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15/11/18

ほぼニート女がゾウに乗りたくてタイに1週間ひとり旅した話。 ~水かけ祭りと、ニセ韓国人と、ときどきマフィア~ 【その9:ニセ韓国人のユジン】

Image by Olia Gozha

突然現れた謎の男

謎の男「コンニチワー」

片言の日本語が背後から聞こえた。

私は音のするほうを振り返った。

サングラスをかけた怪しげな小太りの男が立っていた。


ガイド「ワタシハ ガイドデス。ニホンジンデスカ?」

と話しかけてニヤッと笑った。


やばい、やばい。

こんなときは。こんなときは。

と頭の中でグルグルして、とっさに


わたし「WHAT?(真顔)」


と返した。


男は私を日本人だと思って近づいてきたので少し驚いていた。

そして英語で話しかけてきた。


ガイド「日本人じゃないのね。ごめんね。私はアユタヤのガイドです。ツアーをやってるんだけど車で回らない?」

わたし「…。」


こんなときはどうしたらいいかわかんないぞ。

その時私はサングラスをしていたので、黙っていたら不機嫌そうにみえている。

イケる。大丈夫だ。ドキドキはバレていない。まだ戦えるぞ!


ガイド「どこの国から来たの?」

わたし「………………韓国(小声あ、アニョハセヨー」

ひ、ひぇぇ!自分でも予想外のアドリブ力。

まさかのここで「魔法の呪文」を使うとは。(その5参照)


ガイド「そうか、韓国ね。韓国語話せないんだよな」


お。効いてる。効いてる。


この怪しいガイド早く去ってくれないかなと思っていたら、

ポケットから各言葉で書かれたツアー表を見せてきた。

もちろん韓国語だ。読めない。


ガイド「いろんなブッタも見れるし、ゾウにも乗れるよ。」

え、なんっつった??ゾウ??

さっきまでその男に対して嫌悪感丸出しだったのに

ゾウのひと言で心がゴトンと音を立てて動いたのがわかった。


わたし「いくら?」

ガイド「2000円」

わたし「高い無理。金ない」

ガイド「じゃあ1800円」

わたし「無理」


なぜだろう。自分を韓国人だと偽った瞬間から、

自信が出てきて値引き交渉もガンガン言えるようになってしまった。


わたし「もっと下げろや。ガイドなんざわんさかいるんじゃい。」

ガイド「(困り顔)じゃあ1400円で」

わたし「オーライ。カムサハム二ダ。」


ガイドツアー相場もよくわからないが、値引くこともできた。

しかしその男から逃れるために私は韓国人だ(嘘)と言ってしまったので、

これから日本語NGになる。


めんどくさい種を自分で撒いて、

しっかり刈り取りもやるはめになった。


ガイド「名前はなんて言うの?」

わたし「…………ユジン」


そう。私はユジン。というかそれ私の友達の名前ね。

タイに出発する当日も一緒にいてくれた友達がユジンだった。


なにを隠そう、その当時やっていたバイトというのが

韓国料理屋のホールスタッフであった。

周りには韓国人のスタッフもいて友達も多くいた。


バイトも1年くらいやっていると自然と韓国語を覚えていて、

簡単な言葉は言えるようになっていた。

飲食店だったので、

「いらっしゃいませ」とか「ごはんのおかわりください」とかそんなレベルだ。


ガイド「オッケー、ユジン。車に乗って」

軽トラックの荷台に屋根とイスをつけた車があった。

私はうしろの荷台に座った。


移動や観光している間ほとんど話すことはなかったが、

ガイドの前ではニセ韓国人のユジンとして振る舞うはめになった。


韓国人としてアユタヤ観光


ガイドの案内でアユタヤ遺跡観光をした。

寺院や宮殿、首だけ切り壊された仏像などが残っていた。


ガイドは入口の前で韓国語で書かれた紙を見せながら簡単に解説して、

「ここでまってるね」と言って木陰のベンチで横になった。


オーケー!と答えたが韓国語の紙だけが読めない。


ツアーで来ていた日本人団体客に紛れて解説を聞いたり、

ひとりで来ている欧米人の写真を撮ってあげるついでに

「これってなに?」と聞いて情報を収集した。



アユタヤの観光スポットは多く一日では回りきれなかったが、

有名なところはほとんど見せてくれた。



そしていよいよ念願のゾウに会いに行くことになった。





つづく!!

キタコレゾウ!


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