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14/8/27

目ん玉を手術してみた

Image by Olia Gozha

目の調子がおかしくなったのは、1ヶ月ほど前の、とある暑い日だった。

外を歩いていると、前触れ無く右目の視野が欠けた。

( ´ ・ω・‘ )これはやっちゃったな…すぐに思った。だから全く慌てなかった。糖尿病の持病があった事はもちろん分かっていたし、どのような合併症が出るのかも把握していた。

眼科にはしばらくかかっていなかったので、決して褒められたモンではない。むしろ怒られるべき事だろうが(笑)、それを自己弁護的に言い換えれば『自分の体の状態を知っていた』という事か(笑)。

もちろん事前に防げた状況なのだが、それを悔いたところで状況は改善しない。

悪くなったら、治療するかその状態を受け入れるしかない。

実はこうして開き直って、自分を『まな板の上の鯉』とする事こそが、病に勝つポイントなのだ…が、俺がそう言っても説得力に欠けるかも知れない(笑)。

次の日の朝イチで、近所の眼科にかかった。前日に一番評判の良い病院を調べておき、診察してもらうと、やはり目の裏側の網膜からの出血だった。網膜専門の医者の診察日に改めて受診する事になり、その日は薬だけもらって帰る事に。

そして次の受診日に専門医にかかったのだが、その医者が東大から外診で来ている人だった。

その場で言われた。

『うちの大学で手術ね!』

と。

まぁ手術は間違いないだろうと思っていたが、まさかの東大…遠いじゃん!

手術は以前に腹膜炎で体験していたが、その時は全身麻酔だった。眼の手術は部分麻酔…。

うわさに聞いた事は有るが、どんな感じなんだろ??

東大病院に通院し、詳しい検査を受け、入院と手術の予約を取った。手術は、最初に眼科にかかった日からすると1か月後となった。

それまでは、さらに出血しないように、血圧が上がるような運動は避け、風呂も湯船には浸からずにシャワーだけとし、重たいモノを持ち上げたり踏ん張ったりしないようにとの事。

( ´ ・ω・` )案外ノンキな感じなんだな。そんなんでいいんだぁ…。

などと思いつつ、とにかく日々を安静第一に過ごした。

そして入院、その翌日である昨日手術。

どんな手術なのかは、事前に説明を受けていた。

目の周りに部分麻酔を打ち、目ん玉の動きを止めた上で、白目に穴をあけてそこから目ん玉の中身の硝子体を吸い出し、目の中を丸洗いしてたまった血液を取り除き、レーザーで出血箇所を焼いて止血し、新たに硝子体の代わりとなる物質を注入するのだという。

す、すげえ…そんな事出来るんだ!

だって…目ん玉だヨ目ん玉!

今の医術は本当に凄いね!

手術のおっかなさは、その時点でぶっ飛んでた気がする。

そんな体験、出来るもんじゃない!

強がりでも何でもなく、手術までの数日間は、まるでジェットコースターの順番待ちをしてる時のような気分になった(笑)。

『これからどんな体験が出来るんだろう…?』

心配してくれた方々からすれば『ふざけんな!』という事になるかも知れないが、本当にそう思ったんだから仕方がない(笑)。

手術日は、東大病院の眼科の場合、毎週火曜日と決まっているらしい。何人かが手術を受ける予定になっていて、朝から順番待ちとなる。

俺の前の患者の手術が長引いたらしく、言われていた時間から1時間押しで、手術室に入った。

改めて訊いてみる。

『見えてる状態で手術すんの?』

と。

もちろんそんなはずはない(笑)。

『麻酔をかけると、明るいか暗いか程度しか分からなくなる』

『何かやってるな程度には分かるらしい』

との答え。

その時は『ふ~ん』程度にしか思わなかったのだが、ここで大きなトラップが!

そう…麻酔を打つ時には、まだ目は見えてるのだ!

瞳を開く目薬を入れるので、少しぼやけた状態だが、注射器と針は見える!

『ちょ!!!』

目ん玉の裏側にまで届きそうな長~い針と、結構な大きさの注射器がもろ見えだ!

数回に分けて注射するらしい。

目ん玉と眼窩の隙間に針を刺して!

最初の針が打たれる。

い、痛ぇ…。

4回目くらいから、痛みの感覚は無くなってきたが、まだ目は見えてる。

『先生…まだバッチリ見えてるんだけど…?』

『あっそう。じゃあ麻酔追加して打つね~。あれ?何だろ?上手く入んないなぁ?眼球が人より小さいみたいだね。』

『痛かったりしたら言ってね。我慢すると大出血するかも知んないから。それと、くしゃみや何かも出をうになったら言ってね~。いきなり動くと危ないから。』

…。

最後の麻酔の後、目ん玉を薄いイソジンみたいな消毒液で、ジョーッと洗われたトコまでは見えた(笑)。後はいきなり見えなくなった。

でも、確かに何かしてんのは分かる。

レーザーで焼かれてる時は、スポットライトの点滅みたいなモンは見えた。

んでもって、ここはどうだあそこはどうだという、執刀医と助手の会話はもちろん丸ぎこえな訳(笑)。

しかも全編もれなく専門用語!まるで意味が分からん。

もちろん、どういう意味なのかは気になる。

だけど、ここで大事になってくるのが、最初に述べた

『まな板の鯉になりきれるかどうか』

だったりする。

『後で詳しく教えてくれんだろ。良いようにやってくれ( ` ・ω・´ )b』

俺がすべきは、とにかく動かない事だけだ。事実。生唾を飲んだ一瞬、本当に少しだけ体が動いたのだが、その程度ですら

『動かないで!』

と怒られてしまった。

麻酔を打たれて、1時間ほど経過した頃だろうか。

『もうすぐ終わりますが、これから1~2分、絶対に動かないでくださいね。眼球の膜を縫いますから。一番気を付けなきゃならないトコなんで』と言われた…。

動かずにじっとしてると…針と糸で何かやってるのが見える!

…縫ってる…。

…チクチクと縫い合わせてる…。

…目ん玉の表面を…。

…糸止めの玉とか結んでる(笑)…!

す…凄ぇ!

それから最後の処置をして、手術は終わった。

手術室に入って、2時間弱の時間が経っていた。

『予定通りに終わりました。動かずにいてくれたんで、順調に行きましたヨ!』

と、執刀医が声をかけてくれた。そこで

『今日の手術の様子を、レポートにしてFacebookに上げようかと思ってんのヨ。』

と、手術台に横たわりながら言ったら、スタッフ一同笑ってくれた(笑)。

何だか分からんけど…俺の勝ちだと思った(笑)。

手術の翌日である今日の時点で、右目は全く見えていない。明るさしか感じない。

退院する頃も、視力は回復してないだろうという事だった。

手術で治療が終わる訳ではない。むじろこれが治療の始まりだ。焦らずじっくり治していく事になる。

そう…『まな板の鯉』モードは、まだまだっ進行中なのだ。

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