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とにかく何もなかった、金も人脈も家も、
でも心はなぜか今以上に満たされていた時代。
今夜は寝れないから、あの頃の事少し思い出しながら寝ようかな。
… … …
25年前
2日分の下着と。ギターと。2万円を持ってこの街に着いた。
泊まる場所は無くても怖くはなかった。
特技があったから。
この2年間家賃も光熱費も払ずに過ごしてきた。
女性の家に転がり込むのが天才的だったから。
池袋西口 マクドナルド 午前9時
アルバイト情報誌とハンバーガー。
日雇い、履歴書不要、寮有り。
これが俺の条件。
電話する、待たされる、また10円が落ちていく、早くしろよ。
明日8時に巣鴨駅前集合、
白いバン、ナンバーは、○○○○
明日の夜には8000円入る。安心。
後は今晩寝る場所を探す。
窓から交差点眺める。
人が交差する。
あの人もあの人もあの人も僕は知らない、
あの人も僕を知らない
殆どがこうやって出会わないまま、他人のまま。
そう、でも、
今日はキミと出会ってしまったね。
さっき声かけた女の子と食事。食事代は先行投資。
全身がアンテナ化したこの体で彼女の微妙な変化を分析。
イケる。半落ち。
この子の家にしよう。
2日後、初めてキミを抱く。
キミの部屋で。
もう離れたくない。
このまま、一緒に暮らそう。
そう呟いた。
そう。こんな風にいつも殆ど失敗しない。
もう帰る家が無い少年の気持ち、少しわかりますか?
東京へ来るまでの途中、深夜高速バスの中から、窓の外
数々の街の灯り。
ひとつひとつ。家庭の灯り。
あの灯りのひとつに、幸せな子供がいて、優しいお父さんとお母さんがいる。
考えた。
今からそこに行くから、
僕をその家庭に入れてくれる?
そんなの無理な事
わかってるって。
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