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14/9/17

バイバイ(4~5歳)

Image by Olia Gozha

母がいなくなって分かったこと。

それは、『僕たちは、母に父の暴力から守られていた』ということ。

父と一緒に暮らし始めて1ヵ月もしない位から、父の暴力…虐待が始まりました。
日常の些細なことで、いちいち叩いてくる父。
叩かれるのが嫌だった僕たちは、父の顔色をいつも伺いながら生活していました。

優しかった母はもういません。

親戚もほぼいない僕たちを助けてくれる大人は一人としていません。

そして、事件は起きました。

その日の夜ご飯はコンビニの弁当。
弟は嫌いな食べ物があったのか、弁当を少し残してゴミ箱に捨てました。

父に内緒です。食べ物を捨てたことがバレたら叩かれるからです。


ゴミ箱に捨てた弁当は父にあっさりと見つかってしまいました。
それに対して父は激怒し、いつものごとく父の暴力が、弟に向けて始まりました。

『ごめんなさい…。』と泣き叫ぶ弟。
しかし父の殴る手は止まるどころか、激しさ増す一方。
なんか…いつもより長い時間叩かれている…?


殴られすぎてぼ~っとしている弟を父は風呂場へと連れて行きました。
『ここで反省してろ!この野郎!!』
しばらくしてそんな怒鳴り声。

弟は…弟は風呂場でなにされているんだろう?

恐怖に怯える僕は、風呂場に行くことができません。
僕も叩かれると思ったからです。

しばらくすると、風呂場から聞こえていた弟の

『ごめんなさい!』の声がピタリと止みました。
息を切らして戻ってきた父。そこに弟の姿はありません。

『さっさと飯食え!』
僕にそう怒鳴る父。

そして、数十分後

『風呂場からアイツを連れてこい!』と父に言われました。
アイツ…とはもちろん弟のこと。

僕は急いで風呂場へ向かいました。

風呂場の扉を恐るおそる開けました。
あれ?弟がいない!?

浴槽はフタがしまっていて、洗濯カゴと椅子が乗っています。
えっ…と思った僕は、そっと浴槽のフタを開けてみました。

お湯の入った浴槽に中には、
意識のない弟がうつ伏せのような形で浮かんでいました。

声をかけてももちろん返事はありません。


『お父さん…弟が起きないよ…ねぇ!助けてよ!!』
泣きながら僕は、父にそう言いました。

父はすぐに救急車を呼び人工呼吸を始めました。

人工呼吸によって床中に弟の吐き出した食べ物が散乱しました。

でも父は人工呼吸を続けました。

弟は目を覚ましません。


救急車を待ちきれない僕は外に出て泣きながら救急車を待ちました。

早く…早く…!


到着した救急隊員に僕は泣きじゃくりながら大声で言いました。

『ねぇ!絶対に助けてね!絶対に助けてね!!』


しかし、弟は二度と目を覚ますことはありませんでした。

泣きながら僕は床に崩れ落ちました。

なんで…なんで…!

 
しばらくして警察の人が来ました。
事情を聞かれる父は、何かを必死に説明していました。
そして警察の人は帰っていきました。

そこから後のことはあまり覚えていません。


分かっていることは、弟は死んだということ。

そして弟が亡くなった翌日からはいつも通りの日常だったこと。


人殺しをしたの父はなぜ逮捕されなかったのだろう?


数日後、弟の葬儀がありました。

火葬場でみた弟の骨を見て、僕は大きな声で泣いたことを覚えています。
本当に…本当にお別れなんだね…と思ったからだと思います。


お母さんも弟もいなくなった僕は一人ぼっちになってしまいました。


弟が亡くなってしばらくして僕は、円形脱毛症により
髪の毛が全て抜け落ちてしまいました。

地獄のような日々はまだまだ続いていくのです。

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Image by Jukka Aalho

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