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なぜシンデレラは真夜中の12時に魔法がとけるのか、そのエビデンスを肌で体験した話

Image by Olia Gozha

子供の頃に読んだ童話や寓話は記憶には残っていて、分かりきった気になっていたりする。もうそれを気に留める事なんてない。

そしてそれは、あんまり面白いと思えないのに、なぜかずっと世代を超えて語りつがれたりしている。

シンデレラ(灰かぶり姫)の話もそうだ。

いや、シンデレラの話自体は女の子に夢を与えてくれる、という意味では楽しい話ではある。


シンデレラの話がイマイチ思い出せない方のためにも、ざっと内容を書くとこんな感じ。


〜  シンデレラ(灰かぶり姫)のおはなし  石川まとめ編 〜

むかしむかし あるところに、お母さんを亡くし、お父さんに大切に育てられている女の子がいました。

お父さんはある日美しい女の人と結婚しました。

その女の人には二人の女の子がいたので、お父さんに大切に育てられている女の子は三人姉妹になりました。

新しいお母さんは、美しいのですが、意地悪な人でした。

お姉さん二人は新しいお母さんのお気に入りでしたが、女の子は可愛がってもらえません。

女の子「新しいお母さんやお姉さんができてうれしいな♪仲良くしたいな。」

まま母「目ざわりな子だね、まったく。私の娘たちのじゃまになるよ。」


ところがある日、女の子の最愛のお父さんが病気で死んでしまいました。


お父さんが亡くなった後、まま母は女の子にますますつらく接するようになりました。

掃除 洗濯などたくさんの用事をいいつけて、まるで召使いのように働かせました。一方でまま母の連れ子の姉二人は甘やかされてずいぶんわがままに育ってしまいます。


女の子は毎日たくさんの用事をして、疲れて暖炉の前で眠ってしまうこともありました。

だから、女の子は「灰かぶり」と呼ばれるようになってしまいました。



ある日、王さまが舞踏会を開くことになりました。

お母さんと二人のお姉さんは立派なドレスを仕立ててよろこんでお城にでかけましたが、灰かぶりは用事をいいつけられ留守番をさせられてしまいます。


私もお城の舞踏会に行きたいのに、と泣いている灰かぶりの前に魔法つかいが現れます。

魔法つかい「おやおやどうして泣いているんだい?」

女の子「わたしもお姉さんたちのようにお城の舞踏会に行きたい。だけどまま母に用事をいいつけられたし、綺麗なドレスもないし。」

魔法つかい「では魔法の力でその服をドレスに変えてあげよう。」

女の子「わぁ〜ありがとうございます。」

魔法つかい「ただし、この魔法が効いているのは夜中の12時までだよ。それを過ぎると魔法がとけるからね。」

女の子「わかりました。12時までには戻ります。」

魔法つかい「ドレスに合わせる靴はこれにするといい。ガラスの靴だよ。」

女の子「なんて綺麗な靴。魔法つかいさん、ありがとうございます。行ってきます。」



魔法を使って、粗末な着物を綺麗なドレスに変えてくれました。

灰かぶりは美しいドレス姿でお城に向かいます。

お城では華やかな舞踏会が繰り広げられていました。

緊張しながら舞踏会の会場に現れる灰かぶり。その姿は気品に満ち美しく、まま母やふたりの姉も灰かぶりだとは気付きませんでした。

まわりの人々も、灰かぶりに魅了されます。




やがて、その美しさは王子さまの目に留まります。


ダンスを申し込まれた灰かぶりは夢のようなひとときをお城ですごします。

王子さまと踊っていると、ちょうど時計が12時をさしています。




ダンスを申し込まれた灰かぶりは夢のようなひとときをお城ですごします。

王子さまと踊っていると、ちょうど時計が12時をさしています。

あわてて帰ろうとする灰かぶり、引き止めようとする王子さま。



大急ぎの灰かぶりは靴が片方脱げてしまいますが、拾わずにいちもくさんに走って帰ります。時計が12時を打ち終わるのと同時に、美しいドレスはいつもの服に戻ってしまいます。

王子さまが衛兵に問いますが、衛兵はみすぼらしい女の子が走って行っただけで、美しいドレスを着たお姫様は通らなかったと証言します。

王子さまは灰かぶりの残した靴を見ながらもう一度会いたいと願います。

王さまは、王子さまの願いをかなえるために、その靴が足にぴったりの女の子を王子さまのお嫁さんにするとおふれを出しました。お城から靴を持った使者がつかわされ、女の子がいる家を一軒一軒訪ねます。

城下の女の子はみなその靴に足を入れようとし、母親たちは自分の娘の足を靴に入れようと必死になります。

灰かぶりの家でもお姉さん二人が必死に足をつっこみますが入りません。

まま母はお姉さんに、足を切ってでも入れるように言うほどです。

まま母「あなた達、どっちでもいいからはやくこの靴に足を入れなさい。王子様と結婚できるんだから!」

義理姉A「えー、こんなにちっちゃい靴に入るわけないじゃん。」

義理姉B「だったらあたしが・・・あれれ、ぜんぜん入らないよ。」

まま母「そんな事言ってないで、足を切ってでも入れなさい!お妃さまになれるんだよ。」

義理姉A&B「そんな無茶な〜」

まま母「つべこべ言うんでない!」

灰かぶり(女の子)「私にはかせてください。」

まま母「灰かぶり、お前の出る所ではないんだよ。さっさとあっちに行きなさい。」




しかし、ぼろをまとった灰かぶりが靴に足を入れるとぴったりと合います。そして、もう片方の靴も出してはきます。


まま母とお姉さんは驚き、お城から着た使者はついに探していたお姫様が見つかったとほっとします。

その後、灰かぶりを見つけた王子さまは大喜びで結婚し、灰かぶり姫は王子さまと幸せに暮らしましたとさ。 おしまい。




真夜中の12時ということは記憶にあるのだが、長らくその意味を考えた事がなかった。

大人になって、このような舞踏会に出る経験をした私は、この12時という時刻がどれだけ灰かぶりをかわいそうに演出し、その後のハッピーエンドを盛り上げる効果があったのか、意識する事となる。


とある年の冬、私はウィーンのダンス学校にいた。その年、ウィーンの社交界にデビューするデビュタントとして推薦を受けたからだ。

私は日本の田舎の古い古い農家に生まれ、葡萄の木の下を走り回ってたくましく育った。

子どものときのペットは地鶏だった。水をやったり生みたての卵をひろったり、貝殻を細かくしては可愛い地鶏に与えた。そうすると、地鶏は殻の硬いしっかりした卵をうむのだった。

父が子どもの頃は住み込みの人が働いてくれていたようだが、私が生まれた頃にはそのような優雅な生活ではなくなり、両親ともに毎日農作業に精を出していた。一方で子どもにクラシック音楽をきかせたり、寝る前には外国の物語の読みきかせをしてくれた。そのためか、優雅なものに何となくあこがれを抱いていた。一人で人形遊びをするときは、決まってお姫様と王子様ごっこをして空想の中にいた。


夢見がちな一方で、野生児のように葡萄の木の下で遊ぶ子ども時代を送った私は、就職で東京に出る。

就職した先で、いわゆる上流階級の人と接する機会があったのだが、それはここでは省く事にする。

日本で出席したパーティーでダンスをしている動画がインターネットにアップされ、それを見たある財界人に声をかけていただいた。これがきっかけで、ウィーンの社交界にデビューすることとなる。

それまでの私は、自分はダンスに向いていないと思っていた。体が非常に硬く、動作も機敏ではなかったし、たくさんのステップを覚えるのも苦手だった。葡萄畑を走り回る事は得意でも、それとこれとは違う運動神経をつかうのだった。

しかし、クラシック音楽や優雅なものが好きな好みは変わっていなかったため、誘われるとパーティーには楽しく出席をしていたのだった。

推薦をいただき、ウィーンに行ってからも、どうも自分の踊りのセンスのなさに悩んでいた。ウィーンの社交界にデビューするのは日本からアミちゃん(仮名)と私の二人だったのだが、アミちゃんは運動神経抜群。あっという間にステップを覚えていく。しかもお母様仕込みの着物美人でもある。

一方私は、ワルツのステップはふめるものの、ダンスのセンスがなく、全く持ってダンスの美しさには自信がなかった。その上、ウィーン式のワルツは自分の知っているゆったりした英国式ワルツと違い、非常に小さな回転を繰り返すダンスだったために、レッスン中にめまいを起こすほどだった。よく昔の物語では美女が優雅に気絶するが、私の場合は本当に目が回ってまるで船酔い状態。私をエスコートしてくれる予定のクリスはレッスンに根気よく付き合ってくれたのだが、私が何度も目を回すので、「この程度で本当に目が回る人がいるんだ」とびっくりしていた。クリスは南米に生まれ、ダンスのセンスが抜群で深い黒い目にいつも憂いをたたえている無口な男の子だった。

その時、私たちはウィーンの歴史ある宮殿の中にある、上流階級の子弟が礼儀作法とダンスを学ぶ通う名門私立校に通っていた。名門貴族が代々家族で運営するその学校は、小さいながらもヨーロッパ中、いや世界中にその名声をとどろかせている。昼間は学校、夜中はホテルで自主練をしていた。なにしろその舞踏会でデビューする他のメンバーの完成度はおそろしく高く、自分が間違った動きをすると全体のハーモニーに大きく影響する事を自覚した。

そんなこんなで迎えた舞踏会当日。早い時間からのリハーサルもクリスのリードでなんとか乗り切り、自分なりにできた感覚があり自信につながった。調子に乗った私はクリスマスマーケットに行こうとアミちゃんとそのパートナー、クリスを














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