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14/10/28

俺とマチュピチュと身勝手な美容師

Image by Olia Gozha

 


お前身勝手すぎねぇ?


人生が平凡な男にも

時折ぶっ飛んだ瞬間ってのは訪れる

それは突然に




俺の担当の美容師は2代目

初代の男は川と自然を愛する男だった

その男が俺の行きつけの美容院を辞め

独立することになった。

そこで美容院から紹介されたのが2代目の女美容師だった

俺の担当になる前から

2代目は俺のことを知っていたらしい

(というかこの人は俺と初代の話に聞き耳を立てていた)

初代は俺の性格を知っているため

2代目に話をするように促してはいたようだが

2代目は、でしゃばるのは…といい

拒んでいるようだった

初代がいなくなり気兼ねする必要はなくなったのか

あの人は俺にコンタクトを取ってきた。

電話をした俺に

美容院側が妙に押す

こんな感じだ

「カットを頼みたいが…I(初代)は退社してたよな。だれか適当に見繕ってくれるか?」

インフォM「でしたら是非S(2代目)をお試しいただくのはいかがでしょうか?ほかの方も紹介は出来ますが、技量的にはSが一押しですが」

「…Mさんいつものクール振りじゃなくグイグイ押すね?なんかあった?」

インフォM「い…いえそのようなことは…Y様Sでよろしいでしょうか?」

「わーったよ…なんか魂胆すすけてるけどあえて誘いに乗ってやるよ。」


まぁ腕で語ってもらおう

美容師は髪を切るのが仕事だ

腕さえよければ文句はない

さて当日

Sがやってきた

思ってたよかデカイ

上背下手したら俺よかあるんじゃね?

俺が172だがそれよりでかいってこれ

「Y様はじめましてSです。本日はどのように」

「短けりゃいい後は任せる。」

「…かしこまりました」

「悪いな。髪は門外漢でね。あーしてくれこーしてくれの注文つけるほど詳しくねーのよ。」


まぁ興味がないものなんてこんなものだ

Sが髪を切り始める

俺の髪は剛毛で、目が狂っているため

腕が悪い美容師が切ると髪を引っ張るため痛い

その点Sは合格点と言える「痛くない散髪」が出来る

(うん、腕はいい合格だな)

俺はそう思いながら散髪の様子を見ていた

だがSの表情が暗い

もう少し突っ込むと

これじゃない感丸出しだ。


「どうかしたのか?」

「いえ…」

「当ててやろうか?「私の求めてるのはこれじゃない」って思ってんだろ?」

「…なんでわかったんですか?」

「俺を見くびりすぎだ」


Sは黙っている俺が気に入らなかったらしい。

Sは俺とIの会話を聞いて俺がおしゃべりな奴だと思ったのだろう。

だけど俺はそうじゃない。

まず初対面の人間に何かのきっかけがない限り

話仕掛けることはないのだ。

Sは俺との会話を求めているが、いざ切り出したら

俺が黙ってしまったのが不安だったんだろう。


「俺がおしゃべり好きで、ただ勝手にしゃべってるタイプだと思ったのか?俺の場合振られた話題に答えるだけだぜ」

「そーだったんですか?」

「ああそれが俺のスタイルなのさんで何が聞きたい?」

いろいろ聞きたいことがあったのだろう

色々聞いて来る

とりあえず答えられるものは答え

わからないものは保留とする

「私マチュピチュにいきたいんですがYさんどうやったらいけますか?」

「はっ?マチュピチュ?(天空都市だぞ。あんな5000M級の山の上にある都市に行きたいってどっかぶっ飛んでんじゃねーの?)俺も知らん。まぁ調べておく」

「へぇーYさんでも知らないことがあるんですね。」

あるよ普通に

よっぽど秘境にあこがれてなきゃ

いこうなんて思わないよあんなとこ…

そもそも好きだと言ってるのはいいけど

にわかでミーハーな人間なのか?

行けるのはワイナピチュだぞ。

(マチュピチュは世界遺産指定のため学術研究・保存のため特別な許可がないとは入れない。)

俺はその後も質問攻めと、他愛もない話で忙殺されることになる。

あれ?俺客だよな。

何で美容師の機嫌取りなんだ普通逆じゃね?


うん…腕はいいけど

なんか疲れた。

会計を行う。

ここの美容室は

散髪をした美容師がお見送りに来るのが通例だ。

「(会計を済ませて帰ろうとする)んじゃいつもどおりチャージで」

「Yさんじゃあ次回は○月○日に来て下さい。」

「いや…待て。散髪の日取りくらい俺が決めるわ」

「定期的に髪のメンテナンスしたいですし話も面白かったですし」

「おかしいだろ?散髪は髪の伸び具合と俺の気分だっての」

「ええですので、○月○日でお待ちしております。」

「話聞けよ…」




話を聞かない身勝手な美容師である。

俺は店を出た

これがたかが散髪をするだけで

波乱が起きる

嵐を呼ぶSとの出会いである。


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