地震から10時間、長かった夜の空もだんだん明るくなった。
180人弱が入院していた精神科単科病院で水・電気のライフラインがとまり、なんと入院患者さん全員を熊本市内の体育館に移すことになり、
だだっ広い体育館に先発隊として到着したはよいが、
このだだっ広い空間を、どう精神科単科病院に相当するものに変えていけばいいのだろう?
どうやって患者さんを移動させるんだろう?
自衛隊や救急隊が協力してくれると院長先生はおっしゃっていたけれど、自衛隊のトラックとかで大人数運ぶのかしら?
体育館の中央には、「毛布」と書かれた段ボールと、「安眠セット」と書かれた段ボールがうず高く積まれている。
そして、自宅から直接体育館に到着したスタッフによって、体育館の床は、リノリウムというのだろうか。入学式や卒業式のときに、床に敷くシートによって大きく十字が作られ、床面積が四分割されていた。
ベテラン看護師さんと思われる男性が、私たちが到着したときには、すでに設営の見取り図を作ってくださっていて、会場設営の指揮をとった。
「この体育館を四分割して、それぞれを一病棟、二病棟、三病棟、O病棟にします。
それぞれの病棟の患者さんの数だけ安眠セットを敷いたら、それぞれの病棟にどれだけ患者さんが到着したかわかると思います」
そして、それぞれの病棟(スペース)の担当者を決め、その入院患者さんの数だけ安眠セットを広げ、毛布を置いていった。
安眠セットには、折りたたみ式の薄いマットレスと、空気を入れて枕にするものや、スリッパ、靴下が入っていた。
毛布は、ユニクロの販売方式のように、手でちぎる密閉袋に入っている。
(赤十字が支給する支援物質、初めてみたよ〜)
と思いながら、段ボールを開けたり袋から出したり床に置いたりしていると、
「佐久田先生、寝たきりの患者さんたちは、救急車でここに到着するので、寝たきりの患者さんたちの出迎えと救急隊からの引き継ぎをお願いします」
は〜い
180人弱の、安眠セットや毛布を出すのも時間はかかるが、
寝たきりの方も、元気な方も、到着は遅々としていた。
しかし、無理もない。
先発隊の私たちがここに来るまでも、橋の破損で大回りしないといけなかったから、連れてきたミニバンが戻るのにも時間はかかるだろうし、
救急隊や自衛隊も、震災でいろんなところで活動しないといけないから、私たちのところに多くの人員がさけるかは難しいだろうし…