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14/10/13

ニュースフィードに流れる愛する犬との大切な時間

Image by Olia Gozha

ニュースフィードにはいつも誰かの犬の写真が流れている。


そんな投稿を見る度に思い出すことがある。


1度や2度ではない。必ず毎回である。


私も、一匹だけ犬を買っていた。



過去形。


長い間付き合った彼女もまた犬を飼って

いる。



犬といえども、立派な家族に一員。

いっしょの家で、楽しい時間を過ごしたり、一緒にごはんを食べたり、じゃれあったり。

簡単な言葉くらいなら、ちゃあんと理解している。

人間が落ち込んでいるときは、だまってそっと背中にすりよってきたりしてくれる。

寝るときは大好きなお父さんといっしょ。

大嫌いな散歩もお父さんとなら喜んで出かけていく。

散歩が嫌いな犬なんているのか。


いい子にしていれば、だいすきな鶏のささみジャーキーをもらえることを知っている。

知らない人を見ると怖くて吠えるのを止めない臆病さん。


名前は、フォルテシモ。

彼女からは、愛情たっぷりにテシモちゃんやテシちゃんなんて呼ばれてる。

お母さんからはフォーちゃん、お父さんからはフォルちゃん、お兄ちゃんはフォルって、みんなそれぞれに呼び方が違うようだ。


2011年5月のとある木曜日のこと。

足を投げ出して、起き上がれずぐったりしたままの状態。

行きつけの病院に毎日通う日々が続きました。

先生からは、つらいアドバイスをもらうことに。

「治療をするのも、入院するのもおすすめしません。あと数日、安心できる場所で、
家族と大切な時間を過ごされてはいかがですか。

僕もそのことを聞いて胸が締め付けられた。


体調が悪化した日、仕事を早く切り上げたお父さんを駅まで迎えに、お母さんがワンちゃんを一人にして、家を少しの間離れた時のことだ。


お母さんの心情は少しでもはやく大好きなお父さんのそばで安心して、苦しみを和らげてあげようという一心だったと思うんだ。

急いで家に戻ってくる。


そこでさっきまで横になっていたはずなのに、姿が見当たらない。

廊下

リビング


キッチン

2階の寝室

家中を探した。 

フォルテシモ、脱衣所に、洗濯するはずだったお父さんの匂いのするワイシャツの上で、横になって苦しそうにしていた。



ずっとリビングから動けなくて、立てなくて、息するのもままならない辛い状態だったのに。




少しでもだいすきな匂いを求めて。



どれだけこの子が、家族に愛されていたかを、おわかりいただけますでしょうか。





ホームセンタでまだちっちゃかた頃、段ボールの中にいたところを、お父さんに拾われました。



一人にされるのは、きっと小さい頃、飼い主に捨てられたことがトラウマになっているようで、いつもすごく悲しい顔をするそうです。



でも、この子は、世界で一番の家族に拾われたのです。



こんなに愛されている犬を、私は他に知りません。





日曜日の朝、家族に見守られながら、息を引き取りました。




僕にとってもあまりにも悲しすぎる出来事でした。



その何倍も、想像できないくらい、家族は悲しみました。

 何年も経った今もその時の詳しいことは彼女の口からは聞いていません。



私もまた、愛する犬を、何年か前に亡くしています。



今でもその頃のこと、

力いっぱい引っ張られるリールの感覚、

くーんという鳴き声、

抱きしめたときの温度、

長い茶色の毛並み、

躰を伏せて遠くからこちらを見ていた黒い目、

いつも膝に乗せてくる前足の立てた爪、

顔を近づけた時の濡れた鼻の感触、

僕の頬をなめた時のくすぐったさ、

思い切り駆け寄ってくる姿、、、




大切に大切にしまってあった、ちゃんとふたをして、これ以上悲しまなくて済むようにと、しっかり鍵をかけておいたつもりでした。


そんな中から溢れ出てきた想いとリンクして、息が詰まりそうです。




ありふれた言葉かもしれませんが、きっとこの子は幸せだったと思います。



たくさんの愛を受けて、たくさん甘やかされて。





犬を飼うということは、とても素晴らしいことです。


こんなにも人を幸せにしてくれる。



犬もまた、人間に愛を与えてくれます。



私にとっても、私の家族にとっても、愛犬と過ごした時間というのは、何事にも変えられない貴重な時間でした。




叶うことならば、もう一度温かいからだを抱きしめたい。



もっと愛してあげたかった、甘やかしてあげたかった。

想いは募ります。



今日も、愛する後悔のない人生を、精一杯生きよう。





僕がニュースフィードを見て思い出すのは2匹のワンちゃんとの大切な時間だ。


そして投稿されている誰かのかわいいワンちゃんの写真を見る度に、「どうか、愛するワンちゃんと大切な時間を過ごしてください」と、少し微笑みながら、静かに心の中だけで祈るのだ。




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