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14/7/1

「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART5〜

Image by Olia Gozha

前回のあらすじ


二週間が経って僕は二度目の説明会へと向かった。


そこには前回と同じく小林先生の姿や同じグループのメンバーの姿があった。


「今回こそはリーダーになろう!」と思っていたが、結局ディスカッションではまたも自分から立候補することはできず、、、


「やっぱり俺ってほんと情けないな、、、」と落ち込むも、小林先生の言葉に勇気付けられて、僕は初めてのインターンシップを迎えるのであった。


業界研究本という聖書


僕はコンサル系のインターンシップに参加しようと決めたので「ならばその業界を学ばなくては!」と思っていた。


そこで説明会の帰りに行きつけの紀伊国屋書店へと向かい、就活コーナーへとまっすぐ向かった。


ずらーーー!と就活関連の本がそこには並んでいて、「自己分析の仕方」「面接の極意!」みたいな本がたくさん置いてあった。


「まるで受験勉強の参考書みたいやな。」


僕は某然と立ちすくんでその光景を見ていた。


他にもスーツ姿のいかにも就活生と言わんばかりの人たちが何やら難しそうな本を立ち読みしていた。


「コンサル系、コンサル系、、、」僕は大量にある本の中からコンサル関係の書籍を探していた。


するとその中にふと目に止まった本があった。


「業界研究本?」


見覚えのある、少し分厚めのシリーズ本がそこには並んでいた。


「あ!これよっちゃんが読んでたシリーズや!」


そう、それは憧れのよっちゃんが読んでいた就活本のシリーズであった。


「よっちゃんこれで勉強しとったんや。しかもコンサル系のシリーズもあるやん!」


僕は憧れていたよっちゃんと同じ本を見つけることが出来て嬉しかった。


インターンシップにも参加して業界研究本も手に出来れば、またもよっちゃんに追いつけるからだ。


しかし!


その喜びも裏の値段をチラリと見た時にしょぼんだ。


「う、、、けっこうええ値段するやん。」


少し分厚めと、無駄にカラーな部分もあったのでやはり値段は上等。


僕はそのままそっと本棚に直したのであった。


「さすがに今は本でそんなに金かけられへんからな~」


バイトのシフトも減らした貧乏学生に1000円を超える金額は痛かった。


だからと言って諦めるわけにもいかないので、僕は大学生という特権を活用して図書館で借りようと決めたのだった。


「学校の図書館なら置いてるやろ!」


3年目にして初めてまともに図書館を利用する。笑


次の日、僕は授業が始まる前、、、ウソです。完全に授業は始まっていたが先に図書館へと向かっていた。


何気に僕の大学の図書館は大きかったので、業界研究本のほかにも様々な就活用の本が置かれていた。


「これやー!」と僕の目には昨日と同じコンサル系の業界研究本を見つけた。


中をパラパラとめくって見たが、何やら難しそうな単語がたくさん並んでいた。


「やっぱ難しいんかな…」


ちょっと不安になるも既に申し込みは完了してるので逃げることは出来ない。


とりあえず僕は受付でその本を借りるとダッシュで、、、いやゆっくりと教室へと向かった。


教室に入ると先生がホワイトボードに図を書きながら講義している真最中だった。


辺りを見回すと窓側の席によっちゃんの姿があった。

そう、この授業はよっちゃんと一緒に受けている授業だ。


「いっしー完全に遅刻やん!」


僕が隣に座るとよっちゃんは笑いながら言った。


「あんな図書館大きかったとは知らんかったわ、おかげで遅刻になりましたわ!」


などと訳のわからないことを言って僕も笑っていた。するとよっちゃんが僕のカバンに入っていた本に気づいた。


「いっしーそれ業界研究本やん!コンサル系の仕事目指すん?」


よっちゃんと同じく業界研究本を持っているのが嬉しく「就活をしてます!」みたいな感じに思えた。


僕はよっちゃんにインターンシップの件や、コンサル系に興味を持ったいきさつを話した。


「なるほどな~、いっしーも頑張ってるんや!そりゃ俺も頑張らなアカンわ!」


「いやいや、よっちゃんのほうがたいがい頑張ってるよ!俺もよっちゃんのおかげでインターンシップの存在知ったしね!」


久しぶりのよっちゃんとの会話は楽しかった。


お互い就活を頑張っている真っ最中。よっちゃんのおかげでいつの間にか就活に対しての不安は消えていた。


「ならまたいっしーが受けたインターンシップがどんなんやったか教えてな。楽しみにしてるわ!」


「おっけー!またどんなんやったか話すわ!」


授業はあっという間に終わり、僕とよっちゃんは途中まで一緒に帰って就活について話していた。


そしてとうとう、僕はインターンシップの日を迎えたのであった。



初めてのインターンシップ


いつの間にか7月に入り、家の前ではミンミンと蝉が鳴いていた。


その日僕はいつもより早起きをしてスーツに着替えた。


そう、待ちに待ったインターンシップの日が来たのだ。


落ち着かない様子で家を出て、僕はプリントした地図を見て目的の会社を目指した。


「やっとこれでよっちゃんに追いつける!」


小さくても確実に一歩ずつ進んでいるような気がして僕は嬉しかった。


その会社は少し遠く、僕は見慣れない駅で降りて辺りを見回した。


「なんかビルばっかりのところやな~!」


おそらくオフィス街なのであろう。辺りには娯楽施設は一つもなく、無機質にビルばっかりが並んでいた。


「これはダンジョンやわ…ちゃんと地図確認せんかったらアウチやな。」


カバンから地図を取り出して、僕は目的の会社を目指した。


その途中、僕と同じように地図を見ながらさまよっている就活生がいた。


「うわ!あの人もおんなじインターンシップに参加する人なんやろか。みんなやっぱ来てるんやな~」


就活生が二人、地図を見ながらさまよっている、、、


その光景を意識しただけで面白かったが、その人も結局同じ方向に向かっていた。


「もう絶対あの人もおんなじやわ!ってことは他にも就活生おるんちゃうかな?」


僕は遠くのほうを見渡すと、通ってきた道の後ろのほうで何人かの就活生の姿が見えた。


どうやら今日のインターンシップには結構な人数がくるようだ。


たとえそれが赤の他人でも、自分と同じ就活生の姿を見るとなんだか安心できた。


そうこうしている間に僕は大きなビルの下までついた。どうやらここが目的地らしい。


入り口に近づいていくと自動ドアの向こうに「インターンシップはこちらです!」という看板が置かれていた。


「とりあえず無事にたどり着けましたか。」


僕はスーツを整えると、力強く一歩を踏み出してドアをくぐった。


初めてのインターンシップ


エレベーターで14階まで向かうと、スーツに身を包んだ会社員の方が僕を案内してくれた。


通された部屋は大きく、おそらく100人くらいは入るであろう場所だった。


早くも前の席は埋まっていて、僕は真ん中あたりに座ることにした。


机の上にはその会社の資料と、「コンサルとは?」というタイトルの資料が置かれていた。


「とうとう俺の就活が始まったんやな!!」


初めて本格的な企業訪問が出来て僕は嬉しくなった。


予定開始時刻までまだ時間はかなりあったが、それでも続々と就活生が現れてきた。


「みんなやっぱり気合い入ってるんやな~!」


僕は部屋に入ってくる就活生を観察していた。コンサルということなのか、女性よりも男性のほうが多い気がした。


開始時刻が近づくと、今度はその会社の人たちも続々と入ってきた。


まだ若手っぽい人から中堅、そして役職的にはかなり偉い感じの人まで。


「おぉ!とうとうインターンシップが始まるのか!」


僕は期待で胸が膨らんだ。


そして10時ちょっきりにインターンシップは始まったのである。


橘くんという先輩


おそらく中堅?っぽい人が前に立ち「それではインターンシップを始めます!」と言ってインターンシップが始まった。


僕が初めて参加したインターンシップは、どちらかと言うと企業説明会に近かった。


まずは企業の生い立ちから始まり、次にどんな仕事をしているのかの説明。


「これが企業説明会かー!!」


初めて企業の話しを聞けて僕のテンションはMAXに上がっていた!


それまで説明会と言えば就活支援センターの説明会だったが今は違う。


日々ビジネスを行っているリアルな企業の話を始めて聞いているのである。


一通り企業の生い立ちと仕事内容の説明がされた後、司会の方が次のプログラムを紹介した。


「では次に、今年入社予定の橘くんのお話をしたいと思います。橘くんはみなさんと年も近いのでおそらく共感できる部分もたくさんあると思いますよ!」


なに!?今年入社予定の人の話を聞けるのか!


つまりそれはまだ大学生で、ついこの前まで就活を行っていた人。


しかも僕は一浪しているのでおそらく同い年の可能性が高い、、、これは面白そうな話が聞けるなと思ったのだ。


そして実際この橘くんの話は面白かった。


彼は前に立って挨拶をすると、次に自分の就活について話しをしてくれた。


「ちょうど僕が就活を始めた時、リーマンショックの影響で内定取り消しとか氷河期とか言われ始めました。その中で友人たちが次々とやれ説明会だの面接だのを100社以上受ける人も多数いました。


でも僕はそんな話を聞くたびに何か違うなって思ってました。


確かに世の中不況で内定も取りにくい時代。かと言って何でもかんでも受けてとりあえずもらう内定に意味なんてあるのでしょうか?


僕は無いと思います。


それよりも自分がしたい仕事、やりたいことを見つめ直して仕事は選んだほうが良いと思いました。


だから僕はこの企業含めて説明会は3社しか受けてません。


そしてその3社の中で一番自分の考えと近かったこの企業に入社することを決めました。


だからみなさんも是非自分が一体何をしたいのか?ということは常日頃から考えていて下さい。


それが必ず自分の進みたい道へと連れていってくれるきっかけになりますから。」



すげーーー!



僕は素直に感動していた。おそらく同い年であろう橘くんからは、自分では想像できないくらいの信念を感じた。


色んな想いがあってこの企業に入ったことは、その一つ一つの言葉から感じることができた。


さすがリーマンショック後の世代。その中で内定を勝ち取った橘くんはただ者ではなかった。


彼が話し終わった後、会場には大きな拍手が響き渡った。


そりゃそうだ。僕らと同じようについ最近まで就活をしていて、色んな壁や不安を乗り越えてきた橘くんの話しはとてつもなく共感できた。


「やっぱすごい人はいるもんやな~!」


小林先生しかり橘くんにしろ、自分の信念を持っている人はやっぱり違う。


「俺もちゃんと何がしたいのか考えないとな!」


気を引き締めながら僕はそう思った。


そして次に3年目の社員、5年目の社員と順に紹介があり、最後には10年目の方の話があった。


そしてこの10年目の人の話しで、僕は「コンサル」という仕事がいかに人間臭くて泥臭いかを知ることが出来たのだあった。



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