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14/9/5

オトンの話。

Image by Olia Gozha

オトンは4年前に死んだ


わたしはオトンと喧嘩していた

何でかは忘れたけど何日も口をきいていなかった

わたしはオトンを避けていた


当時高校生のわたし

思春期によくあるそれだと思う



オトンのことは嫌いだった

頑固ですぐ怒鳴る怖いオトン



その夜わたしは家でテレビを見ていた

当時のバイト先がファミレスでテレビでそのファミレスの情報が流れていたことも憶えてる

わたしはテレビの情報に口を出しながらなんでもない普通の平日の夜を過ごしてたんだ




電話がなった




丁度お風呂から出たオカンが電話にでた



電話を切ったオカン

「パパが病院運ばれたらしいから行ってくる」



心配そうだった



けど、気はしっかりしていた



オトンは糖尿病持ちで何度か入院していた


だからわたしは今回もその程度だと思って気にしてなかった


病院に向かったオカンとお姉をよそに

わたしは部屋に引きこもって携帯いじり


しばらくしていきなり部屋のドアがあいた


お兄だった


「オトンが死んだ」

そう言った


言葉が出なかった

何も言えなかった


家族でオトンが待つ病院へ向かった


オトンの会社の人が既にいた

挨拶をする余裕もなかった


病院の入り口には先に病院に向かったお姉がいた


わたし達を見て無言で歩きだす

わたし達はそれに無言でついていく


お姉の目は散々泣いた後だった


オトンのいる部屋についた

オトンの眠るベッドが見えた

わかってるけどそこで眠るのがオトンじゃないことをまだどこかで期待してた

見るのが怖かった

受け入れる準備なんてできてなかった


それでも勇気をだしてベッドに近づく


オトンだった

寝てるみたいだった


オカンがオトンの頭抱きしめながら泣いてた


そしてわたし達に気づいて

「パパ死んじゃった」

泣きながらそう言った


オカンもお姉もお兄も私も妹もおばあちゃんも家族みんなで泣いた


わたし達よりはやく来ていた病院のそばに住む叔父さん(オトンの兄さん)と従兄弟も泣いた



みんなでひたすら泣いた


死因は不整脈?なんかそんな感じ


46歳

気の弱いオカンに子供4人残して

はやすぎだろって怒ってやりたかった

妹まだ中学生

娘の花嫁姿も孫の顔も楽しみ全部残して逝ってしまった


それからオトンの葬式が終わるまでわたしは一切眠れずずっとオトンを見てた

気持ちは落ち着いたつもりでも顔を見ると涙がでる

もうすぐこの顔も体もなくなるんだって思ったら目に焼き付けておきたかった


「一番喧嘩してたのにね」

オカンに笑われた


わたしは後悔していた

オトンに優しくできなかったことに


「あんたはオトンと同んなじで頑固で短気だから喧嘩になるんや。似たもの同士」

お姉にも笑われた


顔はオカン似のわたし

性格は完全オトン


短気で頑固で喧嘩っ早くて

オトンとの喧嘩はなかなか派手だった


葬式も終わりオトンの荷物整理

オカンから

「これ、オトン持ち歩いてたんやで」


家族写真だった


我が家で唯一家族全員の写真

オトン

オカン

おばあちゃん

お姉

お兄

わたし


それぞれの個性が出たその写真に

笑いがこみ上げてくる


笑えるのに

笑えるのに


涙も同時にこみ上げてきた


オトン、ごめんな

もっと仲良くできたよな

今でも思うよ、1度でいいから会いたい

今でも思い出して涙がでる日があるよ



でもな、オカンちっちゃくて弱っちいでな、兄弟4人で支えてあげな折れてまう


わたしらが笑っとれば

オカンも笑っとるんや


やでな、前に進まないかんな


それから4年経って

今わたしと妹は大学生として頑張ってます


お兄は小学校の先生に無事なれました

今月運動会で忙しいらしい



そんでね、

お兄の小学校の運動会の次の日な

お姉結婚式やで


ちゃんと来てくれなあかんよ



お姉な、お腹の中赤ちゃんおるで

守ったってな



わたしなオトンのこと嫌いやったけど

オトンとオカンの娘でよかったよ


生まれてきてよかったよ


今わたしもすごく好きな人ができたよ


オトンが死んだ頃はね

一時期何もかもがどうでもよくなって

男遊びばっかしてビッチなんて言われたりして



でもね、はじめてプライドとか全部捨てて好きになれる人に出会えたよ

はじめてわたしのこと強くしてくれる人に出会えたよ


オトンとオカンがわたしの命つくってくれたから



ありがとう


まだまだわたしやることいっぱいやで

あと60年はそっち行かんつもりやけど

応援しててな

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