のモデルさんへと話が行き、芋づる式のように繋がって、あっという間にモデルさんが11人集まったのだ。
名前だけは知っている、有名なツイッターのモデルさんがそこにはたくさんいた。
中には、私の写真が好きだったといってくれた人もいた。
私が決意を固めたあの日夢見ていた光景が、スタジオにあったのだ。
撮影後、モデルの皆が、ツイッターで可愛くとって貰えたとツイートしてくれた。
涙があふれて、お礼のリプライを飛ばす作業は何日も続いた。企画「Girls Party」は成功したのだ。

(最後の方で撮ったので、全員の集合写真がありませんでした。)
半年後
そこから時間はかなり飛ぶ。
11月中旬の現在の私の話をしたいと思う。
今の私は、素人の無償で写真を撮る、「自称」カメラマンから「プロカメラマン」となった。
まだまだプロとしては未熟だが、金銭が発生するような撮影にも呼ばれるようになり、実験的に作った自分の撮影した作品を売るWEBショップも上手くいき、それと並行して、兼業していたイラストレーターとデザイナーの仕事も安定してきたことから、会社勤めではなく、フリーランスとして暮らすことを選んだ。
また、同時に写真を撮っていく中で、
「写真を撮られてインターネットに載せられるということは、それを保存した誰かが何に使うかわからないということ、自分の顔をどんな情報も永遠に残るインターネットに残すこと」
というハイリスクを背負っていることに気づき、写真を撮らせて貰うなら自分自身もコンテンツとしてインターネットに顔を載せなければフェアではないという考えに至った。
私は積極的に自分の顔や、おふざけをした写真を今、Twitterに載せている。


(マジで落ちるところでした)
インターネットは、怖い。
モデルさんの写真をわざわざリツイートしてまで嫌味を言う人、
悪意ありきで撮影依頼をモデルさんにするカメラマン
何の疑いもなく、モデルとして選ばれたことにただ嬉しいという気持ちだけで依頼を受け、傷つく女の子。
そんなものが、まだまだ溢れている。
多分、今の私じゃ大声で「そんなこと間違ってる」と言って、インターネットの流れを変えるだけの力はまだない。だからこそ、この気持ちを一人でも多くの人に見てもらいたいと思って、この文章を書くことを決めた。
私は、モデルさんを守りたい。
インターネットで傷つき消えていってしまった、モデル活動を辞めてしまった、大好きだったTwitterの子達が、いつか「えだまめにだったら撮られてもいいかな」と思って戻ってきてくれることを待っている。
「女の子の可愛いは女の子にしか作れない」
23歳の、女の子とは言えない歳かもしれない私がテーマとして掲げたこのキャッチコピーを変えることは、おそらく今後一生ないだろう。
廃墟でモデルさんを撮ったり、緊縛をしたり、露出をさせた写真を撮るカメラマンさんを私は否定する気はない。
そういう需要があることも知っているし、モデルさんも納得していてそれが成り立っているなら、そういうものだって広いインターネットなのだから、あってもいいと思う。
表現の仕方は自由だ。
傷つく人がいないのなら。
最後に
この私の写真に興味があったら、ぜひ作品集のTumblrを見て頂いたり、Twitterもフォローして頂けたら幸いです。
その中には、今まで半年間、私がやってきたことがすべて載っています。
そしてもしも、私という人間に興味があったら連絡を下さい。
依頼でも、質問でも、なんでも構いません。
これで私のお話は終わりです。
インターネットでこの文章を見てくれているあなたへ
カメラマン えだまめより

作品の一部

モデル:凪紗

モデル:佐藤椿

