第5か国目グアテマラ:
一秒先もわからない大冒険!
「チキンバスっていう見た目もガチャガチャしたバスは安いけど、バスジャックや強盗が多いから一人で乗らないほうがいいよ!」
旅中に出会った友達から情報をもらっていた私は
“チキンバスに乗るのは辞めておこう”と思っていた。
が、しかし、決して思い通りになんて行かず
そんな決意もあっけなく、あっという間に崩れ去った。
【波乱万丈の陸路国境越え】
朝一でバスに乗り移動する予定が、バスがキャンセルとなり、朝から4時間待ち。バスの到着地点から汗だくになって歩くこと1時間、やっとたどり着いたメキシコの国境沿いの街から、ついにグアテマラへ!
メキシコからグアテマラへの国境に着いて、ふと疑問が湧いた。
Mariko(私)「”国境越えって、何するんだっけ???”」
初めて一人での陸路国境越え、とりあえず
目の前にある国境を、思い切って跨いでみた!!
その瞬間、
”一人で国境を越えた!”
何とも言えない感動に襲われ、
一人でニヤニヤしながら
グアテマラのイミグレーションへ。
難なく入国スタンプをもらい
無事に国境越えが終わった、と思ったが、
しかし!!
何かを忘れている予感。
そう、メキシコのイミグレーションを通るのを忘れた
=不法出国をしでかした!!!
(メキシコを出国するときには
出国スタンプと出国税を払う必要があったらしい。)
その辺にいるグアテマラ人にメキシコに戻りたいと尋ねるが「メキシコのイミグレーションは今は閉まっているから無理だ!」と、もうメキシコには戻ることができず(確かに閉まっている・・)
あれよあれよという間にグアテマラマジックにかかっていったのであった。
【チキンバスに身を委ねて】
長距離バスを探している私にグアテマラ人の若いお兄ちゃんが声をかけてきた。
「トゥクトゥク!シンコ!オートブステルミナール!」
なんと、5ペソで長距離バスステーションまで連れて行ってくれるというのだ。
トゥクトゥクに憧れていた私は、乗せてもらうことにした。・・が、このトゥクトゥク、山道をジェットコースターのように走り抜けていく命がけのアトラクションだった!
なんとかバス停まで連れて行ってもらうが、そこに並んでいたのはあの噂のチキンバス!!!
あっちもこっちもチキンバス!!!
Mariko(私)「「普通のバスはないの?」」
と聞くが、皆「ない!」と。
行きたい村の名前を告げると「OKOK、乗れ乗れ!」と。
もう出発するというので迷う間もなくバスの中へ。トゥクトゥク兄ちゃんには、5ペソを渡してありがとうを告げると、なぜか怪訝そうな顔をされた。
グアテマラ人でぎっしりと埋め尽くされたチキンバスがついに出発した。このまま何事も起こらないことをひたすら願った。
バスは山道へ向かいジャングルのような茂みに差し掛かった時、乗務員がお金を回収しにきた。
乗務員「「20ケツァール!!」」
と、そこで、私は
とんでもない事実に気づいてしまった。
そう、国が変わったということは
通貨も変わるということだが
両替するのをすっかり忘れていた!
こんな山道で降ろされたら強盗どころじゃない、命が危ない!!!と思った私は、ありったけのメキシコペソを渡し(請求額よりも少ない笑)、乗務員に必死で頼み込んだ。
Mariko(私)「「メキシコペソしか持ってなかったの。ごめんなさい!!!これでどうかお願いします!!!」」
乗務員「「ここはグアテマラだからケツァールだ。」」
Mariko(私)「「でも、ペソしか持ってないの!お願い!」」
乗務員「「しょ、しょうがないなあ、なんで君はペソしか持っていないんだ・・・???」」
と、しぶしぶ受け取ってくれた。
そして、さっきのトゥクトゥク兄ちゃんの怪訝そうな表情の理由がわかった。通貨が違ったのだ。さらに同じ『5』でも、グアテマラケツァールよりメキシコペソの方が安かった。
なんとまぁ、
国境を越えた瞬間お金がただの
紙切れとコインに変化した!
そこに価値をつけるのは
それを使う私と受け取る相手だった。
後ろの席に座っていた怪しげなおっちゃんが私と乗務員の必死なやり取りを見て、ついに笑い出した。
「こ、ここはグアテマラだぞぉ!両替するのを忘れたのか!わっはっはっは!」
そして、乗務員も、周りのお客さんも、私も笑った。
一気にバスの中が穏やかな空気になった。
どうしてこう、私はいつもどこか抜けているんだろうかと思ったが、そんなことを後悔してももう遅い!乗務員さん、ありがとう。
もう、こうなったら助けてくれる全ての人に感謝しながら、ハプニングすら楽しもう!
【「迷子」の先は、無限大。】
チキンバスに揺られること約10時間(こんなに乗るとは思わなかった笑)、途中、いろんな街で人が乗ってきて(その度に警戒したが)、アイスや食事やおやつを売りに来た。
意外と美味しいアイス!
意外と美味しいドーナッツ!
窓から見えるグアテマラの景色は、自然が豊かで本当に美しかったが、下を見るとゴミも豊か!
眩しく暑い太陽が傾き、日が暮れそうになる頃にバスは最終目的地へ到着した。
“ココはドコ?!”と、困惑する私のところへ来て乗務員は言った。
乗務員「「ここはウェウェテナンゴだ!降りなさい。君の目指す村は遠い。今日はこの街に泊まって、明日また向かいなさい。」」
“泊まるところって・・・?!”、ごちゃごちゃした街は見渡す限り、怪しそうなホテルしかなかった。
Mariko(私)「Wifiもない、ガイドブックも持っていない、現地通貨もない、もう日も暮れ始めている、どうしよう!!」
一人旅に慣れていない私は、日が暮れた後の移動は恐怖が増す。困っていると、ちょうどそこに、ロンリープラネット(ガイドブック)を手に持ってウロウロしている欧米人バックパッカーを発見した。
Mariko(私)「「あのう!どこか安くていい宿は知っていますか?」」
と、勇気を出して聞くと、彼は、彼も今夜泊まる場所を探していて、ちょうど今から安い宿に行くところだと話してくれた。
彼はフランス人で、1ヶ月間の休暇中だという。バックパックで中米を回っているらしい。彼は優しくてスペイン語が堪能でとても頼りになった。宿を案内してくれ、私を安い食堂と両替所まで連れて行ってくれた。
【次々と現れる保護者と引き継がれる私】
翌朝、私はまた問題にぶつかった。目指す村の名前は知っていたが、行き方を調べても全くわからなかった。
優しすぎるイケメンフランス人の彼はその村への行き方を現地の人に聞きまわってくれ、小さなバス停まで私を連れて行ってくれた。
「この子、あまりスペイン語も喋れないんだ!だから、連れて行ってやってくれ、頼んだぞ!」と、ミニバンの運転手へ私の引き継ぎをしてくれた。
私はありったけの笑顔と気持ちを込めてお礼を告げ、彼と別れた。
ミニバンに乗り、美しい景色に魅了されながら数時間走る。どんどん人が乗ってきて、ついに満員になったが、それでも人は乗ってくる。8人乗りの車は、気づけば15人程乗っており、ぎゅうぎゅうになった。
途中の村では大きなマーケットが開かれていた。ここで車を乗り換えるようだった。私は運転手に再び目的地の村を告げた。
フランス人の彼に私を託された運転手は車を降りて、別の運転手へと私を引き継いだ。別の運転手は「ついてこい!」とまた別のミニバンへ案内してくれた。
びっくりすることに、このミニバンに乗っている人はみんな可愛い民族衣装を身にまとっていた。私服にバックパックの私は一際目立った。あっという間にミニバンはまた満員以上になり、出発した。
部外者の私がいなければ、もう少しゆったりと座れるかもしれないのに、誰も何も言わず、みんなの表情はとても穏やかで、自然と私の存在を受け入れてくれているようだった。
ゆっくりゆっくりとバスは進む。そしてついに、
「トドスサントス〜!」
次々と現れる保護者に導かれて
ついに、目的地へ到着!!
【東京と対照の街】
ここは民族衣装が可愛い小さな村。
グアテマラで出会う人たちは
みんな時計を持っていなかった。
のんびりと自然に時間の流れを受け入れて生活しているようだった。都会とは違って急いでいる人もイライラしている人も居ないし、何かに追われているような人も居ない。
バスが故障して1時間待たされても誰も怒る人はいなく、みんな穏やかに笑っていた。バスを降りる時、重いバックパックを背負っている私のことを自然にみんなが手伝ってくれた。
太陽や月の傾きを見て
何にも追われずに生きる。
家族と笑い合う時間、人に優しくできる時間、一人になる時間、働く時間・・時計なんて持たなくても、毎日のリズムが体に染みついているから困らない。
空を見上げて、風を感じ、日の出や日の入りとともに日常を過ごす。
建物は古いし、決して整っているとは言えない街並み、ガタガタ道の長時間移動に、生活感あふれる市場、決して便利とは言えないけれど、そこには温かい家族の笑顔と食卓を囲む人々の和やかな日常があった。
可愛い花々に、緑豊かな木々。
自然と寄り添い生きる人々
裕福ではなくてもそこにあったのは
心の豊かさ。
都会で生きる人たちが知らない
日常の豊かさ。
一分一秒を争う東京にいた時
私は何を大切にして
生きていたんだろうか
と、ふと思った。
何をそんなに
必死で守っていたんだろう。
都会には、素晴らしい面もたくさんある。
やりたいことは何でも挑戦できるし
美味しい食事も楽しい場所もたくさんある。
でも、
”都会”が行き過ぎると忙しさの中で人は壊れる。
お金や時間の有効活用、
新しいものの開発に経済の発展や競争社会・・
そんな機械的な社会の中には”人間”があまりいない。
心臓の鼓動も生きるペースも
寿命も体調も感性も感覚も
みんなそれぞれ違うのに
一つの時計に合わせて行動し
何かを諦めて安全に生きようとする。
本当の人間らしさって何だろう?
この村の人たちの
人と人との絆や笑顔が心に温かく染み渡った。
【私の世界を彩った真実】
チキンバスとミニバンの味をしめた私は、村から村へと次々に移動し、それぞれに開かれているマーケットや民族衣装を楽しんだ。
途中、迷子になっていると、たまたまオーストラリア人のリサという女の子と出逢った。彼女とは感覚が合い、1週間程度一緒に旅をした。
グアテマラの布を見に来た彼女について、いろいろな可愛い洋服の生地に出逢った。世界の中でもトップクラスに美しいと言われるアティトゥラン湖は、周りの街並みも可愛い!
一ヶ月ぶりくらいのちゃんとした食事は、感謝感激の嵐だった。(グアテマラ人はあまり外食をしないのか、街にはチキンとポテトしか売ってない。笑)
夜道の山道のトゥクトゥクは、昼に増して絶叫マシンに変化した。道が見えないのにスピード全開で運転する運転手に必死で「気をつけてぇえー」と叫ぶが容赦なく速度は増す!!!
「マジで怖い!転んだら死ぬスピード!や、やめてぇ〜っ」と叫びながらも諦めた私は、これをいつからかジェットコースター風の絶叫マシンだと思うことにした。
そして、ティカル遺跡!
遺跡によじのぼって、出逢ったたくさんの欧米人バックパッカーと共に、ジャングルに沈みゆく夕日を見送った。国を越えて時間や感情や人生を共有出来ることが嬉しくて、ニヤニヤが止まらない!
私はグアテマラに来た初日から気づけばあまり時計を見ていない。地図も持っていないし、目指す場所の住所も知らない、知っているのは村の名前や、湖の名前や、宿の名前や太陽の傾きだけだった。
それでも、困ることはなかった。
目的地の名前さえわかれば必ず辿り着く不思議。
時計なんて持っていなくても困ることなんてない不思議。
いや、それは、”不思議”なんかじゃなかった。
地球の裏側から来た、言葉もわからない見ず知らずの他人の私を、たくさんの人が助けてくれたから。そして、月や太陽、星や大地が、自然が、目の前にあったから。たくさんの人の優しさや何気ない笑顔に触れ、人と人との間で生まれる温かさを感じ、自然の恩恵を受けた。
嫌な顔一つせず当たり前のように注がれた優しさや、当たり前のように認められた自分という存在、そして、どこまでも広がる自然が、まだまだこの世界を信じきれていなかった私に、生きる喜びを、思い出させてくれた。
暗くなったら寝るし、日が昇ったら起きる!
当たり前のようにみんなで支え合う!
今を生きるのに
本当に必要なことは全部
人や自然が教えてくれた。
「忙しさ」の裏側には
「優しさ」があった。
”この世界は本当は
優しさで溢れていたんだ。”
目の前の景色が
ますます輝いて見えた瞬間だった。
そして、思い通りにいかない現実は
想像以上の喜びに出逢わせてくれた。
時計も見ず、焦らず、自然の声に耳を傾け
太陽と月の傾きで時間を感じ
チキンとポテトで命をつなぎ
思い通りになんて行かない現実を楽しんで
行きたい場所の名前を連呼して
人の優しさを知り
ありのまま世界を見たグアテマラの旅は
私の日常をさらに、色鮮やかにしてくれたんだ*