格安ゲストハウスで宿探し
カオサンロードにゲストハウスはいたるところにあった。
多すぎてどこがいいかわからない。
どこも大丈夫そうっちゃ大丈夫だし、ヤバそうっちゃヤバそう。
へんなゲストハウスに入らないためにはどうしたらいいのか。
私の場合ほぼ100%
勘(かん)
である。(キリッ
どこでも寝れてしまうので衛生面も気にならない。ベッドがあるだけで最高だった。
やばいところなら荷物もって逃げればいい。
この旅でゲストハウスを4軒ほど利用したが変な宿はなかった。
メイン通りから外れた静かそうな場所で、勘で選んだゲストハウスに入った。
1泊500円のシャワートイレ共同。
窓が無くベッドがふたつ置いてあるだけの殺風景な部屋だった。
暑さ対策は天井にシーリングファンが設置されていた。
ファンはスイッチを入れると、うねりを上げながら壁が揺れるほど高速で回転した。
部屋に窓がないので蒸し暑い空気をひたすらかき混ぜるだけだった。
ひみつ道具ダイアル式南京錠
ゲストハウスだって気を抜いてはいけない。
日本からダイアル式南京錠を持ってきていた。
盗まれたら困るものは持っていなかったが、セキュリティはしっかりしていたい。
部屋のかぎを掛けたあとは、外から南京錠でロックする。
完璧。パーフェクト。天才。
旅にこなれた感を出しながら南京錠を閉め外出した。
その後カオサンロード周辺をめぐった。
屋台で食事をしたり、同じバックパッカーの欧米の人たちと交流した。
楽しくて楽しくて初めて「来てよかった」と思えた。
タイで問題は気温だった。
4月は1年でいちばん暑いといわれていた。軽く30度は超えた。
日中は照りつける太陽に焼き殺されそうになるので一度ゲストハウスに戻った。
自分の部屋のドアの前に立った時に衝撃的なことに気付いた。
わたし「ぎゃあ!!!南京錠の暗証番号覚えるの忘れた!!!!」
ダイアル式南京錠は4ケタの数字を設定してからロックする。
その番号を覚えずに鍵をかけてしまったのだ。
こなれ感を演出したのが裏目に出てしまった。
もっと言えば、南京錠を使うのが初めてだった。
説明書も読まずカギをかけるなんて我ながらアグレッシブである。
自分が入れそうな番号を入れてみるがまったく反応しない。
力づくで壊そうとしたが体力を消耗するだけだった。
30分ほど南京錠と格闘して心折れてフロントへ助けを求めた。
フロントのお兄さんは鍵を見るなり察したのか鉄のこを持ってきてくれた。
鉄を切る音がゲストハウス内に響き渡った。
なんの音だと宿泊客が集まってきた。
いつの間にか私の部屋の前は、
南京錠解体ショーのようになっていた。
宿泊客「なんでこんなことになったの?」
わたし「だれかにいたずらされた(嘘)」
恥ずかしさのあまりとっさに嘘をついた。
どうみても番号忘れた感バリバリだった。
数分してスタッフの人のおかげで南京錠の鍵が壊れた。
わたし「助かりました。本当にありがとう。」
タイ人スタッフ「全然気にしないで!困ったことがあったら言ってね(にっこり)」
…優しい。「ほほ笑みの国」というのは本当だった。
半泣きの私に「ドンマイ!ドンマイ!」と言ってくれた。
ほんとならボコッボコに殴られてもおかしくない。
南京錠事件はトラウマになり、
それから数年はダイアル式南京錠を見るのも嫌になった。
心の傷も癒えたころ番号を忘れても解除できる裏技があることがわかった。
その技を使っていればとさらにトラウマになり、
また数年間は南京錠を見れなかった。