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15/12/31

とにかく助けなければ。見知らぬおばあさんが道路で倒れた・・

Image by Olia Gozha

12月29日の夕方5時10分。おばあさんが倒れた。僕の目の前だった。地元の友人との久しぶりの再会。忘年会へいく途中、見知らぬ老人が道路で倒れたのだ。白髪の痩せた女性だった。年齢は83歳を超えていただろう。小さな歩行補助車(シルバーカー・歩行補助用のショッピングカート)を杖替わりに押しながら歩いていたようだ。





「(゚ロ゚) 大丈夫ですかーーーーーーー!!!!!!!!!!!」



倒れ方が異常だった。びっくりして駆け寄った。年齢的に受身をとれるようなイメージはなかった。しかし、手をつくこともなく人形みたいに側頭部からストンと落ちたのだ。

しかも場所は一般道路。路地裏だったが交通量がおおい幹線道路から一本はいっただけの場所。平日の昼間ならそこそこ交通量はある。おばあさんは道路で、意識を失ったかののように倒れたのだ。






まるで熱中症で失神したひとみたいだった。ストン、と音もなく横になったのだ。しかし、現実はそんな生易しいものではない。かなりのご老体とお見受けする女性が何の前触れもなく倒れる様子は異常だった。しかも道路だ。冷たいコンクリートの地面だ。自動車も走っている。見慣れた公園のそばだった。最寄駅までは昔からある古い住宅街で高齢者がおおい地域だ。シニア・ご老人が非常に多い地域だった。それでも初めてすぎる体験だ。



僕は急いで駆け寄った。



痙攣しているようにみえた。おばあさんは足を伸ばしたまま痙攣しているかのようにピクピクと動いていた。出血はない。幸いなことに意識はある。顔を痛そうにしかめているが怪我はしていないようだ。しかし、自分では立ち上がれそうにない。身体が硬直したように固まっていた。恐らく、ショックを受けているのだろう。道路で倒れたという事実。それを受け入れながらも身体が思うように動かない。


僕は祖母のことを思い出していた。大好きだった祖母は、足が不自由になり晩年は車椅子で生活していた。ベッドから降りるのも人の補助が必要で、しんどそうだった。その姿を思い出していた。




「(老人になると骨も脆くなる。ちょっとしたことで骨折する。大丈夫だろうか?)」



おばあさんは痛そうな顔をしているが、僕に痛みを伝える様子はない。幸いなことに骨には異常はないようだ。だが、両足はピンと伸びたままで膝を曲げる動作を忘れているようだった。




おばあさん「ごめんなさいね。ごめんなさいね。ごめんなさいね。」



しきりに謝っているおばあさんに「大丈夫ですか?怪我はないですか?」と声をかけながら、とにかく道路は危ないと、おばあさんに立ち上がってもらうことに集中した。身体を起こすのは難しいけどやるしかない。片側から肩と腰を支えながら身体を起こしてみようか?おばあさんの体勢ではむつかしかった。そこで背中から両脇と腰を支えながら身体を起こそうと考えた。運良く、背中はみえる状態だ。これなら脇から腕で支えられるし腰も支えやすい。おばあさんの身体への負担もすくない。




介護士の資格をもっていれば最適な方法がわかるのかもしれない。しかし、僕はそんな資格をもってはいない。自動車教習所で免許を取得するときに人口呼吸・心臓マッサージのやり方は習った。スイミングスクールで水泳の指導をしていたときに人命救助の訓練は受けた。それだけだ。たったソレだけの経験だった。





なんとか上半身に手をまわしたときも、おばあさんは両足をピンと伸ばしたままだった。身体に力が入っている影響か、すごく重い。重かった。しかし道路から歩道へ上げないと危険だ。僕は声をかけながらおばあさんをなんとか立ち上げることに成功した。




両足で立っている。やはり骨折はしていないようだ。小さなショッピングカートに手をかけて、支えにして立っている。




次に僕は荷物を拾った。キャリーバッグから落ちた荷物をひろう。どうやら買い物帰りだったようだ。ビニール袋には牛乳パックと食パン、食料が入っていた。牛乳パックは意外と重い。老人は片手なら持てないかもしれない。これでバランスを崩したのだろうか?





手提げバッグはすぐそばに落ちていた。幸いなことにしっかり締まっていたので財布や小物は一切こぼれていなかった。ちょうど、おばあさんが倒れた場所には道路の排水口があったので、心配していたのだ。財布が開いていたら小銭が全部おちていただろう。そんなことになったら大変だった。近くに交番はない。年末で人通りもすくない。年末年始は犯罪が増える。空き巣やひったくり犯はお年寄りも狙ってくる。防犯を意識してバッグを持ち運ぶ習慣は大切なのだ。



僕は買い物袋とカバンをおばあさんに手渡した。




おばあさん「ありがとう。ごめんなさいね。ごめんなさいね。ごめんなさいね。」

「大丈夫ですか?大変でしたね。怪我はないですか?荷物はこれだけでよかったですか?」



買い物袋とバッグはキャリーに入れていなかったようだ。その重さで倒れたのだろうか?心配なのでキャリーに手荷物をいれてはどうかと提案してみたものの、それは違うらしい。よくみるとシルバーカーはとても小さく、すでに中身がパンパンだっだのかもしれない。牛乳パックだけでも重さでバランスを崩すかもしれないから心配だったのだが・・・。





おばあさんはしきりに謝罪している。怪我はない。安心した。でも、一体、どうして倒れたのだろう?そう考えながら改めてキャリーバッグをみると、すぐに原因はわかった。歩行補助のシルバーカーの車輪が、小さい段差に引っかかり、バランスを崩したのだ。道路と歩道の段差は5cmもなかった。しかし、道路は歩道側になると排水効果を高めるためにゆるやかな傾斜になっている。

たった5cmといえど、車輪がひっかかりやすくなっていたのだ。

もし自転車で強引に歩道へ上がろうとすればかなりの衝撃になるだろう。小さく一歩ずつ歩いていたおばあさんには非常に危険だ。驚いただろう。ショックを受けたに違いない。なぜ、自分が倒れたさえ理解できないまま道路に投げ出されたのだ。その恐怖は簡単に言葉で言い表せるものではない。




後で調べてみると「独立行政法人国民生活センター」のHPには、同じ事故の危険性が書かれていた。歩行補助車(シルバーカー)の安全性。段差に車輪が引っかかることについて取扱説明書・販売業者への説明を義務づけていた。




なんども「ありがとう」「ごめんなさい」と繰り返しながらおばあさんは歩いていった。家まで見送るろうと提案したが、それは大丈夫だと気丈にふるまっていた。おばあさんは自分にショックを受けている。心配だったが、プライドを傷つけては本末転倒だ。僕はケガをしていないことを再度確認した。しばらく遠目で様子をみながらおばあさんを見送っていた。









ふと気づいたとき、僕は道路のど真ん中にいた。幸いなことに年末で自動車の交通量は少なかったが、遠くから一台の自動車が近づいている。道のまんなかでじっとしているなんて普通ではありえない。それだけ夢中になっていたのだなと、ようやく冷静になった。ゆっくりと歩くおばあさんの後ろ姿がまだみえる。僕はそっと駅に向かってあるきだした。



最寄り駅までは見慣れた風景だ。小さな頃から変わらない。時々、古い住居が空き地になっている。駐車場になった場所もある。小さなマンションになった土地もある。しかし、ほとんどは変わらない。昔からある木造の建物も長屋のように仲良く並んでいる。



「風景はかわらないけど、住んでるひとは確実に年をとっている。年齢を重ねているだよな。」





小さな頃に遊んだ公園は、今では、愛犬との散歩スポットになっている。母にすれば小さな頃に遊んだ公園で、通学途中の風景で、僕を遊ばせていたご近所スポット、そして、犬を散歩させる場所。買い物途中にみる風景だ。そして祖父母にとっては僕の母親を遊ばせていた公園で・・・。やさしかった祖父母との想い出が蘇る。



今日のおばあさんはどんな想い出があるんだろうか?

僕はそんなことを考えながら幼稚園からの友人が待つ場所へとむかった。



最後までお読みいただきありがとうございました!^^

僕もあなたの物語を読ませていただきます。

「読んでよかった」から後ほどお伺いさせていただきます。


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