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17/2/10

「癒し」を語る人は癒せない

Image by Olia Gozha
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 多くの人たちがヒーラーやセラピストという仕事に憧れます。少なくとも、外科医に憧れる人の数よりは多いでしょう。そして、多くの人たちが「癒し」を語ります。魂の癒し、ヒーリング、成長・・・ 

しかし、「癒し」を掲げて仕事をしている人で、本当に相手を癒すことに成功している人を、私は今まで見たことがありません。反対に、看護師、医師、教師、芸術家、そして多くの「商人」たちが、自分でも気づくことなく、相手を癒すことに成功しています。なぜでしょう?

「癒し」は意図して施せるものではないからだと思います。時期が来た時に「起こる」ものです。だいたい、何がその人にとって「癒し」なのかは、他人にはもちろん、当人自身にも、本当には分からないはずなのです。例えば、病気が治ることはその人にとって癒しかも知れないし、癒しではないかも知れない。ただ一つ、確かな指針があります。それは、「すごく楽しい」時、つまり大きな喜びを感じている時、人は治癒されています。

人を喜ばせることは、そう簡単なことではありません。「喜ぶかな」と思ってやったことには無反応で、まさかと思うようなことに大喜びする・・・ということはよくあることです。相手のことをよく理解していなければ、その人が本当に喜ぶ贈り物をすることは出来ません。

「商人」は、まさに、これが出来なくては商売あがったり、喰いっぱぐれるわけです。だから命がけで相手のニーズを探り、心をつかむ術を考え出します。

反対に、ヒーラーやセラピスト、教師という職業の人たちは、特に日本では「先生」と呼ばれ、教える立場として見られることがほとんどです。だから、どうしても相手より上に立ってしまいがちなのだと思います。相手を判定、診断し、必要なことを教える・・・一見まっとうに聞こえますが、これは相手に対する力の行使、自由の侵害です。

成熟した教師は言います。「教師の役割は生徒が学ぶのを助けることに尽きると。」 ヒーラーやセラピスト、カウンセラーは本来、患者をラクにするためにご奉仕する商売です。「人を救った」という自己満足感や自己肯定感に浸るためにする仕事ではありません。

魂は不滅のものであるとか、子供は親を選んで生まれて来るとか、すべては運命であるとか、成長のための試練であるとか、そういうことがスピリチュアルと関わる人々の間では当然のこととして語られますが、これらのことは、「すべて人間の脳が見せている幻想である」という考え方と同じように、証明も出来ないし、証明する必要もないことなのではないかと思うのです。自分が信じるのは自由ですが、「真実」として他人に押し付けるべきことではありません。しかしながら、こういったことを「教える」という形で相手に刷りこんでしまうヒーラーやセラピストが、残念ながら非常に多いのです。

 私は何年にもわたって精神を病みました。いろいろな療法やヒーリングやカウンセリングを受けました。でも、結局、私の心に息吹を送り、新しい力で満たしてくれたのは、すべての情熱を惜しみなく注いで、自分に与えられた役割を担い、生きている人たちの姿でした。それは、ノーベル平和賞を最年少で受賞したマララ・ユスフザイさんであり、上橋菜穂子さんの小説「守り人シリーズ」に登場するバルサであり、精神科病棟の仲間たちであり、日々悩みながら、闘いながら、より自由で、より美しい演奏を探り続けている私の音楽の師匠(演奏家)でした。

だから、私はセラピストという自分の職業を一旦、手放しました。そして、音楽を売る商人になりました。演奏家です。

たとえそれが、ほんの何パーセントかでも、自分を励ますために、自己満足感を得るためにセラピストでいることが嫌だったのです。もう私は「癒し」を語りません。日々、ただただ、お客さんのニーズに応えるような、わくわくするような、美しい洗練された商品を一生懸命にこしらえています。セラピーに比べて、コンサートはお客さんの自由度がずっと高い。私の演奏を聴きたくなければ、コンサートに来なければ良いのですから。この売る側と買う側の対等さが、私にとってはこの上なく心地良いのです。

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