top of page

デンマークにある障害者と健常者がともに学ぶ学校で。~脳性麻痺をローションで滑らせてボーリング~

Image by Olia Gozha

 ローションボーリング

 このタイトルを見て、え?何言ってるん?と、これを覗いてくれた多くの人が思うでしょうか。というか、まず、イメージ湧いてますか?大丈夫ですか?ローションで滑らせてボーリング・・・?脳性麻痺の子が、えいってボーリング投げるの??違います。もう、勘付いてるんでしょー。脳性麻痺の子がボールになってローションで滑ってピンを倒すと。ちょうどいいよね。脳性麻痺の子って少し丸まってるから、ボールにぴったり。えーーーーーー!倫理!人権!と叫ぶ声が聞こえる。両方ともあるよ。あってこれなのです。ちなみに発案者先生だからね。大丈夫なの!これでいいの!だってここは、デンマークですから。

 わたしがこのローションボーリングを体験したのは(笑)、デンマークにある、とあるフォルケホイスコーレだった。フォルケホイスコーレというのは、日本語に訳すと国民学校。高校を卒業した人や、社会人を経験した人など、様々な人が通う学校だ。ちなみにデンマーク人であれば無料で通える。わたしは日本人なのでお金は払ったが、授業料と生活費を含めてもかなり安かった。デンマークにはたくさんのフォルケホイスコーレがあり、皆そこで、集団生活と、生きる力を学ぶ。わたしが数あるフォルケホイスコーレの中で選んだのが、障害者と健常者がともに学ぶとてもユニークなフォルケホイスコーレだ。ここでは、とてもたくさんのことを学んだし、生き方についてもかなり変わった。毎日毎日、ぽろぽろと固定概念が零れ落ちていったのを覚えている。でも悲しいかな、帰って早2年がたとうとし、あの時身に着けた感覚が逃げて行ってしまってるような気がするよ。なので、少しずつ、体験した事をつづっていこうと思う。

 

 そもそもなんで自分がデンマークの、それも障害者と健常者が一緒に生活する学校に行こうと思ったか。聞かれた時は大体、「はい、わたしは音楽療法に興味があって(音大卒です)、ここの学校は音楽療法もさかんで、そして福祉先進国であるデンマークで福祉についても学べると思いました。」と答えていた。けど、実際は最初からそういったわけではなく、一番の決め手はお金が安く済む!という所だった。でも、本当に音楽療法には興味があった。というか、お金が潤沢にあれば、音楽療法で大学院に行きたかったのだ!でも、一体わたしは何年社会人をしてお金を貯めればいけるんだ・・・そう思って、目標を「資格取得」から、「偵察」に切り替え、半分遊学気分で決めた。それに、福祉系の学校ならば、あまり自分の目指す道から遠くないし、聞けばその学校も音楽療法には前向きらしい。いいじゃんいいじゃん!決まり!わたしはデンマーク並びにヨーロッパに、最先端音楽療法を偵察に行くのだ!!

 

 いざビザを取り、授業料を振り込み、仕事を辞め、夢と希望をスーツケースに詰め込んで向かったデンマーク。到着した1月のデンマークの印象は、まさに「絶望」。朝は8時過ぎまで暗く、夜は4時半にはもう日が沈む。木々は枯れ、空はどんより曇ってる。冬死にたくなる人の気持ちがようくわかった。わたしなんて、夢と希望詰め込んできてるんだからなおさらよ。オーフスという駅からタクシーに乗って学校へ向かったが、タクシーから流れる景色は、心躍る景色でもなんでもなく、わたしはこれから始まる半年間がとても不安になった。えらいとこに来てしまったな。

 そして学校に着いた。わたしは、障害者の学校を選んだが、実は、障害者と接した事がほとんどない。さらには、かなりの偏見があることも確かだ。映画でも何でもそうなのだが、怪我を負うシーンがわたしはどうしても見れない。後遺症、失明、切断、どの言葉もわたしの中では5年は夢に出るタブーなのだ。だからその偏見をなくしたいという気持ちも学校を選んだひとつにあった。だが、学校へ入ったらどうだ、いきなり手のないモニュメントがあり、首を持った絵がでかでかと飾ってあり、事務所には、両足のないおじさんと背の低いおばさん。廊下にはチューブをつけた車椅子ユーザー。どうしたらいいのかわからず、鼓動がとてつもなく大きく鳴ったのを覚えている。いくらなんでも荒療治だろ。学校は薄暗いし。わたしやっていけるかな・・・初日ではそんな事を思った。


 学校は、主にテーブルグループという食事を一緒にするグループと、日本人クラス、このメンバーが主に一緒にいるメンバーだ。日本人クラスは、総勢12名、日本語で、デンマークの福祉、教育、文化、いろいろな事を学ぶ。色々な事を学んだが、この授業は非常に興味深かった。最初1週間は、日本人クラスで、まず一通りの生活スタイルを確立させ、そしていざデンマーク人と合流した。

 最初、テーブルグループでやったアクティビティは、段ボールを使って部屋を作る事。

 

 







←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page