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14/3/25

海外ノマドな姉が、引きこもり4年目の弟を芥川賞作家にしようとする話

Image by Olia Gozha

私は現在、起業4年目です。

自分でデザインしたエプロンを、ネットショップで販売しています。

ショップ運営の他には起業支援、時間と場所にとらわれない働き方を目指す「海外ノマド倶楽部」のディレクター(運営)をしています。


基本はどこでも仕事が出来るので、国内外を問わず気分や気候に合わせてふらっと出かけています。


午前中は仕事、午後は観光。

30歳、まさに独身貴族です。

そんな私には、引きこもりの弟がいます。

28歳、出たり入ったり、引きこもり4年目。

うわ!人生の7分の1を、弟は引きこもっている!


私が太陽だとしたら、弟は月。

性格は正反対ですが、割と仲良くやっています。


先日いつものように旅から帰ってくると、家の雰囲気が少し変わっていました。


なんだか、、、、暗い、、、、、、


どうやら父親が引きこもっている状態について、弟と母親を責め立てたようです。

しかも、今回は弟が泣いたらしい。


28歳の男が、親に怒られて泣くとか可愛そう。

父親の気持ちも分かるけど、怒っても仕方ないじゃん。


自由な性格の私から見ると、それくらいの気持ちでした。

しかし弟は今回の一件で、外に出る決心がついたようです。

でも、面接で落ちました。

しかも、飲食店のバイト。


「いやいや、居酒屋で落ちるとか無いでしょw」

母親「あの子も、何か考えがあったみたいよ。」

「引きこもりから、居酒屋のバイトってハードル高くない?大きな声とか出せるのかな?」

海外にいるビジネスパートナーとチャット会議をしながら、適当に会話をしていました。

母親「でもさぁ、兄弟ってバランスを取ると思うのね。あなたが自由な分、弟は自由に出来ないところがある。あなたがこうして1週間旅をしている間、私が心配する姿をあの子は見ているから、「自分はそんな風に出来ない」「姉のようにはならない」と思っているところがあるのよ。」

「う、うん。(そんなこと言われたら、何も言えないよ)」

母親「小さい頃から、弟の面倒を見てってお願いしたことないよね?」

母親「あの子、ごく普通のサラリーマンにはなれないし、向いてないと思うの。あなたはそうやってパソコンがあれば仕事が出来るんだよね?30年間自由にしているんだから、弟をどうにかしてみてよ。」


う、うん。すごい課題が来ました。


たしかにお姉ちゃんだからって、弟に何かを譲るように言われた記憶はありません。

母親が長女として育ち、それが嫌だったから、私に対して「姉」というレッテルを貼らなかったのだと認識していました。ただ、私が譲っていないだけで弟は私に譲ってきたのかも知れない。


良くも悪くも自由人と自覚している私は、反省です。



ちょっとひと肌ぬいでみようか!


そう思った私はさっそく弟にやりたい事を聞いてみました。

「何か好きなものとか、やりたいこと教えて?」

私は「好き」をビジネスにしています。家に居て稼げる方法は沢山あるけれど、せっかくなら弟にも好きなことを仕事にしてもらいたい。しかもこれは普段から他人に教えていることだから、余裕です!

そんな気持ちでした。

「やりたいことはない。家に居たい。」

そうは言っても何かあるでしょ。


フィギュア好きじゃん?

→ネットで国内外に向けて販売してみようよ!

自転車好きじゃん?

→自転車用の洋服を輸入して販売してみようよ!

下着好きじゃん?

→男性が選ぶ女性下着専門店とか良いよ!


「好きだけど、ビジネスにするのとは違う。ゼロからイチにするのって苦手。やりたいって気持ちが芽生えるなら引きこもりはやっていないよ。」

「やりたいことはない。ただ、家に居たい。」

、、、ダメだ。


私の元には「○○がしたいです!」「こんな夢があるんです!」という人が多いので、やりたい事を見つけるところからスタートするのは大変だと知りました。

しかもネガティブだし、正直イラっとする。リビングは一触即発です。


、、、落ち着け、落ち着くんだ。わたし。


実は、私も引きこもりの経験があります。


ビジネスで信じていた人に裏切られて、全てが嫌になりました。行動するたびに「何か裏があるんじゃないか」と疑う日々です。かわいいエプロンを作りたいだけなのに、駆け引きや嘘に翻弄されて疲れてしまいました。そのうち、起きても楽しいことなんてない。がんばりたくもない。目なんか覚ましたくない。と部屋に閉じこもっていました。


人間不信でしたが、家族と古くからの友人は別でした。ビジネスは休止して、友人と穏やかな日々を過ごした結果、私は復活できました。

きっと弟も、似たような気持ちを抱えているのだと思います。私のまわりには沢山の人がいるけれど、弟にはいないみたいです。引きこもりの弟の近くに居るのは家族だけです。なんだか切なくなります。


どうにかして弟に寄り添えないだろうか。

考えよう、考えるんだ。


んん?ちょっと待って??

「家に居たい」

これも、ひとつの願望だ!



私は「自由に、国内外を旅したい」

弟は「自由に、家に居たい」


私の周りには「ビジネスをノマド化して、海外を楽しみたい」という人ばかりです。弟とは正反対に見えますが「自由に好きな場所で過ごしたい」という点では同じです。

好きな場所に居たい。ただそれが弟の場合「家」なのだと理解しました。


そうと分かれば、居酒屋でのバイトは希望のライフスタイルから外れる行為です。落ちて良かったです!幸いなことに「家に居たいだけで、働きたくない訳ではない。」とも言っています。


家に居ながら、お金を得る方法は沢山あります。

ネットショップ、転売、アフィリエイト、FX、内職、、、

実際にこれらで生計を立てることは可能です。


ただ、なんとなく弟には違う方法が必要な気がします。

「やりたいことがないのは分かった。憧れの職業とかはある?」

「うーん。ない。」

「読書とか好きじゃん?小説家は?批評するの好きじゃん?コメンテーターは?」

「家から出たくないし、初めての人と話すの苦手。まだ文章書く方がマシ。なんでもいい。決めてくれていいよ。」

「じゃあ、文章を書く仕事にしなよ!機械には出来ない仕事だし、これから重要も増えると思うよ。家から出なくていいしね。」

「じゃあ、手始めに今の気持ちを書いてみてよ!」

「わかった。」

その9時間後、弟から1通のメールが届きました。

添付ファイルを開けてみると、そこには弟の気持ちが綴られていました。


4400字。


長いよ!(笑)

ただ、この文章を読んで2つの事に気がつきました。


1つめは、引きこもっている弟の気持ちです。

複雑な、切ない気持ちになりました。


2つめは、「弟、天才かも知れない!」という発見でした。


素直に読み物として、面白かったのです。


この才能を発表したい!


早速、私のfacebookに4400文字の文章を投稿しました。

大反響です。ちょっと嫉妬するくらい、長文の熱いコメントが入ってきます。


「思わず読み入ってしまいました」

「価値観って人それぞれですね」

「文章天才」


facebookの表に見える部分では「面白い」と評価される一方で、現在ひきこもりを家族に持つ人からは「涙が出ました」「ひきこもりの妹の声を聞いたようで苦しくなりました。向き合いたいと思います。」と、個別にメッセージが沢山届きました。


確かにひきこもりの気持ちを、淡々と書いた文章をあまり見たことがありません。

ブログやどこかに投稿されているのかも知れませんが、コミュニティ外の人が読むことは珍しいです。

弟のエッセイも、環境や属性が異なる私のfacebookで投稿したからこそ、反響があったのだと思います。引きこもりコミュニティの中で投稿しても、珍しくないでしょうから。


弟が引きこもりだと他人に話すと「いかに家から出すか」「引きこもりを抜け出すか」という話になりますが、私は引きこもりのままで良いと思っています。


みんなが、グループ行動が好きなわけじゃない。

ひとりで本を読む子が居たっていいじゃない。それが好きなら。


私のfacebookやSTORY.JPさんで発信することによって「こんな人も居るんだな」と思ってもらえたら幸いです。


現在は「他にもエッセイを読みたいです」というリクエストにおこたえして、メール配信をはじめました。(当初はfacebookで1通ずつ送信していたのですが、同じ文章をたくさん送信するのでスパム扱いになりました)

1回目は「下着について」です。女性の下着に物申したいそうです。


これで弟は言い方を変えれば、引きこもりではなく、


売れてないから家に居る、エッセイストです!


今は収入ゼロですが「芥川賞を取った阿部 和重さんを思い出しました」とコメントを頂いたように、いつかは弟も芥川賞作家になるかも知れません。


ってかコレ、面白そうです。

引きこもりのまま、エッセイストとして収入を得たり、コラムニストになれば、これもひとつの生き方ですし、捉え方によっては「夢を叶えた人」にも見えます。


よし!引きこもりの弟を芥川賞作家にするぞ!


私も既存の生き方からは外れています。

兄弟揃ってアウトローに生きてみようと思います。


※追伸1※

facebookに投稿した4400文字の長文はコチラです。

弟の近況はfacebookにて、投稿しています。

(お友達申請いただける場合は、一言STORYS.JPを見たと添えて頂けると幸いです)


※追伸2※

母親にも報告しました。

「あの子、作家にしようと思うよ。」

母親「面白そうじゃん。お母さんも昔、作家になりたかったんだよね。ちょっとライターみたいな仕事もしてたよ。じゃあ、頼むよ!」

あっけなかったです(笑)

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