top of page

16/4/28

芸能人になりそこねた塾講師、ジャッキー・チェンに会う

Image by Olia Gozha

芸能人になりそこねた塾講師、ジャッキー・チェンに会う

 大学3年生の夏だった。当時の人気番組「TVジョッキー」で奇人変人大会というのがあった。私は、ブルース・リーに憧れていてヌンチャクが使えたし、中学時代は体操部だったのでバック転など朝飯前だった。

 実力のある拳士もいいのだが、1人の力には限りがある。映画を通じての影響力には負ける。それで、面白半分の気持ちで応募したら返事がきた。それで、上京して出演することになった。足刀でろうそくの火を消せたのだ。

 この頃、あるタレント養成所に通っていたのだが、レッスン中に着替え部屋から財布が抜き取られていた。ロクな人間が集まっていないのは、レッスン中に感じていた。

 それで、別の事務所のオーディションが大阪の丸ビルであったので出かけてみた。審査を受けたら、「合格なので東京に出てこないか?」と社長らしき人が言った。

 それで、思案していたら別の中年女性の審査員が近寄ってきて「ねぇ、キミ。キミは国立大学の学生でしょ。この世界はヤクザな世界だから、そのまま卒業した方がいい」と言ってくれた。

 卒業後は、愛知県の刈谷市で塾講師をしていた。その頃、売り出し中の香港のアクション・スターが同じ「TVジョッキー」に出演すると言う。それで、再度応募したら、すぐに返事が来た。今思えば、ジャッキー・チェンの引き立て役だったのだろう。

 スタジオに向かう途中で、ラフな格好の男の人とすれ違ったら「ハロー」と言う。それで、ふり返ったらジャッキー・チェンだった。でも、私は彼に興味はなかった。本格派のブルース・リーとは違っていたから。

 特別賞の白いギターをもらった。「高木繁美」で検索してもらうと、録画したものがYoutubeに投稿してあります。→ 

ジャッキー・チェンと「TVジョッキー」で共演しました。

  


(7000回再生)https://youtu.be/sMdPLgzTjeQ  

 https://youtu.be/QhLnsIohW5s

 その後、アメリカで教師をすることになったが、体育の時間に拳法のデモンストレーションを何度もやることになった。生徒集会の舞台でも、ヌンチャクの演技をしたら、ウケた。


帰国後は、自分の塾を持った。その後、10年くらいは塾の授業のかたわら、英語検定1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級などに合格することに専念していた。

 結婚して、子供も生まれ、英語と数学にくわえ、理科と社会も教え始めたので授業と勉強に忙しかった。成績処理にコンピューターを導入したので、操作の方法やら、ネットが普及し始めたので、そちらの勉強もしていた。

バブルの頃だったので、土地を買い、建物をたて、融資や税金対策や、やることが多かった。教育学部で習った空理空論など、なんの役にも立たなかったから、一からの勉強だった。

 塾生に望まれて、高校数学も指導することになり、センター試験を10回、京都大学を7回受けて、もう塾講師にどっぷり。英語と数学にめざめてしまった。

 俳優など河原乞食。しょせん、拳士のマネ。英語を話せるフリ。学者のフリ。中身はカラッポ。そう思うことにした。


 

 ところが、還暦近くなって、はげ頭になって少し違う視点が生まれた。確かに芸能界は、ロクな人が集まっていないように思う。しかし、塾業界はどうなのだろう。

 英検1級や通訳ガイドの国家試験に合格し、京大二次で英語8割、数学7割を取れる塾講師は少ない。しかし、こんな田舎で少数の生徒を相手にしていたら、存在感はゼロ。影響力はゼロ。自分の得たものを、多くの人に役立てることが出来ない。

 中身がなくて、知名度だけではダメだ。しかし、中身があっても、今の時代は知名度がないと存在しないも同然だ。そして、思い出した。「なぜ、ブルース・リーは支持されたのか?」

 彼の前のアクション俳優は、演技をしているだけだった。ところが、ブルース・リーは本物の格闘家だった。本物であるという裏づけ。それがあるから、彼の演技は別物だった。それが、見るものを感動させた。

「飛び出せ!青春」の村野武範さんとツーショット。
 

 私は、この世が不条理だと知っている。受験業界も腐っている。お金を儲けて豪邸に住み、愛人を囲い、飲食にふける。そのために、真摯に教育に向かい合わずにタレントを使ってCMを流しまくる。

 暴走族講師、ヤンキー講師などのパフォーマンス講師が何億円も儲ける。マジメな講師は埋もれて、誰にも知られない。そんな世界だ。芸能界と、大して違わない。事実、予備校講師や塾講師からタレントに転身した人もいる。

 私の塾生の子たち、特に理系女子は私などよりずっと賢い。現役時代の私の英語や数学力より上という意味だけではない。アニメのCMや大きなビルなどに見向きもしない。

 世の中には、予備校経営者の策略に乗らない中学生や高校生もいる。「飛び出せ!青春」の村野武典さんとツーショット写真を撮らせてもらう機会があったが、塾生の子たちは全く興味を示さなかった。

 人生は、自分の計算どおりに行くわけがない。実力だけの世界なら、無冠の帝王なんて言葉は存在しないだろう。芸能界も政界も二世、三世だらけが現実。

 あの女性審査員は、どなただったのだろう?私の拳法のレベルは大したことないし、イケメンでもない。芸能人の道に踏み込んだら、今ごろ野垂れ死にしていたかもしれない。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page