私の父。
58歳、無職。
母と別れて何年後かに、変な宗教にハマっている金持ちの女性に出逢い、
一軒家を建ててもらい、現在は長野県に住んでいる(らしい)。
父と別れて暮らすようになったのは、小学校1年生の時。
離婚が成立したのは、たしか3年生の時。
お母さんが夜、私の布団の横に立ち、ごめんね、ごめんねと
泣きじゃくっていたのを今でも鮮明に覚えている。
弟と妹がいるのだが、二人は泣く母をみてもらい泣きしているのに
私は、何故か涙が出なかった。
何故か何も感じなかった。
離婚の原因は、「浮気」と「借金」とありがちな理由。
ありがちでも、経験した人にしか分からない苦労。
私がまだ幼稚園に通っていたころ、
「おとうさんしゅっちょうにいってくるよ」
といって、1週間ほど家を空けた時があった。
父が帰ってくる1~2日前に、受話器に怒鳴り散らす母の言葉が今も耳に残っている。
「どうせおんなとはわいにいってるんでしょ!」
帰ってきた父はこんがり日焼けして帰ってきて、私にお土産を差し出してくれた。
母はすぐにお土産を取り上げて、
「うわきりょこうでかってきたおみやげなんて、こどもにわたさないで!」
とすぐゴミ箱に捨ててしまった。
バツが悪そうに、へへへ。と笑う父。
当時は浮気とかハワイとか女とか、分からない年頃のはずなのに、
母の怒りと剣幕のおかげで、”お母さんが発した怒りのメロディ”として私の記憶の中に残った。
どんぐりころころとか、
げんこつやまのたぬきとか、
幼稚園の先生から習った歌とかと同じ。
「うわきりょこうで」
「おんなといっしょ」
という聞きなれない歌として残った。
意味を理解できるようになった思春期に
「あ・・・あの時のお母さんが言ってたはこういう意味だったんだ・・・!」
と、記憶がフラッシュバックして、悲しい気持ちになったものである。
続く・・・