top of page

14/9/20

父が暴れて、包丁を持ち出し、家の前にパトカーが五台止まった話。

Image by Olia Gozha

機能不全家族だった

 普段の言動からして母への憎しみがつのっていることは明らかだった。「このクソ女!」と叫んでいたし、喧嘩もよくしていた。私と姉は、家族のいろいろな不和からつらい思いをすることを余儀なくされ、子供時代、青春時代を過ごさざるを得なかった。


 その日、父は酔っ払って帰ってきた。明らかに泥酔していた。

 「ふー!ふー!」とよく言葉にならないことを言っていた。だが、母に対して、とても敵意があることは分かった、かばんで叩こうとした。母が「やめて!」といったが、やめなかった。私はもはや、絶望的なこの家族関係は、もうどうにもなっていいという思いから傍観していた。

 父が包丁を持ち出してきた。母は洗面所に閉じこもった。父は「殺してやる!!」と怒鳴りながら、扉をけったり、包丁で扉を刺したりしていた。今でも扉の傷は残っている。

 こんな家族嫌だ。そう思い。どうなってもいいと思い、その場から逃げた。最寄りのネットカフェに行った。

 祖母から、電話があった。姉は全く帰ってこないのだが、偶然帰ってきていたようで、警察を呼んだようだった。私はそのままネットカフェに滞在した。


決着が着く

 パトカーが五台ほどやってきて、父は警察官を見ると、「お疲れ様です」といったそうだ。父の殺意は面子には勝てなかったようだ。一応取り調べということで、簡単に話を聞いて、開放されたらしい。

 母も、周りの住人にどう思われているかばかりを気にしていた。そういう家族だ。嫌だ。


 その日は、家に帰らずネットカフェで過ごした。精算の時私と母は手持ちのお金がなかったので、姉に払ってもらった。このような時も、お金を払わなければならないなんて、なんて冷たい社会なのだろうと。とても強く思った。


 父は落ち着いたようだった。しかし、またなにかやらかすかわからないということで、包丁は隠してしまった。その後数年間、皮を剥くような果物包丁で、料理をせざるを得なかった。


<了>


HP

http://underthesky.info


note.mu

https://note.mu/underthesky

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

忘れられない授業の話(1)

概要小4の時に起こった授業の一場面の話です。自分が正しいと思ったとき、その自信を保つことの難しさと、重要さ、そして「正しい」事以外に人間はど...

~リストラの舞台裏~ 「私はこれで、部下を辞めさせました」 1

2008年秋。当時わたしは、部門のマネージャーという重責を担っていた。部門に在籍しているのは、正社員・契約社員を含めて約200名。全社員で1...

強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話

学校よりもクリエイティブな1日にできるなら無理に行かなくても良い。その後、本当に学校に行かなくなり大検制度を使って京大に放り込まれた3兄弟は...

テック系ギークはデザイン女子と結婚すべき論

「40代の既婚率は20%以下です。これは問題だ。」というのが新卒で就職した大手SI屋さんの人事部長の言葉です。初めての事業報告会で、4000...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

bottom of page