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15/9/3

若年性乳がんになって片胸なくなったけれど、日々楽しく生きている話~第一章

Image by Olia Gozha

あっけない手術の代償は大きかった…


あのさらりと終了した私の左胸のしこり摘出手術。

結局胸から出てきた乳白色のしこりは、大きさが大体5ミリ程度だったらしい。

胸の上から触っている感じだと1センチはあると思っていたけれど、

脂肪のせいで大きさの感覚が違ったみたい。


…なんて事をすっかり忘れて普通に生活をしてた私。

特に体調が悪い訳でもないし、何一つ変化のない身体。

ただ唯一気になったのは、痛み。

刺すような痛みがたま~に手術をした辺りから感じるようになって、

私の中に違和感を感じさせる日々が続いていた。

それが、30才になっていた私。


ふと部屋で考え込む。


アタシ「何だろう…面倒な事は嫌だなぁ…」

ええ、面倒な事が大嫌いな性格ですから(笑)そんな風にしか思わなかった。

それでも放置するのも何だか嫌だ。だって痛いんだもん。

自宅で色々パソコンで検索をしてみても、大した情報はない。

唯一私の心に引っ掛かった単語。

「がんは痛みを伴いません」

…これが自分の身体に対しての危機感を薄れさせていたのは事実。

だけど痛いモノは痛い。

ってことで、再度親友に連絡。

アタシ「ねぇねぇ、前に手術したじゃない?あの辺りがまた変なんだけど、診てもらった方が良いかなぁ?」

親友A「う~ん、気になるんだったら診てもらった方が安心だと思うよ~また手配してあげるから、おいでよ病院に。」


…ってことで、2年前に訪れた同じ病院に私は足を運ぶ。

「どうせまた何もないんでしょ~」というお気楽モード全開のままで。


行った科は前回同様「外科」だった。

でも前回の熊医者はすでに退職しており、今回の医者はノーマルな感じのお医者さん。

以下「ノマ医者」と表記します。

ノマ医者「どうしましたか?」

アタシ「2年前にこちらでしこりの摘出を受けたのですが、また同じ箇所が気になって…」

ノマ医者「そうですか。では診てみましょうか。」


とてもジェントルなノマ医者さん。

前回の熊医者のような雑な感じは一切なく、淡々と検査をしていく。

エコー(超音波)の検査をしている時だったか?表情が変わった。


ノマ医者「今から紹介状を書きますので、すぐに専門病院へ行ってください。」

アタシ「(ぽか~ん)え、今から速攻ですか?」

ノマ医者「ええ、速攻です。病院の場所は地図をお渡ししますし、先生にも連絡しておきますので、必ず行ってください。」

アタシ「はい…(マジか?何なの???)」



そう、アタシ軽い混乱モード。

だって前回のライトな感じから一変、重量級なうえ真剣さも半端ない。


会計にいた親友に声をかける。


アタシ「ねぇ、何だか専門医のところ行ってって言われたんだけど…」

親友A「ま、ちゃんと診てもらえば大丈夫だよ!早く会計済ませて行っておいで♫あ、結果はちゃんと連絡するんだよ~」


はぁ…orz 何だか面倒な展開になったぞ。

一日に病院ハシゴって何なんだ!(涙)おまけに今度の病院は女性Onlyですって。

どんなところなのかしら…不安だ…ってか迷わず辿り着けるのか?←これ一番重要。


そんな困惑の中、専門医の病院へトボトボ移動。

ま、今いた病院から専門医の病院までは歩いて10分もかからない距離。

でも徒歩が大嫌いな私からすれば、なかなか気が重い。

それでもあれだけ「速攻!」って言われたら…行くでしょ(苦笑)


アタシ「ま、さっくり終わるでしょ~(楽観的)」



はい、この気楽さは風のように吹き飛びましたよ、数時間後には(笑)

女性専用だけあって、待合室はピンク系のセンスの良いソファと綺麗な花。

クラシックが流れ、アロマの香りが心地よい。

初めて足を踏み入れた私にとっては何だか異質な空間。

受付でノマ医者から貰った紹介状を出すと、


事務長「連絡はいただいていますよ。少しお待ちくださいね。」


とても穏やかで優しい受付のマダム。

僅かばかり緊張が解けたところで診察室へ呼ばれた。


私を待ち構えていたのは…侍医者だった(笑)

ま、今でもお世話になっている先生だが、あえて侍医者と呼ばせていただく。

侍医者「紹介状を拝見しました。これから検査をしていきますね。」

アタシ「はい…よろしくお願いします…」


「大したことないでしょ?」

なんて言葉が言えないくらい、ちょっとしたオーラが出ている侍医者。

とにかく言われるまま様々な検査を受けた。

今回の検査内容は、問診・触診・マンモグラフィー(乳房のレントゲン撮影)・エコー(超音波)

ま、一般的な検査全般ってヤツ。

マンモなんて初めてだったから、大騒ぎなんてモンじゃない(笑)

痛いし、痛いし、痛いし…ってそればっかりになる位痛かった(号泣)

でも仕方ないのかな、何もないって確定するまでは。


侍医者「結果が出るのが一週間くらいなので、また来てくださいね。」

この言葉を耳にしながら、とぼとぼ帰路へ。

沢山検査もしたお陰で、とにかく疲れていたアタシ。

とにかく早く自宅に帰りたかった。



一応親友Aにも電話を入れ、大急ぎで自宅に戻り、一人ぐったり。

アタシ「ど~せ何もないんだし…とにかく早く全部検査終わらないかな…(涙)」

と自宅の猫達に話しかけては無視されて凹む(涙)


ま…この子達のためにも、何もないことを早く証明しなくちゃ。

…と思いながら、一週間が経過し、再度私は病院を訪れた。

侍医者から告げられたのは、

侍医者「きちんとした診断をしたいから、次の検査受けてね~」

アタシ「え?また検査ですか??(涙)」

そんなアタシの言葉をさらっと受け流して、笑顔の侍医者。

…この人ドSだ。間違いない、アタシの勘がそう言っている。

おかしいなぁ?前回結構検査したよねぇ?(涙)まだやるの…???

なんて私の思いは放置プレイ。

次から次へと検査は続くのですよ、これまた。


穿刺吸引細胞診(細い針をつけた注射器でしこりを刺し、顕微鏡で検査)やら、

分泌液細胞診(乳首からの分泌液を検査)、

最後が乳管内視鏡検査(乳首から内視鏡を入れて、中を検査)。

全行程が終わったのは、最初に来院してから半月後。

まぁ…長かったですね、ホント。


一通りの検査が終わってから1週間。

私の携帯が鳴った。相手は病院の受付マダム。

事務長「今先生に電話代わりますね。」

アタシ「まさか結果が最悪とかなんて事ないよね~まさかね~そんな事ないっしょ♫(内心)」


侍医者「あ、もしもし?今から病院来られる?」

アタシ「え?まさか…」



侍医者「うん、だから早く来てね~」


…細かい言葉は忘れちゃった。


でも一つ言えることは「良い結果ではなかった」ってことだ。

何とな~く現実味がない中で、車を走らせる。

「う~ん…何が何だか良く分からないが…ま、いっか。」

ええ、こんな感じで病院向かってましたね(笑)


そして病院到着。

他の患者さん達とともに待合室でしばし待ち、診察室へ。

侍医者「検査の結果なんだけど、左乳房乳管がんだね。今から詳しい説明するから、良く聞いて。」

アタシ「あ、はい。お願いします…」


↑ 結構平常心のまま。


侍医者「(かなり詳しい説明ののち)ってことだから。」

アタシ「あ、そうですか。では私は何をすれば?」


どうやら普通の患者さんだったら、泣く・わめく・落ち込む・放心状態のどれかになるらしい。

そりゃそうよね、一応悪性腫瘍だって言われる=がん告知 なんだから。

ところが私はあんまり感情が動かなかった。

何故かって?泣いてわめいて病気が治るんだったらそうする。

でもそんな事しても治らないなら時間の無駄だって思ったから。

ならば何をすれば良いのかを先生から聞き、選択していくしかない。

だから「では私は何をすれば?」ってワードになった訳です(笑)


侍医者「まずは治療方針決めて、手術って流れかな。ご親族にも説明した方が良いし、色々あるでしょ?準備とか。とにかく今日から薬飲んでもらうから、あとで飲み方説明するね。さ、治療頑張ろう!」


アタシ「あ、はい。よろしくお願いします~」


…これが私のがん告知でした(笑)さっぱりしたモンでしょ?

先生が事細かに書いてくれた説明書きは、父に説明する時に活用させてもらいました。

ちなみに病気の事を説明し、号泣したのは父。私は…泣かなかった。

いや、あれだけ目の前で号泣されたら泣けないって(笑)

何て言うんだろう。「アタシがしっかりしなくちゃ!」って思うくらい落ち込んだ父。

それもそっか、一人娘だし、母もいないしね…

ごめんね、パパ。余計な心配増やしたね(涙)


でもさぁ…病気の娘が「しっかりしなくちゃ!」ってどうなのよ?(爆笑)

ま、幸いにして私にはとても心強い叔母(父の妹さん)がいてくれるので、

何かあれば面倒見てもらえる安心感もあったし、

親友AもBもいてくれるので、精神的には安定していたのかもしれない。

だけどね…女性として左胸がなくなるって言うのは、かなりのショックだった。

自分で言うのも何だけど、結構私の胸、綺麗な形と大きさだったのよね(爆笑)

これが片方無くなるのかぁ…って思うと、

正直治療なんてしないでこのまま死んでしまいたいとすら思った。



告知を受けてからの私はいくつかの山を越える必要があった。

まずは薬。

内服の抗がん剤やら胃薬やら何やら…

おまけに告知受けた途端、不眠になってしまったので、

安定剤や睡眠薬まで出させる始末。

特に抗がん剤は体調を悪化させてくれるため、

それまで続けていた仕事も辞めることに。


次は生命保険。

私は本当に自分に病気の疑いがあるなんて思ってもいなかった。

だからこそ、それまで入っていた保険を切り替えた。

ただし、切り替えたタイミングが最悪だったのかもしれない。

だって新しい保険にしてから9か月で乳がんの告知だもん。

そりゃ新しい保険会社にしてみれば、疑いを持っても仕方ない。

なので保険金が下りるまでは戦いだった。

それがなければ治療も出来ないし、仕事も辞められない。生活も出来ない。

つまり…死ぬしかない。

まぁ幸い満額保険金が下りてくれる運びになったので、

全てはクリアになったけど、あんまりいい思いはしなかったな。

「生命保険って、入る時は優しいけれど 請求したら手のひら返すのね」

と思ってしまったのは私だけではないはず(号泣)


最後は治療方針。

何せ色々決める事が沢山ある。

当初私の手術は左胸の4分の1を切除って話だった。

でも次に検査をしたら、2分の1の方が安全かも?って流れになり、

最終段階で、何だか面倒になった私は…

アタシ「全摘出でいいです。それでお願いします~あと同時再建の方向でお願いします~」


という決断をする。

何故全摘出にしたか?だってまた手術するの嫌だったんだもん。面倒だし(笑)

…ええ、こういう性格ですよ~

同時再建って言うのは、イメージしてもらいたいのは肉まん。

私が受ける手術は、この肉まんの中身だけをくり抜くイメージ。

そのくり抜かれた部分に生理食塩水の入るバッグを挿入し、

少しずつ水を追加していって、表面の胸の皮を伸ばして、

最終的にはシリコンに入れ替えるって方法。

時間はかかるけれど、出来上がりがとても綺麗に出来るそうなので、

あえてお金も時間もかかるけれど、その術式を選択した。

失ったモノを取り返すには、多少の犠牲は必要だもの。


そして着々と手術に向けての準備や選択は進み、

手術の日程が決まった。

翌年の1月7日。新年早々手術って…良い年なんだか悪い年なのか全く不明。

でも面倒な事はさっさと終わらせたいし、

一度最悪な状況まで落ちれば、あとは上るだけ。

そう、ポジティブですよ、私。

だって、こうなったらやるしかないんですよ。


誰のために?


自分のため、父のため、身内のため、猫のため、仲間のため。

人は色々なモノを背負って生きている…それを痛感したのもこの時期だったかな。

そして悲しいけれど、この時期に私は人間関係の断捨離をしていた。


「辛いよね~わかるわ~」って言った元友達(顔見知りに格下げ)や、

「そんなに辛そうじゃないよね?」って言った元自称親友(同級生に格下げ)とか、

何だか病気によって自分にとって誰が大切で、誰がそうじゃないかが明確になった。

…あながち病気は悪いことばかりを与える訳ではないらしい。

そんな事を学ばせてくれた乳がん。ちょっとだけ感謝かな。


…続く。



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