
言葉が通じなくても互いが理解しようと努力すれば理解しあえると感じさせられた体験
2001年の話。
当時の私は親元である鹿児島で自由気ままなフリーター生活をしていた。この日は付き合っていた彼女と初めてのドライブ。今思えば付き合って初めてのデートでもあったので少し気合が入っていたような気がする。
昼過ぎに私たちが住んでいた鹿児島市を出て、のんびりと鹿児島県を北上。車は阿久根市というところに入っていった。阿久根市は海沿いの道路がとても綺麗なところ。ちょうどこの時は夕陽が海に落ちる時間だった。
私「綺麗なトコだねー」
彼女「そーだねー(^。^)」
私「お!あそこでちょっと休もうよ」
海沿いの道路にみつけた道の駅。駐車場も広めで海を眺めるには絶好のロケーション。長時間の運転にも疲れたところだったので小休憩をとることに。
私「あー疲れたわー(^_^;) 飲み物買おうか?なにがいい?」
彼女「そーだねー(^_^)なんでもいいよー」
まあよくある他愛のない会話をしながら、販売所でジュースを買って、駐車場に戻ってきた。
そのとき!
私たち二人の目線の先には駐車場奥の公園で夕陽をじっとみつめる西洋風の外国人がいた。
私「え!?なんでこんな田舎に外人が!?」
と、瞬間的に私は大変興味をもった。都会ならさほど珍しくもない外国の方だが、田舎ではあまりみかけないので、ここにいる理由を知りたくなったのだ。
私「なんで外人がこんなトコで夕陽を眺めているんだ!?(゜o゜)よくわかんねーから話しかけてみっぞ!」
彼女「えっ???……ほんとに!?(・_・;)」
とまどう彼女を尻目にズンズン外人さんに突き進む私。彼女の顔は少し引きつっている。まあ当然だろう。初デートで見知らぬ外人に話しかけようなどと、のたまわるのだから……
この時、私はその外人さんに対し、「日本に一人で来てるなら多少は日本語大丈夫だろう」と勝手に判断していた。なんて短絡的で馬鹿げた判断なのだろうか。。※そもそも当時も今も私は英語なんぞできない。できるわけない。偏差値30クラスの高校で英語のテストは赤点だったから。
外人さんに近づいた私は満面の笑みとジェスチャーで挨拶
私「はろ~ヽ(^o^)丿」
外人さん「ハロゥ!ヽ(^o^)丿」
む!いい反応だ。いける!
こう感じた私は、かねてから西洋人とコミュニケーションを取るために準備していた二つの言葉のうちのひとつを繰り出した!
私「きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず??」
おし!決まった…手応えありだ
そう感じ「このあとは日本語でOK!という流れになるだろう。。」と思った。しかしやつは手ごわかった……
外人さん「オォウ……ノゥウ…(-_-;)」
なんてこった!
なぜ日本に来たくせに日本語がわからんのか!この外人はo(`ω´ )o
この言葉が通じないとは…話しかけて失敗だったか!?
と、思った矢先、やつのターンになった。身構える間もなくヤツがはなった言葉、それは…
外人さん「キャンユースピークイングリッシュ?(^。^)」
!!これは…
私がダメだと思った瞬間、奇跡は起こった!
おお!わかるぞ!私にもその言葉はわかる!
西洋人とのコミュニケーション術第二の言葉として覚えておいたのは、まさにこの言葉だった。「基本的に日本語じゃないとダメだ」ということを明確にする。これが外国人と対峙した時の私のルールということだ。と、なるとこれに対する私の答えは決まっている!
私「オォウ……ノウゥ…」
「……(゜o゜)」
普通、英語で聞いてきたんだから英語できるだろ!?なのにこの日本人はなんなんだ!?
だいたい英語で答えているだろ!お前o(`ω´ )o
そんな空気を瞬間的に感じた。。
ただ、彼は知らなかった。私が知っている英会話はこの二枚のカードしかない事を。
外人さん「◎$%☆‘¥??」
次にヤツが畳み掛けてきた言葉はもはや異次元レベル。「くそ!人生において英語力でここまで追い込まれるとは…」( ;´Д`)もはや話しかける前の勢いは崩れ去っている。
「このままではまずい…(-_-;)」そう思ったがすでにカードはない。そうなるともはや笑うしかない。「笑って開き直って車に戻ろう!」と、思って笑ったら、ヤツも笑いだし「まぁ、ここにすわんなよ」というジャスチャーをしてきた。
日本人として相手のおもてなしを無下にはできない。私がヤツの隣に座ると彼女も一緒に隣に。その後、私の英語力に呆れ気味な彼女と協力し、ヤツが広げた地図を見ながら、ジャスチャーと単語による会話が始まり以下のような事がわかった。※ちなみに彼女の英語レベルも中学レベルである
外人さん「俺の名はマルクス。イタリア人の建築士だ。年齢は33歳。兄弟は8人いる。ちなみに結婚はまだだぜ!ヽ(^o^)丿」
私「ほう。そんな男がなぜ日本に??」
マルクス「俺が何で日本にいるかって?俺は世界をヒッチハイクで旅してんだ。中東なんかにも行っていたんだぜ!その後、中国や韓国を経て日本には新潟から入ってきたんだ。ここまでずっとヒッチハイクさ!で、ここの夕陽が綺麗だったから眺めていたんだぜ!」
私「なるほど。しかしぼちぼち陽が落ちるぞ。この後どうするんだい?」
マルクス「あんた「桜島」って知っているかい。噴火ばっかりしているクールな島さ!そこのホテルに泊まって明日は温泉三昧だよ!」
私「うむ。知っているぞ!ただ、住んでいる人間にクールとか言ったら怒られるかもしれんから発言には気をつけような!んで、どうやって桜島まで行くんだ?」
彼女「ヒッチハイクに決まっているでしょ!何を聞いているの!?話わかってんの!?ここまでヒッチハイクで来たって話しているんだからわかるでしょ!?」
私「すまん…いまわかった(-_-;)」
マルクス「HAHAHAヽ(^o^)丿」
私「よし!だったらわざわざヒッチハイクする必要はねえ!俺らの車に乗ってくれい!」
マルクス「Oh! THANK YOU!!」
私「OK!ごー・とぅ・さくらぁじぃまぁーー!!」
不思議な事に会話をしていたら自然と英語っぽいのが出てきた。そして我々の車はマルクスを乗せ、一路桜島へ行く事になったのだ・・
ただ、せっかく出会ったのだから、なにか記念にしたいと思った私は使い捨てカメラを買ってきて出発前、マルクスに写真をお願いした。
私「マルクス!ぴくちゃーおーけぃ!?ぴくちゃーおーけぃ!?」
マルクス「OK!OK!」
写真撮影が終了し、いざ桜島へ…
道中も片言の単語とジェスチャーで話をしてたら、マルクスは酒好きというのがわかった。
マルクス「ヘイ!タク!(私の名前)鹿児島にはショウチュウって飲み物があるんだろ?うまいのかい?」
「なんか鹿児島とか焼酎とか言ってねーか?(;一_一)」
彼女「焼酎っておいしいのか?って言っているっぽいね。」
「おお!そうか!んじゃ居酒屋つれていっか!」
彼女「は?(゜o゜)」
「へい!まるくす!おーけぃ!ぐっ~ど!ごーとぅーどりんく焼酎!!」
マルクス「HAHAHA!!」
彼女「……本気~??(^_^;)」
そんな感じで鹿児島市の居酒屋に到着!
居酒屋に入ると周囲の客の視線を感じる。無理もない。場所がら外国人の客は珍しいのだ。ただ、そこでもトークははずむ。当時は日韓W杯直前。サッカーの話がさく裂する。
マルクス「イタリアは強いけど4強ぐらいかもな!優勝はブラジルだろう」
私「ブラジルか(言っている事がなんとなくわかってきた)」
マルクス「でも、日本も開催国だし面白いと思う。中田グレイト!」
その後もF1の話(フェラーリ最高)各国の女性の話(中国人は冷たかった、ロシアの女性は綺麗だ、日本の女性はかわいい等)などを展開する。ちなみに焼酎はアルコール度数が低いとかでピンとこなかったらしい。度数の高いウォッカが好きとのことなので20度や25度の焼酎では物足りなかったようだ。
まあそんなこんなで盛り上がっていると
店員「たこわさお待たせしました~」
私「おお!来た来た!ヽ(^o^)丿」
マルクス「??ファット?」
途中、出てきた”たこわさ”に興味を持ったマルクス。しかし、たこわさなどどう伝えればいいのだろう?
私「ふぁっと?って言っているぞ。なんて説明しようか?」
彼女「うーーん。。たこはオクトパスじゃなかったかな?」
私「お!そうか!」
マルクス「……?」
私「おーけぃ!マルクス!るっく!るっく!」
マルクス「YES!」
私「あ~…でぃす!おくとぱ~す!わさび~!ぐるぐ~る!!おーけぃ??」
マルクス「オゥ!オクトパース!」
たこわさを指さし、ぐるぐるかき混ぜるジャスチャーで伝えたが伝わったらしい。しかし、もっとも肝心な”わさび”の理解にはいたらなかった。食べさせた瞬間、笑顔が凍りつき非常に難しい顔をしていた・・多分、こらえて食べてくれたのだろう。悪い事をした。。
そして食べ終わり、お会計に行くとお金を払おうとするマルクス。ヒッチハイカーのくせに無理しやがって…
私「マルクゥース!!のーのー!ふれんどふれんど!のーまねーおーけぃね!」
マルクス「オォウ…(゜o゜)THANK YOU…」
ほぼ強引に会計を制した。
出会った時は会話で圧倒的に押されたがここは俺の勝ちだマルクス( ̄ー ̄)ニヤリッ
そんな勝手な優越感に浸っていたら
彼女「ほら、早く行くよー!」
と、突っ込まれる…
そして桜島へ
桜島に行くには鹿児島市から車ごと桜島フェリーに乗る方法が一番早い。無事フェリーに乗り込み、船の上で揺られていた時にマルクスがひとつの提案をしてきた。
マルクス「ヘイ!タク!メールアドレス交換しようぜ!」
私「メールアドレス?いいけどさ…(^_^;)」
今でこそEメールアドレスなど持っていて当たり前の時代になったが、当時の私は持っていなかった。いや、持ってはいたのだが2001年の話なのでTEL番のメールアドレスとなる。これは彼女も同様だった。しかし、他に手段がない。しようがないので「連絡とれるかなぁ・・」と思いつつ交換。
そして、桜島に到着。
しかし、ここで事件が起きる!!
マルクスの宿泊予定のホテルがどこにあるかわからない!ホテルの場所が書かれた手書きの地図を見たがはっきりわからないのだ・・ちなみに当時のカーナビはやや高級品。装備なんてしていなかった。
ホテルの最終チェックインは22:00 この時21:50のこり時間は10分・・
焦りながらも三人で地図を解読し、大体の位置がわかった!
ところが私が致命的なミスをする!
道を間違えた!
\(゜ロ\)(/ロ゜)/
そして到着したのは22:10・・
当然、ホテルは閉まってた・・
ガンガン扉を叩いたが、誰もでてこない・・
私「おい!あけろーー!!ふざけんなよ!!!」
そういいつつ、さらにガンガン叩く私。そんな私にゆっくりとマルクスは近づき
マルクス「タク!……ノープロブレム…アウトサイド・イン・キャンプ!OK!!!」
彼は笑顔で言った
不思議なことにわからないはずの言葉がすっと心に中に入ってきた。。
『そこらで、キャンプするからいいよ』って
私「マルクス……ソーリー…タイムオーバー・ソーリー…」
私が知っている精一杯の言葉で、申し訳ない気持ちを伝えた。そのとき彼は
マルクス「HAHAHA!タク!なめてもらっちゃ困るぜ!!俺は世界でヒッチハイクしてきた男だ。こんなのトラブルでも何でもないぜ!」
そのようなことを言ってくれたと思う。
そしてこれでお別れってなった時、私はせめて何か記念になるものをあげたいと思い、車の中を必死にあさった・・
すると、ダッシュボードに『おじゃる丸』の人形が!!
これだ!!
私「マルクス!!Present for you !!japanese animation character おじゃるま~る!」
自然と英語の授業で習った言葉がでてきた。そして、おじゃる丸人形を差し出すと
マルクス「オゥ!!オジャルマール!!サンキューー!!」
これまた最高の笑顔で受け取ってくれた。
そして、いよいよお別れ
握手をしたあと、また、会える日を夢見て車を出した。
暗かったけど、後ろからマルクスが手を振ってくれているのが、サイドミラーからでもわかった。。
最初は、『えっ』ってなってた彼女は涙ぐんでいた。私も
私「なんかテレビ番組の企画みたいな体験だったな!」
と、つぶやき強がった・・が、涙があふれていた。。
その後、彼が現在、どうしているのかわからない。
交換したメールアドレスはお互いに使われていないのだ。
たった一日
本当に数時間の出会いだったけど、最高の時間を過ごした。
私とこの時の彼女には、イタリア人の友人 マルクスがいる・・
正直、言葉は関係なかった。
ただ、お互い伝えようとする気持ちが大事なんだって
理解しようとする気持ちが大事なんだって
人種とかも全く関係ない。
出会いとは素晴らしいものだと彼は教えてくれた。
そして最後に…
この時の彼女は十年後、私の嫁さんとなる。
また、この体験は私の人生に大きく影響を与えたのだが、それはまたのちの話である。

2002年 マルクスと私
ぴくちゃーおーけぃ?ヽ(^o^)丿
※乱文となりましたがお読み頂きありがとうございます
いつの日から彼に再会できたら…そんな事を考えながら無心になって書きました。10年以上前のことをこんなに覚えているのは、その体験の鮮烈さもありますが、ブログにかいつまんで記録を残しておいた事も大きいです。
本文でも書いていますが彼と交換したメールアドレスはお互い使えず、facebookでも同じ名前の方が多数いたり、どうしようもない状態です(^_^;)
願わくば多くの方に、このStoryが目にとまり、彼にも伝わればありがたいと思っております。
本当に最後までお読み頂き、ありがとうございました!

