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16/10/11

ファイナンス入門 (24) 今年のノーベル経済学賞

Image by Olia Gozha

今年のノーベル経済学賞の受賞者が発表された。英国出身のハーバード大学教授ハート氏と、フィンランド出身のMIT教授のホルムストローム氏の二人。

受賞理由は、「契約理論」の確立への寄与。

契約?

それって法律学では?

契約理論と言ってもルノーなどの社会契約論とも違う。

簡単に言うと、それまでの契約理論では当事者はあらゆる事態を想定して契約を結んでいるとの前提に立ってその行動を分析したが、この前提が非現実的であることは自明であり、ハート氏はすべての状況を織り込んだ契約を結ぶことは不可能であるとの不完備契約の観念の上に立って、当事者が予期せぬ事態が起こった時にどの様に振る舞うかの分析、モデル化を行った。

特に、インセンティブ、情報、所有権の観点から、当事者の合理的な行動に繋がる契約の役割を一般化した事が経済学のみならず社会一般にも大きな影響を与えた事が評価された。


ちなみに、ハート氏の著書の紹介文では、「不完備契約理論は、およそ経済取引において、すべての起こりうる状況を網羅し何が起こっても対処しうる完璧な契約を結ぶことは本来不可能であるという、極めて現実的な認識から出発する。この立場から様々な現象について議論し、さらに伝統的なアプローチが分析の対象としてこなかった「パワー」の問題まで言及される。」と、述べられている。


ハート氏の研究は、2009年にノーベル経済学賞を受賞したウイリアムソンの延長にある。

ウイリアムソンの受賞理由は「企業の境界」。企業が何処まで自社内で取引を行い、何処から市場で取引を行うかを取引費用という観点から分析したもの。

現代における契約理論は様々な社会取引の分析につながり、市場理論、ゲーム理論と並ぶ三大理論の一つと呼ばれる様になったのも頷ける。




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