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13/5/2

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その2:新生活スタート】

Image by Olia Gozha

高校3年間のうちはじめの1年は、首都マドリードの横に位置するセゴビアという県でホームステイをして暮らすことになりました。

約2年ぶりにスペインの地に父と共に足を降ろして始めに思ったこと、それは「寒っ!」

それもそう、スペインの内部は冬は寒く夏は暑いというとてもすばらしい気候を兼ね備えた土地であり、セゴビアなど「スペインの京都」と私から呼ばれているくらいです。呼んでいるのは私だけです。

ましてや当時の服装、上下薄っぺらいジャージ。

そんなスペインの寒さを舐めきった格好で空港に降りた私は、さっそくスペインからの洗礼を受けることとなりました。完全に自業自得です。ジャージをもう一枚羽織りました。あくまでジャージしか持ってきていないところが実にファンキーです。

新しい家族との対面

 

そんなこんなでスペインに着いてはじめの数日は、寒さに耐えながらマドリードに住むブルジョアな叔母がセゴビアに持っている別荘で寝かせてもらっていたのですが、1週間ほどでいよいよホームステイ先の家族と対面することになりました。

ちなみにこの時点で家族構成や彼らの名前はいまいち知りませんでした。人生行き当たりばったりを地でいっています。素晴らしいです。

高校の手続きやなんやらのために父もスペインまで着いてきてくれたのですが、2,3週間後には日本に帰ってしまいます。

そのため出来るだけ早く新しい家族に馴染まなければ!と私は意気込みました。

日本から持参してきたお土産もばっちりです。

なにやら子供が3人ほどいるということは小耳に挟んでいたので、その子らのために寿司型のチョロQを各自に一個つづ買ってきていました。

このヴィレッジバンガードでどのネタにするか頭を悩ませて買った寿司Q(結局えびとタマゴとマグロにしました。こういったどうでも良い事だけは無駄に覚えている私の脳が憎いです)、まさか5分で飽きられるだなんて予想だにしていませんでした。

日本のWABISABIはどうやら外国のちびっ子どもには理解できなかったようです。

 

そしていよいよ父に連れられ、初めて家族とのご対面。

これから世話になるガルシア家を牛耳るボス、もとい皆のおばあちゃんマリア・アントニアさんは、少し大柄な体とふわふわとした白髪が印象的な方でした。

家族構成は、マリア・アントニアさん(皆からチナと呼ばれていたので、私もそう呼んでいました)の娘アレハンドラさんと夫のオリンピオさん。

2人の子供、チナの孫は3人とも女の子で、上から9歳のオリンピア、8歳のメンシア、そしてお母さんと同じ名前の5歳のアレハンドラの計6人。結構な大所帯です。

実はこれから、おばあちゃんをかけてオリンピアとアレハンドラ(小)と幾度となくバトルを繰り広げることになるのですが、出会った当初はそんなこと予測できるわけもなく私はただただ洋ロリの可愛さに顔を綻ばせていました。

広さの一人部屋をあてがわれ、自分の家のようにして良いのよ、あなたは家族なんだからね、とチナに言われ、早くも涙腺は緩みかけていました。

 

こうして新しい家での生活が始まって1週間、言葉は通じないものの特に大きな問題も無く時間は過ぎていきました。次は高校入学です。

 

いざ高校へ

 

新しい家に落ち着いたら、次は高校に入る手続きをすることになりました。

 

スペインに限らず大体のヨーロッパの高校はそうだと思うのですが、3月卒業4月入学の日本に対しこっちは9月入学6月卒業です。

私がスペインに着いたのは4月、なので厳密には入学では無く編入になります。

そしてここからが少しややこしいのですが、まずスペインは中学が4年あり、代わりに高校が2年のみしかありません。

ならば日本で中学3年を終えた私が入るべき学年は、ずばり中学4年。日本では高校1年に当たる学年です。

しかし先ほど記述したように、スペインでは6月に学校が終わります。

当時4月。学校終わるの6月。私学校入る。2ヵ月後中学卒業。

そうです、これだと私2ヶ月しか中学4年=日本の高校1年をしないことになってしまう。

普通に考えたらありえません。

言葉が分からない、環境に慣れていない、加えて馬鹿のヘレンケラーもびっくりな三重苦の私が一体2ヶ月で何を学べると言うのでしょうか。

しかしこの娘にしてこの父あり、「うーんまぁいっか☆ていうかどうにかなるっしょ(笑)」と後先考えずにとりあえず私を中学4年に入れました。

当たり前ですがこの父の「まぁいっか☆」精神はもちろん通用するはずもなく、後々4年生をもう一回する、つまりスペインに来て早々留年する羽目になったのですが、その話はまた今度。

高校1年目で留年だなんて、我ながら面白い人生です。

 

私が通うことになった学校は、家から徒歩3分の所にある「マリアノ・キンタニージャ高校」というところでした。中途半端に日本語で「高校」とつけるとまるでギャグ漫画のようです。

余談ではありますが、1年遅れてやはりスペインに来た姉は今でもこの高校を「マリアノ・キンタマーニ」と呼んでいます。姉はマリアノ・キンタニージャさんに謝ったほうが良いと思います。私はマリアノ・キンタニージャさんが誰かは知りません。

 

生まれて一度も転校というものをしたことがなかった私は、ざわつくクラスの皆の前で先生に紹介されるというビッグイベントに憧れていました。

加えて私は言葉の分からない留学生。

きっと手厚く歓迎されるのだろう、ましてやWelcome!ようこそスペインへSaki!だなんて書いた弾幕でも黒板に貼られていたらどうしようと私は胸を躍らせました。

 

しかし現実は非情でした。

クラスに通されると、先生が身振り手振りで私の座るべき席を教えてくれ、言われるがままに席に座ると、先生はそのままクラスの外へフェードアウト。


あれ、紹介は?


弾幕どころか紹介すらないという予想外の展開に私がだらだら冷や汗をかきながら席で縮こまっていると、少しして横の子が話しかけてきました。

 

「Oye tu de donde viniste? Como te llamas?」

 

え?

 

重ね重ね言いますが、当時私一切スペイン語分からず。

ポカーンとした表情で相手の顔を見つめていると、向こうもポカーンとした表情に。

あ、これはいけないパターンだ、と私は悟りました。これは面白い。

まず事前にクラスに話がいっていない。

つまり皆私が言葉が分からないのも知らないし、そもそも私が誰なのかすら分かっていない。

いきなりの謎のアジア人の登場に、クラスの皆からの「誰だこの中国人」という視線が突き刺さります。

教室に入って1分経過、日本じゃまずありえないであろうこの愉快すぎる状況から早くも逃げ出したくなりましたが勿論そういうわけにもいかず、更に私は縮こまることに。座高きっといつもの3分の1くらいになっていました。

 

しかしなんとなく雰囲気で状況が掴めたのか、何人かの子が声をかけてきてくれました。

始めに英語で自己紹介をしてくれたのは、ネレアちゃんという子。

優しいです。鼻ピアスしてるけど。どう見ても15歳じゃないけど。子供2人くらいいそうだけど。素敵ですお姉さん。

とにかく名前を覚えるには特徴と絡めるのがミソだと「鼻ピのネレアちゃんね、よし鼻ピの子はネレアちゃん」と頭の中で復唱し、次の子に向かいました。

やっぱり鼻ピアスでした。ネレアちゃんが私の中で「鼻ピの子」から「黒髪の鼻ピの子」になりました。

 

ゴリラやフレディこそいないものの、なかなかツワモノどもが揃ったクラスで私はとにかく将来どころか明日のビジョンも見えませんでした。ネレアちゃん助けて。


私が写っている写真もあったのですが、顔がひどいことになっていたのでこっちで。

クラスメイトの子たち。

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Image by Jukka Aalho

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