ちょっと前置き
早くもパート10になりました!書き始めた当初は「一体誰がこんなものを読むのか??」と不安がっていましたが、実際には「いいね」を押してくれる人がいて本当に嬉しかった。
更には「次も読みたい!」とリクエストしてくれる方々もいて驚きました。そして、そんな方々のおかげで今日まで続けることができました。
会ったことも見たこともございません。でもこんなストーリーを読んで良かったと言ってくれる人たちに、「本当にありがとうございます!」と声を大にして伝えたい。
今現在でPART10!なんとか気合いで100までは続けてやろうと一人企んでいます。笑
なので、どうぞこれからもよろしくお願いします☆
前回のあらすじ
まさかのグループディスカッションは予想外の展開を迎えることになった。
「発表が一番良かったグループはクラス代表として次の全体発表もしてもらいます!」
小林先生の言葉が僕の頭の中でエコーした。
「代表になると全体発表やって!?そうなれば200人の就活生と企業の人たちの前に立つってことやないかーーー!」
僕は恐怖で飛び出しそうになったが、まあ僕らのグループが選ばれることは無いだろうと無理やり思い込むことにした。
が、しかし、、、
神は僕らを予想外の世界へと連れて行ってしまった。
そう、まさか僕らのグループがクラス代表に選ばれてしまったのだ!
しかも、クラス代表に選ばれた僕らのグループには、思いも寄らないもう一つのおまけがついてきたのだった・・・
「クラス全体でディスカッション」
代表に選ばれた僕らのグループは残りの50分間、小林先生の代わりに研修を行うことになってしまった。つまりクラス代表で出場するのであれば、クラス全体で発表の仕方に磨きをかけろということなのだ!!
そう言った小林先生は終始笑っていた。楽しいのだろう。自分の教え子がどんな授業と発表をするのかが、、、
だが僕は、「楽しくない!断じて楽しくないぞ!!」と心の中で叫んでいた。
いつものみんなでグループディスカッションするのは楽しいが、まさかクラス全体でディスカッション、更には大勢の前で発表など!
ビビリの僕は一人震え上がっていた。いや、僕だけじゃなく大塚さんも奥村くんも震え上がっていた。(実際2人はどうだったのかはわからんが。笑)
それでも僕は頭をフル回転させながら教室の前に立った。
そこにはおなじみの就活生と小林先生の姿があったが、僕の心境はまったくもっていつもと違っていた。
「どうしたらええんや、、、」
予想外の展開に、心の中では天使も悪魔も言葉を失っていて、僕は完全にフリーズしかけていた。
「いや、こんなチャンス滅多にないし、ここは失敗しようがしまいが一発かましておくべきや!」
わずかに生き残っていた天使の声が聞こえて、僕は覚悟して最初の言葉を喋った。
「この度は、クラス代表に選んで頂きありがとうございます!今から午後の部をどうやって発表するのか、みんなで決めたいと思います。」
とりあえずタジタジしながらも最初の言葉は言えた。すると奥村くんが小声で「なら僕はみんなの意見をホワイトボードに書いていきますね。」と言ってくれた。
僕は大塚さんと顔を見合わせてどうやって進めていこうかと悩んでいた。すると小林先生が「とりあえずさっきの発表の流れは良かったし、その流れをホワイトボードに書いたらええんやないか??」と助け舟を出してくれた。
待ってましたといわんばかりに奥村くんが力を込めて僕らの発表をボードに書き始めてくれた。
僕はそれを見ながら大塚さんに「とりあえず他に付け加えたほうが良いこととか聞いていきますか?」と尋ねると大塚さんも頷いてくれた。
そしてみんなのほうを見ながら「何か他にも付け加えたほうが良いことがありますか?」と僕は尋ねた。
が、、、案の定誰も反応は無かった。
そりゃそうだ。いきなり僕らのディスカッション内容に何を付け加えたら良いのかはわからない。
「だからこそ質問の仕方を変えるべきだ!」と言わんばかりの顔で小林先生が僕を見た。
僕はツバを飲み込みながら「他に質問は無いか?」と考えまくった。そこで質問の仕方を変えて「どうすればもっと伝わるような発表になるか?」と聞いてみることにした。
とは言うものの「何を付け加えるか?」とあまり変わらない気もするが、それが僕の精一杯の質問だった。
その思いに応えてくれたのか、一番前に座っていた就活生が「もっと時系列に並べて発表したほうが良いのでは?」と話してくれた。
確かに僕らの発表は時系列もクソもない。ただ「ここが重要!」と思った3つのポイントだけを発表している。
(詳しくは前回のPART9で紹介しています→http://storys.jp/story/10211)
もっと時系列を意識して「最初はこんなことがあって、次にこうなって、、、」という形のほうが確かに伝わりやすい気がしたのだ。
なんせ相手は200人!しかも企業の方達もいるとなるとやんちゃな発表の仕方ではいけないのである。
そこで僕は奥村くんに「時系列に並べるとどうなるか書いてみてくれませんか?」と尋ねた。
(おい!お前が書けよ!笑)
奥村くんも少し困ったような感じだったが、ディスカッションの内容を思い出しながら時系列に並べてくれた。
するとそれを見た他の就活生の人が「時系列に並べたとしても、結論は最初に持ってきたほうがわかりやすいんじゃないですか?」といきなりスライディングをかましてきた!
ただ、確かに社会人になれば話をする時に「最初に結論を持ってくる」ということが重要だ。
僕は「それは良い意見ですね!」などと形だけ司会者を演じながら、発表の最初に3つのポイントを簡単に説明をすることに決めた。
だがしかし!更に別の就活生がこんなことを言い始めたのである。
「でもそれって最初に結論持ってきたなら過程は必要ありますか?次の発表はあまり時間も無いようですし、、、」
鋭い!いや、もはや何が正しいのかわからなくかってきた。
あれやこれやと就活生の意見を聞くたびにホワイトボードがグチャグチャになってきて、書記の奥村くんもみんなの意見を書くので必死だった。
途中から僕の代わりに大塚さんがみんなからの意見に返答してくれるようになり、
「奥村くん→書記」
「自分→質問する人」
「大塚さん→みんなからの意見に答える」
みたいなポジショニングが暗黙に決まった。
その時点で経過時間は25分、やっと3人の役割も決まり、進行も少しは軌道に乗り始めたのでここからがスタートだ!と僕は密かに思った。
前半はドタバタしたが、ここからうまくまとめることが出来れば僕らの株も上がるかもしれない!などとアホなことを考えた矢先、小林先生から思いも寄らぬ核ミサイルが発射された。
「ちょっと良いですか?君らのグループがここのクラスの代表に選ばれたんです。つまりそれは君らの発表の仕方をみんなが認めてくれたということ。
なのに何故わざわざ時系列とか他の形に崩して発表する必要があるんですか?
あなたたちの班が認められたなら、そのスタイルで発表したらええんやないですか?」
振り出しに戻ったーーー!!!
人生ゲームで言うと、あと少しでお金も家庭も手にいれてゴールできそうな瞬間にすべてが「無」になった感じである。
さすがの小林先生からのレーザービームに、一瞬に教室中が静まりかえった。
そしてそのレーザービームをもろに受けた僕らは完全にダウンしてしまった。奥村くんの文字を書く手が止まり、大塚さんも下を向いて悩んでいた。
僕だけは小林先生の顔を見ながら「じゃあどうすれば良いんですか?」と無言のSOSを流していたが、小林先生の雰囲気から「それは自分らで考えろ。」と同じく無言の返事が届いたような気がした。
少しの沈黙が続いた後、最初に意見を言ってくれた就活生が口を開いた。
「確かに、発表の仕方をわざわざ変える必要もないと思います。」
あんたやーーー!!!
あんたが最初に時系列に並べて発表したほうがええんやと言ったんやないか!それを何を今更寝返っとるんやーーー!
と僕は声を大にして言いたかったが、そんなこともできることもなく教室からはさっきまでの活気が無くなった。
痺れを切らした奥村くんが、「なら小林先生の言ってくれた通りもう一度最初の形に戻して話し合いましょう。」と言ってくれた。
その言葉を聞いて僕はホワイトボードを白紙に戻し、その真ん中に大きく3つのポイントだけ書いた。そう、原点に戻ったのである。
しかしここからが大変だった。やっとこさ教室のみんなも意見を出してくれて活気が生まれたところ、まさかの小林先生の言葉で生気は無くなってしまった。
「一体全体、こっからどうしたらええんや…」どれだけ悩んでいても一向に答えが出ない。いっそこの場から帰ってやろうかと思ったがそんなことをする度胸もない。
奥村くんも大塚さんも下を向いてはずっと何かを考えて様子だった。その時である。一人の就活生が手を挙げて「もう一度みんなで1から考えてみましょう!」と励ましの言葉をくれたのだ。
これには素直に嬉しかった。まったく答えが出ない状況の中で、「もはやこれで終わりか…」と思っていた中での救いの言葉。
おそらくこの時の僕らはよっぽど悩んだ姿をしていたのだろう。そしてその姿を見ていた他の就活生たちがどんどん力を貸してくれたのである。
「最初のポイントにはこういうのも足したら良いんじゃないですか??」「インターンシップの体験談を話すとかも良いと思います!」などなど。
さっきは否定的な意見を言っていた学生も協力してくれるようになったのである。
そこで僕らは気を取り戻してもう一度初めからスタートすることにした。役割分担は同じく、新たに再出発したのだった。
不思議なことに、同じ就活生である僕らが授業を進めていたからか、少しずつ「一体感」が生まれてくるようになった。
もちろん手厳しいことを言ってくる人もいたが、それでも最初に比べると明らかに協力的な人たちが増えていた。そのおかげで完全に打ち砕かれそうになった僕の心もなんとか持ちこたえることができたのである。
「これならいけるかもしれない!」と僕は思った。さっきは完全に挫折しそうになったものの、これだけみんなが協力的になって意見を言ってくれるのなら、もっと良い形で発表できそうな気がしたのだ。
あーでもない、こーでもないと言いながら僕らはクラス全体でのディスカッションを進めた。
基本の形は崩さず、どう僕らの発表の仕方をレベルアップしていくかという、少しハードルの上がった話し合いだったのでなかなかスムーズには進まない。
それでも僕らは少しずつ少しずつ言葉を足して、自分たちの発表がもっと良くなるよう必死になって考えていた。そんな状況の中で小林先生だけが何も話さず、じっと僕らのディスカッションを見ていた。
しかし、小林先生からのレーザービーム的な質問が強過ぎたのか、思うようにみんなも発言できなくなっていた。「あぁ、ほんとはこんなとこが言いたいんだろうな…」と思いながら、僕はみんなからの意見を聞いていた。
僕ら3人含めて誰もが小林先生の顔色を伺いながら自分の意見を話そうとしていたのである。
そりゃ小林先生は就活の道を知る超ベテラン。そんな先生から「なんかこのディスカッションおかしくないか?」みたいな質問をされると、誰もが「イエス!そうです!」としか答えれない。
思うようにペンを進めることができないためか、奥村くんはずっとホワイトボードを見つめながら黙っていた。大塚さんは何とか場の空気を上げるために、みんなからの意見に対して必死になって応えてくれていた。
「なかなからちがあかない…なんとかしてこの状況を脱却せねば。」いつの間にか僕は汗をかきながら喋っていた。たかだが練習のためのディスカッションやら模擬研修でこんなにテンパっていたらシャレにならない。
「俺、これからの就活ほんま大丈夫か???」
考えたくもない言葉が司会をしている中でも頭をかすめる。それでも僕は思いつくすべての質問をみんなに投げかけ続けた。
そして大塚さんの力もあってか少しずつ場に活気が戻り始めて、何人かの生徒が積極的に意見を話してくれるようになった。それがきっかけで他の生徒も意見を話してくれたり、少しずつではあったが笑顔も戻ってきた。
「よしきた!この調子なら大丈夫や。なんとかして軌道に乗せることができれば絶対良い発表の形ができるな!」とわずかながら希望が見えてきた。
とりあえず流れを切らさないために僕は身振り手振りも加えながら話していた。その姿を見て熱が入ったのか、書記の奥村くんも気合いを入れて話し始めてくれたが、思いっきり噛んでしまい会場の笑いを総取りしたのである。
笑いが生まれればこっちのもの!人間、笑顔になれば心のゆとりが生まれる。その隙に一気にモチベーションを上げてみんなの活気を高めようと思った時だった。
小林先生がすっと立ち上がり大声で言ったのである。
「タイムアーップ!!」
なんやとーーーーーーー!!!
僕は心の中で叫びまくった。まさか、今この瞬間で終了だと!?切りが悪過ぎる。これはあまりにも切りが悪いぞ!!
あまりの唐突な強制終了に他の就活生からも「え!」という驚きの声が上がった。
今までの人生で何度か切りが悪い場面はあったが、これほど不完全燃焼な終わり方は経験したことが無かった。
というよりマズい!これはマズい!!
何故ならメインである午後の部の発表で、まったくもって発表できる形になっていないからだ。
これじゃあまるで料理番組で料理が間に合わず、とりあえず材料だけ紹介しとけ!みたいなブーイング100%な感じになってしまう!
それでも小林先生はそのまま前に立つと「3人ともご苦労さん、席に戻って良し!」と言って僕らを返した。
その時僕は直感したのである。小林先生が優しそうな笑顔で僕を見た時にすべてを理解したのだ。
「なんだ小林先生!最後は僕らの発表をまとめてくれるつもりだったのか!それであえてディスカッション中は何も言わず、僕らの進行っぷりを見てたんやな!」
もともと場数が少ない就活生が就活について研修なり発表なりしたところでたいしたものは生まれない。それでも力を鍛えるには極限状態まで追い込むしかない。
「泳げるようになりたいなら、とりあえず水につっこめ!」
小林先生ならやりかねない方法である。
僕はそのことを理解すると安堵したのかフラフラと席に戻って腰をおろした。最初からそうなるなら死ぬ思いで司会をすることも無かったなと思った。
「やっと終わった…」と大きな開放感を感じると同時に小林先生がどうまとめてくれるのかにすごく興味が沸いた。
「きっと小林先生なら予想以上の形でまとめてくれるに違いない!」そう思いながら小林先生のほうを見た。そしてその視線に気づいたのか、小林先生が話し始めた。
「え〜みなさん、ディスカッションお疲れさまでした。3人もよう頑張ったな!とりあえず午前の部はこれで終了やから、午後の発表を楽しみにしてるわ!それじゃあお昼休憩どうぞ!」
「!?」
なにーーーーーーーー!!!!
ほんまに終わるんかいな!!!!
確かに小林先生は予想以上の形で終わらしてくれたが、僕にとっては最悪のシナリオとなってしまった。
「あの全然まとまっていない形で発表しろというんですか!?それじゃあまるで公開処刑・・・話す言葉も順番も決まっていない状況でいったい何を発表したらいいんですか!?」
安易に小林先生がまとめてくれると勝手に予想してた分、僕のダメージは衝撃的だった。そして隣を見ると奥村くんも衝撃を受けた顔をしたまま固まっていた。おそらく前に座っている大塚さんも唖然としているに違いない。
敵は200人の就活生と企業の人たち。そんな状況の中で刀も盾も忘れてしまった僕たちが一体全体どうやって戦えば良いのか…
昼飯時のランチタイムは僕にとって悪夢の1時間となったのである…
(つづく)
ブログもやっているので良かったらどうぞ☆