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14/10/29

揺れる

Image by Olia Gozha

規則正しい生活を心掛けようと思っていても、気づけば生活リズムがめちゃくちゃで、寝ようと思っても眠れない。本を読んだりネットサーフィンをしてダラダラと時間を過ごしてるうちに頭が冴えてしまってベッドに入ったものの眠れない。多分ブルーライトのせいだけじゃない。

明け方近くになってきていよいよやばいよ、明日も一日潰れちまうよ、ってこと、僕はよくあります。実は今夜はまさにそういう状態でした。眠いのに眠れないのです。

仕事上、朝起きなくちゃいけない時間があるわけではないし、特別予定がなければ誰に迷惑をかけるわけでもないので、普段ならそのまま朝が来るのを待って寝てしまうんですけど、今日は昼から予定があることもあり、いつもと少し違う作戦を変えて、眠れないなら、とことん起きてやることにしました。

最近になって自分自身について認めざるを得ないことは、どうやら僕の家系にはワーカホリックの血が流れているようで、僕は時間がダラダラと流れているとどうもソワソワしてしまうんです。ストイックにやってる方がたぶん心は安定するんですね。

(スーパー)サラリーマンである父は毎日夜中まで仕事をしていて、週末以外ほとんど顔を合わせることはなく、こんな風に働き詰めの人生を送るのは嫌だなぁと、子供心に思っていました。そしてどうやら父方の祖父の働き方も度が過ぎていたようです。(もちろん時代もあると思います。)

そんな父の背中を見て、僕は自分の好きなことを自由にやろうと自由業をやることにしたのですが、今になってきっと父は働かされていたのではなくて、働きたくて働いていたんだろうな、と思うようになりました。(もちろんそうでないこともあったと思うけど、好きじゃなければあんなに働き続けられない)

時刻は午前4時。まずベッドから起きて重たい瞼を擦りながら風呂を掃除しました。風呂をセットします。この文章を書き終わったらひと風呂浴びるつもりです。それから熱いコーヒーを煎れてパソコンを開きブルーススプリングスティーンのワーキング・オン・ア・ドリームのアルバムを聴きながらこの文章を書くことにしました。

自由業をやっていて難しいなと思うのは、ゴールを自分で設定し、その気持ちを維持し、続けなければいけないということです。あまりゴールが明確でないとうまく物事を進めることができず、「僕はいったい何をしているのか」という自問自答が付きまといます。先ほどストイックにやれば心が安定すると描きましたが、うまく力が発揮できないと心が揺れるのです。

そういう意味で、僕の心はここ何年ものあいだずっと揺れ続けていた気がします。僕はこの自分の感情をうまく表現できなかったのですが、この「揺れる」という言葉には僕の言いたいことを代弁してくれるような気がしています。ちなみに「揺れる」という言葉で僕の「揺れる」という曲がありますので、もし良かったら聴いてみてください。1年ほど前に作った曲でずっと放置していたのですが、久々に聴くと、この「揺れる」という言葉のニュアンスが僕の中でよりはっきりしたものになり、少しメロディと歌詞に手を加えてきちんと形にしたいと思える曲です。いずれ形にします。

歳を重ねることで、ひとつ成長できたのかもしれないと思うのは、僕の「心が揺れている」ということを自覚できたことなのかな、と思います。もしかしたら自由であるということの初期段階はそういうことなのかもしれない。

何をしてもいいと言われたら、心は揺れる。でも例えばドミナントがトニックを求めるように心は安定を求めるもの。一般的に家庭やお金あるいはセックスというものはそういうトニック的な役割を果たしているように思います。

そしてそれを得るとまた心の揺れ=自由を求め、僕らは彷徨う。その振れ幅は人それぞれだとしても繰り返しなのかもしれません。

でもその繰り返しの中で僕は自由の第2段階に進んでいきたい。それは一時的な心の揺れに左右されて根無し草として生きていくのではなくて、自らの意志で大地の上に何かを築き上げていく自由。何もないところに何かを積み上げていく。それは作品だったり、あるいは家族だったりするのかもしれない。こういう文章の切れ端もそういうもののひとつなのかもしれない。

ヘミングウェイの『日はまた昇る』の中に出てくる自由奔放な女、ブレットはすごく魅力的で素晴らしいんだけど、最後に彼女はこう言います。「性悪な女になるまいと決めたので、なんだか気分がいいの・・・こういう気持って、神様の代わりにあたしたちがもっているものじゃないかしら。」

この本を読んでない人にはわかりずらくて申し訳ないんだけど(ぜひ読んでください)この瞬間、きっと彼女はひとつの生き方を体得した。そして人それぞれが体得するオリジナルな「生き方」こそが自由の第2段階に必要な土台なんじゃないかと僕は思います。

いつのまにか夜がすっかりと明けて、朝日が眩しくなってきた。どうやら僕の目論みは成功したようです。またひとつ文章を書くことができたし、無理に寝るよりも心が休まった。

心が揺れた分だけそこには何かを積み上げる余白が出来て、そこに生き方を少しずつ積み上げていって、でも、きっとどこかでまたそれを壊したくなったりもして、また心は揺れて、そして積み上げて、ぶっ壊して・・・を繰り返していくんだろうと思います。

そういう足跡は音楽として、文章として、あるいは人との繫がりとして、残していけたらと思う。書きはじめたら随分時間が経ってしまった。今からお風呂に入って来ます。お湯が冷めてないことを祈りながら。

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