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14/8/15

天国へ旅立っていった馬鹿な友人へ8

Image by Olia Gozha

 あれから4年が経ちまして




前回までのあらすじ

一人の女性の自殺を止めた俺

彼女は地獄のような現実と向き合うことになるのかもしれない

俺のエゴだったと思わなくもない。

でもB家の家族からの感謝の言に

俺自身が救われていたことに気づくのであった

あらすじここまで


そして4年の月日がたった。

俺はこの間にもB家を何度か訪ねていた。

Bに会える予感がする日予感がする時間にだ。

手土産として菓子折りを買っていくのだが

すべてが無駄になった

B家に人々に会うことが出来たのはそれから4年後

2013年の3月

あの日より13回目の訪問であった。


桜の舞い散る夜の日のことだった

今回俺が来たのにはわけがある。

Bが久々に俺のところに来た

母親のことで頼みがあるらしい。


来て下さったんですかと

B親父

忘れられていたのかと思ったわと

Bおかん

妹さんがいないことに俺が気づく

B親父が端的に事情を説明してくれた。

B親父は仕事が定年となり現在求職中だったが新しい職場を見つけた。

慣れない仕事で体が痛いとぼやいてはいたが

元気そうである。


B妹はBの死の1年後

元彼とよりを戻し結婚してこの家を出て行った

彼女なりに思うところがあったのだろう。



Bおかんは、相変わらずBのことで頭がいっぱいだ

ただ部屋の雰囲気が違う。

壁にかけられた絵に特別な雰囲気を感じる。

さすがに通じるものがあるのですね

とBおかん

それもそのはず、俺の知る

数少ないバリモンの能力者が書いた絵だ。

このタッチは絶対忘れない。


俺はBおかんの話に耳を傾ける


あの子の遺影を見て話す時間が増えたこと

あの子に一人芝居と馬鹿にされつつも話しかけていること

写真のはずなのに表情が変わることに気づいたこと


俺はただ黙って頷く。


Bおかんは心無い職場の声に悩んでいた。

密葬で葬ったから私の長男のことは知らない

けど心無いひとことに怒りを覚えていた。

あの人たちは無神経だ

私は笑えない

あんな人たちと仕事なんか出来ない


俺はひときしり聞いてから答えた。


この気持ちはBを失った貴方だから得たもの。

多分Bが生きてたら一緒に笑う嫌なおばちゃんでしたよ

Bはこんな考え方も与えてくれたんですね


Bおかんはこんな話もした

家族への不満もあった。

たった1年で出て行ってしまった娘

無理矢理にでも忘れようとする旦那

それがつらかったと語った

俺は

考え方はいいけど強要はしないで

辛いのは立場が違えど一緒

臭い物に蓋をしたくなるのも

苦しみから逃げたくなるのも俺にはわかる。

最終的には泣きながら前に進むことが大事

こんな風に言葉を紡ぐ。


俺はBに頼まれたから来たことを伝える。

Bは母親が苦しむ姿が耐えられず俺に泣き付いてきたためだ。


「ずいぶんお辛かったでしょう。」

Bおかん「私はまだあの子に罪滅ぼしが済んでいません。」

「充分苦しまれたと思いますよ。もう地獄ならとうに見ましたよね。」

Bおかん「…」

「もしも地獄があるのだとしたらきっとこの4年間のこの日々だったでしょう。」

Bおかん「…辛かった…辛かったよう…。」

「ええ、だから俺が来たんです。Bが悲しんでましたから」


Bの願いは母親が苦しむ姿を見てるのがつらい、どうにかして欲しいだった。

でも今の状態ではそれは望めない。

Bおかんは自分を責めて生きることで辛うじて自分を保っていた。

「俺はお願いに来たんですよ。」

Bおかん「お願い…」

「Bがないているんです。「俺のせいでかあさんが」ってじゃあ死ぬなよって話なんですけどね。」

Bおかん「…あの子が…」

「俺はあいつの心を使ってあなたが自分の心を責めるのを良しと思いません。俺は貴方にあいつの心とともに生きて欲しいと願ってるんです。」

Bおかん「あの子の心と共に…」



頷く俺

見えない心があるのだとしたら

それは人と人との間にある。

俺はすっかり冷めたローズティーを飲んだ

急須と茶碗に入れられた桜色のそれは

俺の視覚と味覚に違和感を感じさせながら俺の腹に収まって言った。

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Image by Jukka Aalho

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