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●鏡の自分に驚いた 本を買ってから何も変わることなく半年くらい経ち、次の年の春になっていた。 30代半ば、彼氏いない歴も10年以上。新しい出会いの機会も乏しく、現在の延長上に自分が結婚できるイメージは持てなかった。 そんな折、親戚筋からお見合いの話が舞い込んだ。前のめりになるほど興味をひかれた訳でもないが、特に断る理由もない。ずっとトボトボと歩き続けているトンネルから外に出られるきっかけになればという思いもあり、お会いしてみることにした。 しかし、困った。 お見合いって、どんな格好で行くの??? 今回は本人同士のみでお茶をするというラフなスタイル。とりあえずネットで検索してみた所、ちょっとおしゃれをした格好であれば良さそう。 いやしかし、「ちょっとおしゃれ」って!持ってないし、そんな服! そんなわけで、慌ててデパートに買いに行った。ワンピースは何だか敷居が高く、結局 カジュアルな雰囲気のベージュのスーツを購入。 当日は、春一番のような生暖かい強風が吹いていた。お見合いの場では、失礼はないか、マナーはおかしくないか、下品でないか、がっかりされてないか、、、などなど、緊張しっぱなしだった。しかし、何とか和やかな雰囲気で会話を進められた。 お茶の後、近くの美術館へ寄ってお別れした。帰り道では、「楽しかったかと言われると微妙だけど、お断りする理由もなかったかなぁ」などと考えていた。 任務を終えたような安堵を感じながら帰宅し、さあて着替えようかとタンスに向かう時に、鏡に映った自分の姿が見えた。 ・・・ 驚いたことに、そこにはダッサイ姿の自分がいた。 え、これ、良いと思って買ったスーツだよね?なんで、こんなに似合ってないんだろう・・!? 思わず向き直って、まじまじと自分の姿を見た。 ・・・そこには、恐ろしくオバさんぽい自分がたたずんでいた。 涙が出てきた。 受身的にでも、今までにない一歩を踏み出したことで、何か意識が変わったのだろうか?未だに理由は分からない。何がどうであれ、今までに感じたことのないような嫌悪感を抱かずにいられなかった。 「・・・変わりたい」 あまりの、自分の情けない姿に、涙が止まらなかった。 今度こそ、もう、本気で変わるんだ、と思った。言い訳はなしだ。周りからどう思われるとかも、関係ない。 とにかく、自分で 自分を許せるように。自分で、自分を大切に思えるように・・ 自分の殻に、穴があいた瞬間だった。
【第4話】変身プロジェクトhttps://storys.jp/story/31613
【第1話】きっかけは、自信のない自分 https://storys.jp/story/31600【第2話】自分の殻を破れない https://storys.jp/story/31611【第5話】変わることが恐くなくなってきた https://storys.jp/story/31614
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