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14/8/12

天国へ旅立っていった馬鹿な友人へ4

Image by Olia Gozha

 先生…Bが…亡くなりました。



前回までのあらすじ

俺は車を走らせていた

無理矢理のこじ付けで出鱈目な説法ぶちかまし

ラストメッセージを伝えた俺は踵を返し走り出した

俺のできることをするために

あらすじはここまで


今俺に出来ること


俺は恩師の元をたずねた

進学塾の講師なのだが非常に気さくでいい方だ

俺が彼の元を尋ねたのは

当時のコネクションで行方がわからない講師の先生を探す為だ

「T先生はご在宅ですか?」

T夫人「ごめんなさい今はいないの」

「申し訳ないんですが緊急の案件でして、お取次ぎ願いたいんです!!連絡先もしくは今の勤務先を教えていただければ私から向かいます!!!」

T夫人「…こまったわね。少し落ち着いて、お茶を入れて差し上げるわ」


たぬきと称された奥様はたぬきには似つかわしくない美人であったが

飄々とする姿はたぬきそのものだった・・・。

応接間に通され毒気を抜かれた俺は紅茶を頂いていた

本来紅茶は嫌いな俺

だけどこんな状況で味なんかわかるわけがない


あの人仕事に入ると連絡がつかないのよー

ずいぶん火急の御用みたいだけどどんな御用事なのかしら?

旦那とはどんな関係なの?ずいぶんお若いけど


お茶もそこそこにほわほわした雰囲気で質問攻めにされる。

自分が先生の教え子であること

俺が急いでいる理由を端的に話した


帰ってきたら真っ先に連絡するわー


この言葉を信じて俺は携帯電話のTEL番を教え

一度出直すことにした

一秒間がまるで永久の様な長さ…

T先生に連絡がついたのは4時間後だった


T先生「おーNかどうしたんや?嫁が教え子が、この世の終わりみたいな形相で来たいうてたぞ」

「先生…Bが亡くなりました。」

T先生「そうか…褒められた亡くなり方やなさそうやな…」

「K先生の行方を知りたいんです。先生何とかなりませんか?」

T先生「Kくんか…力になれそうにないわ」


嘘だろ…

どうすりゃいいんだ

もう手がねぇぞ…


T先生「まぁ…がっかりすんな。俺にはないがあてがある。」

「どこですか?」

T先生「学習塾や!あそこに何らかの手がかりがあるかもしれん」

「そっか…あそこなら…光さえあればアクション起こすのは充分!!今すぐ行ってみます」

T先生「まぁ待てお前が行くまでに連絡だけ入れておくわ。」

「お願いします!!!」

T先生「N…お前は変わってないな」

「はい?」

T先生「素直で篤い。」

「ウス!!」

今回K先生にコンタクトを取ろうとしたのは

Bが最も懐いていた先生だったからだ。

厳しい先生だったが

冷酷と言うわけではなく熱血漢であり

Bも全幅の信頼を寄せていた。




すぐさま俺は飛び出した

15分後俺は学習塾のビルの前に立っていた

変身ヒーローじゃないが意を決して

階段を駆け上がる


「すいませんK先生の教え子です。K先生の連絡先を知りたいんですが取り次いでいただけますか?」

事務員さん「ああ…お話は聞いております。Kは○○校に転属となっておりまして…」

「詳しい場所は!!!」

事務員さん「ご安心くださいお取次ぎしますね。」


教務室に入り受話器をとる


「お久しぶりですK先生」

K先生「おーNか?どうした何があった?因数分解でも習いに来たか?」

「先生、Bのことは覚えておいでですか?」

K先生「勿論だ、あいつのことはいろんな意味で忘れんぞ!!」

「Bが…Bが亡くなりました」

K先生「…いや嘘は…お前はこんなしょうもない嘘はつかない男だったな。お前がそこまでむせび泣く理由は褒められた死に方せんかったんやな。」

緊張の糸がぶっつりきれたのだろう

俺は泣いていた

泣き崩れたいところだったが

まさかの展開が待っていた


K先生「N、Bの家わかるか。葬儀に出たいが出れん今から向かう」

「今からですか?あいつの家はM市ですが…」

K先生「M市か…詳しい土地勘がないな。なんか目印になるようものはないのか?」

「あいつの家周りは何もないんですだからわかる場所まで俺がお迎えに上がります。」

K先生「わかった頼む。」


ノータイムかい!!!

泣き崩れる時間も俺には与えてもらえんらしい。

俺は涙を袖でぬぐい

急いで車に飛び乗った

携帯を引っ張り出し、電話をかける

B家に今からお邪魔する旨をだ。


待ち合わせに選んだのは大型書店

俺は入り口で「仁王立ち」で待っていた。

先生の勤務先からここまでは2時間ほどかかる

だけど先生は相当車を飛ばしてきたらしい

1時間ちょいで現れた。

「先生お呼び立てしてすいません。」

K先生「お前からそんな敬語が聞けるとは…お前も成長してるのだな」

「こんな形でお会いしたくはなかったのですけど…」

K先生「つらい役割だったがよく伝えてくれたぞ。」

「…参りましょうか」

泣かせにかかるなよ。

運転中に事故ったらどうするんだ…

5分後

B家近くの浄水場で俺たちは車を止めた


K先生「あいつとゆっくり話がしたい。席をはずしてもらえるか」

「…わかりました。先生、あいつをきつく叱ったってください。先生に叱っていただくのが誰よりもいい薬になるとおもいますから…。」

K先生「うむ、任せておけ今日はもう遅い。気をつけて帰りなさい。」

「ウス!失礼します。」


俺は一礼して見送り踵を返すと家へと車を走らせた。

たぶんあいつはこってり油をしぼられることになるだろう。

いやあの先生のことだ

咽び泣く姿が罰が悪くて俺を遠ざけたのかもしれない。

だとしたら少しうらやましい。

俺はかっこ悪く泣き喚く暇すら与えてもらえなかったから。


俺の携帯がけだましく音を立てる。

着信音

T先生からだ

「はいNです。」

T先生「今から会おう。学習塾で待つ」




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