息子が生まれてからというもの、遠方の義理母がよく我が家に来るようになっていた。
義理母はいつも仕事で忙しそうにしていたのだが、結婚式の衣装を自ら縫ってくれるなど、要所要所でお世話になっていた。
しかし、だんだんと訪問の頻度が増していて、嫌な予感がしていた。
というのも、我が家はその頃まだ1ベッドルームの小さなマンションで、大人3人と赤ちゃんが1日一緒に寛ぐには狭かった。
それならば、と主人と外出してみるも、私達の居ない間に息子と遊んでいる気配はあまりなく、頼んでもいない台所の配管の掃除などをしてくれていた。
私は、義理母が自分の親の介護に疲れ、時々こうして休みに来ているのではないかと思っていた。
ある土曜日、義理母がまた「明日来たい」と連絡してきた。
主人に何時頃到着するのか聞いて貰ったが、一向にメールの返事がない。そこで主人に電話をして貰ったところ、激しい口論になった。
なんでも「息子の誕生日を祝いたい」と言いながら、一方で「離婚しろ」と言っているようだった。
あまりにも理屈の通らない話に主人が激怒し、「明日はもう来なくていい」と言って、その日の電話は終わった。
しかし、それでは終わらなかった。
翌朝9時に「今最寄り駅に居るから迎えに来い」と電話を掛けてきた。新幹線のようなもので少なくとも1時間半は掛かる距離。一体朝何時に家を出たのだろう。考えれば考えるほど怖くなった。
主人が「今日は帰ってくれ」とメールを打った直後、マンションの呼び鈴が鳴った。
怖い、怖い・・・
どうして皆、寄ってたかって私に暴力をふるうのだろう?
私は主人と息子と三人で、穏やかな家庭を築きたいだけなのに・・・
そうだ、そう言えば以前にもこんな事があったような気がする。
幸せを壊された記憶
こうして、20年前に封印した筈のパンドラの箱は開いてしまった。
私はフラッシュバックを起こしてしまったのだ。