さて、なかなかの崖っぷち状態の私たちでしたが、あるメンバーの意見をきっかけにチームの中で一つの光が生まれました。今までぐちゃぐちゃで堂々巡りだった議論が、その一言をきっかけに少しずつまとまり出し、静まり返っていた議論が再び熱を帯び始めました。そして一つずつパズルのピースをはめ込んでいく様に、バラバラだったたくさんの情報たちが一つの地図に落とし込まれていく。そしてその地図の全貌が少しずつ明らかになっていく過程で、私はあることに気づきました。
ー常に同じプレイヤーが勝ち続けている訳ではない。
その業界の産業構造の流れを明らかにしていく度に、必ずと言っていいほど時代時代で新しい価値を提供するプレイヤーが現れて歴史的な産業を侵食していく。その様子はまるで変化と進化を遂げないものが淘汰されていく弱肉強食の自然界のようでした。自然界の原理がビジネスの世界でも起こっていることに驚きましたが、それ以上に驚いたのは、業界構造をひっくり返してきた彼らのほとんどが全て、最初は名もなき小さな会社だったことです。
私はそれまで、小さな会社は大きな会社に比べて圧倒的不利だと思っていました。
お金もない
人もいない
権威もない
ビジネスの世界で重要資産と言われるこれらの要素を、小さな会社は大きな会社よりも持っていないことが多い。もともと長いものには巻かれろ的な考え方を持っていたので、私は相手が超有利な状況で勝負を挑むなんて無謀なことだと思っていました。だから向こうが自分より有利な立場や状況の時は、心のどこかではじめから諦めちゃってたり、負けてもしょうがないかなって自分に言い訳を作ってしまうタイプでした。
なので私は、競争が激しいビジネスの世界で、全てにおいて圧倒的に不利な状態なのに自分たちの何十倍も何百倍も大きな相手に勝負を挑むなんて、到底信じられなかったのです。しかし実際には、私の目の前で、あんなに小さかったはずのプレイヤーが時代の流れを経て大きな相手と互角に戦い、時には彼らを侵食しに行っている様子が繰り広げられていました。
この事実を知った時、私の中に衝撃が走りました。
経営学的にこんなような理論があることは何となく知っていましたが、この状況が生まれる時代背景、その時新興プレイヤーが何を考え、どうやってそのアイデアを広めたのかを深く理解した時、自分が今まで持っていた固定概念がふっ飛ばされたように感じました。
時代が求めているものに対し敏感に反応し、それを的確に判断して最速スピードで新しい価値を世の中に提供していく。クリティカルに抑えなければいけないポイントを外さず、巡ってきたとっておきのチャンスは最大限活かす。会社が大きければアドバンテージはたくさんあると思いますが、それが全てではないことを、私はこの時初めて痛感しました。
人が多ければ良い訳じゃない
お金がたくさんあることが全てではない
権威があるから動けない時もある
業界構造分析という、インターンの1タスクとして捉えていた作業が、気付いたら自分のこれまでの価値観を大きく揺るがす結果となりました。ITにはそこまで興味ない、テクノロジーなんて私にはよく分からない、そんな思いを持ったまま参加したこのITテクノロジー企業のインターンでしたが、一心腐乱に議論を重ねていくうちに、そんなことを考えていたことはすっかり忘れていました。そして、どうしたらこの強力なプレイヤーを揺るがし、業界をDisrupt(破壊)することができるのか、それだけに意識は集中していました。それは雲を掴むような答えのない作業でしたが、私は間違いなくこの作業を心から楽しんでいました。圧倒的に不利であることは間違いないけれど、そんな逆境の中で頭を使い必死に立ち向かっていくたくさんの新しいプレイヤーの存在を知る中で、自分たちならどんなことができるかと考えることは、純粋にとてもワクワクしたからです。
その後、中間発表・最終発表を経て、私の初めてのIT系企業のインターンは無事に終わりました。
結果としてはかなり悔しい思いをする形になってしまいましたが、このインターンを通じて、自分がこれまで持ってた沢山の「当たり前」や「思い込み」の多くがDisruptされたように思います。そして何より、今までは苦手と思っていたことや興味がなかったものが「面白そう」と思うようになっていました。
そのきっかけは、自分が想像していなかった所から突然やってきましたが、自分にとって大きな転機となり、結果的に今の私の価値観の一部になりました。そしていまの価値観は、恐らくこれから私が積むたくさんの経験の中で少しづつ変わって、また数年後には全く違うものになっているんだろうと思います。
苦手だったことが、得意になることもある。
嫌いだったものが、好きになることもある。
それはある時劇的に変わるかもしれないし、自分でも気づかないうちに少しずつ変わっていって、ある時ふっとそう思うようになってるかもしれない。だからいま、好きなものや得意なことが見つからなくて悩んでいるなら、嫌いなものや苦手なことしか分からなくて苦しんでいるなら、敢えて興味がなかった所へ一歩踏み込んでみてはいかがでしょうか?もしかしたら、自分が予想しなかった場所であなたの心がワクワクするものが見つけられるかもしれません。そしてそれをきっかけに、将来やりたい仕事を見つけたり、自分の得意分野を考えてみてもいいと思います。
そんな風に、新しい自分をどんどん見つけて色んなことにワクワクできたら最高だなー!なんて思う今日この頃です。
おわり。