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13/3/1

父親の存在意義ってなんですか?

Image by Olia Gozha

私は、父親が居ません。

私は、父親が要りません。

私の両親は、私が小学校6年生のときに離婚しました。

原因は、父親の浮気です。

元々離婚の半年前くらいからイギリスに単身赴任していた父親は、よく家に電子メールを送ってくれていました。

ある時は現地の食事の話。

ある時はイギリスの歴史を物語る風景を題材にした詩。

そんなメールを心待ちにして、こまめにパソコンをチェックしていた私がある日開いたメール、そこには

母親宛の、別れを告げる言葉がつらつらと書かれていました。

どうしたらいいんだろう?混乱した頭を押さえつけて、メールの未読フラグを立てて、でも何も知らぬ顔でいるのも

苦痛で、その夜に母親が「あら、メール着てるね」とパソコンを覗き込む顔がみるみる蒼ざめていくのを

どうしようもない罪の意識を感じながら見つめていたのを覚えています。

なんとか父親に戻ってきてほしくて、今まで止めていたタバコを吸いながら

威圧するような顔で話し合いをする父親になんとか元に戻ってほしくて、

少しでも家に居てくれればいいのにとわざとパソコンを不調にして

直してもらう、なんて事までして。

それで結局は浮気していた、ということが明るみになって

それを悪びれる様子もなく相変わらず言葉の暴力を振るう男を見ていて

その瞬間、私は父親が要らなくなりました。

当時、あまりに母親に悲しませている父親が許せなくなって

ひたすらに父親を否定するメールを書いて送ったところ

なんてすごい文章なんだと母親や親戚に褒められたことを覚えているのですが

じゃ実際にどんな文章を書いたのかなんてことはほとんど覚えていなくて、

ただ一言「なぜ、本当のことを言わないのですか?」とだけ叫ぶように書いたのだけは

記憶の片隅に残っています。

最初は私たち家族を捨てて、母親を悲しませた父親が憎くて仕方なくて

でもその内憎いという特別な感情を向けることすら悔しい気がして

私は父親を「どうでもいい人間」として扱うことに決めました。

道端に転がる石ころ

遥か彼方のニュース

砂嵐の流れるテレビ

どうでもいい。どうでもいい。どう生きようが、

気づけば死んでいようが、どうでもいい。

私は、父親が居ません。

私は、父親が要りません。

中学に入って、少し反抗期も迎えて、恋もして。

高校に入って、適当に部活をやり過ごして、勉強して。

大学に入って、バイトに励んで、恋人ができて、就活をして。

振り返ってみれば、全く父親は必要ありませんでした。

唯一、慰謝料という形で支払われ続けたお金があったからこそ

色々とできた事があるという事はわかっていますが、そんな事私には

どうでもよかったのです。

父親が居ればなぁ、でもそんな思いを母が知ったら悲しむだろう…、

といったドラマにあるような感情もなく、

本当に父親が必要なかったのは別に珍しいことでもないのでしょうか。

就職祝いに父親から実家に届いた名刺入れは、今も客先に行くときは

胸ポケットに収めています。もしも父親を憎んでいたのならそんな物捨てていただろうし

少しでも思う気持ちがあるのなら、今から会う事だってできるのでしょうが、

どちらの感情も少しも浮かんでくる事はありません。

ただひたすらにどうでもいい、それが、私にとっての父親の存在です。

別にずらずらと書きましたが、父親のことを語りたいという事ではないのです。

自分の不幸自慢がしたいわけでもありません。そもそも

不幸だとも思っていません。

ただ、父親という存在が私にとってどうしようもなくどうでもいい存在である、という事なのです。

そんな私が、父親になりました。

妻は激しい悪阻や震災による不安、想像を絶する痛みを乗り越えて息子を産んでくれました。

私は、父親になったのです。

私は、息子にとっての父親になったのです。

一点の曇りもない笑顔を向けてくれる息子、笑いたいときに笑い、泣きたいときに泣き、

甘えたいときに甘えてくれる息子。

そんな息子もいつしか大きくなり、小学校に入り、中学に上がり、どんどん大きくなっていくでしょう。

そのとき、私はどんな存在であればいいのかが、正直分からないのです。

中学校に入ってからの父親は、私からすれば居なくても問題のない存在なのですから。

ただそこに居ればいいんだよ、とか

子どもは父親の背を見て育つんだよ、とか

ネットで調べれば答えは沢山返ってくるんでしょうけれども

参考書を写しましたみたいな答えが当てはまってくれるとは到底思えなくて。

これから先、そんな答えは自分で見つければいいんだよと善人面した知ったかぶりが

世の中にあふれている事をうすうす感じ取っているから

誰に相談するわけでもなく、ただ漠然と、この先を怖がっている自分が居るのです。

私は、父親が居ません。

私は、父親が要りません。

でも、息子には父親が必要です。必要であってほしいのです。

父親でもなんでもいいけれど、息子にとって私という存在が、必要な存在であってほしいのは確かです。

だから、そんな存在になれるようにがんばろうと思います。

がんばっていこうと思います。

これから先、まだまだ人生は長いけれど、

がんばっていこうと思います。

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